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アメリカで活躍する現役の日本人探偵による調査・犯罪コラム。本場での経験をもとに、詐欺にあわないための方法、調査テクニック、海外安全対策、事件簿などを紹介。変わった事件や海外トラブルなど、様々な海外情報も発信。

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2008/02/18

海外失踪による保険詐欺 ‐前編‐

あるアジア諸国の保険会社から連絡が入った。アメリカに行くといったきり、行方不明
になっている女性について調べてほしいとのこと。この女性は東南アジアの出身であ
り、家族に仕事でアメリカに行ってくると言い残して国を去ったまま、そのまま連絡が
途絶えてしまっているらしい。それだけならばありふれた話だが、問題は彼女には祖国
にて多額の保険金が掛けられており、既に裁判所から失踪宣告が出ている彼女に関し
て、夫が保険金の請求をしてきたのである。ただ、夫やその家族と交渉を行っている保
険会社にはどうも腑に落ちない点があり、家族との共謀による保険金詐欺、しかも国を
またいだ詐欺ではないかということで、私に調査を依頼してきたのである。確かに、外
国で行方不明になったといえば、保険会社も調査を躊躇することが多い。しかし、この
保険会社は決して妥協することなく、徹底的に真実の究明に乗り出してきたのである。
保険会社にしてみれば、最低でも失踪宣告後に彼女が生存していたことが分かれば、と
りあえずは不正受給を食い止めることが出来る。 


なぜ私に依頼がきたかというと、それは私がアジア人だからである。多数の民族が集ま
っているアメリカといえども、人種の壁は厚い。アジア人社会で情報を収集するにはや
はりアジア人が適しており、また、これは重要なことだが、アジア人同士であれば、顔
の確認がしやすい。白人達にとって我々アジア人は皆、同じように見えてしまうので、
今回のように10年以上も前の写真を基に個人を探し出すことは難しいのである。 


早速、私は調査プランを練ってみたのだが、この種の調査はもっとも難しい部類にあて
はまるものだ。対象者は観光ビザ(ビザ免除プログラム)で渡米しており、通常、アメ
リカ国内では観光ビザから滞在ビザに切り替えることが出来ないので、この女性が現在
もアメリカに居住しているならば、10年以上も不法滞在しているということになる。
不法滞在者が政府や各種団体に何らかの届出をするということはあり得ないから、記録
から追っていくことが出来ない。地道な聞き込みによって情報を収集していくしかない
のである。100ページを越える資料の中で唯一、私の目を引いたのは、対象者には当
時親しくしていたアメリカ人の友人がいたことであった。彼はアメリカ市民であるた
め、彼を探し出すことは難しいことではない。また、不法滞在者である対象者が異国の
地で彼の助けなしで生活しているとは考えにくく、何かを知っているに違いない。私は
まず、この友人の所在調査から開始することにした。 


調査を開始して2週間。この友人の両親の所在が分かった。依頼人のほとんどは調査を
行っていることが分からないように作業を進めることを希望するので、今回もこの点に
ついては苦労したが、幸い、友人の所在地を確認することが出来た。さて、ここからが
正念場である。彼は唯一の手掛かりであり、彼の協力が得られなければこの調査が暗礁
に乗り上げてしまうことは明らかである。こういった場合、下手な細工は相手に不信感
を与えるだけだ。特に今回は大義名分のある調査である。依頼人にもその旨を説明し、
私はその友人に正直に今回の経緯を説明することにした。もちろん、相手が協力し易い
ようにうまく誘導することも大切である。 


結果は予想通りだった。彼は渡米後の対象者について知っており、対象者が偽造グリー
ンカード(永住権)を使用したり、他人の名前を名乗ったりして、アメリカに不法滞在
していたことが分かった。ただ、現在は付き合いはなく、対象者は5年前まである小さ
なドラッグストアーで店番をしていたとのことであった。不法滞在の身分で仕事を変え
ることは難しい。私はこのドラッグストアーを訪問。隠しカメラを付けて潜入してみる
ことにした。 (後編へ続く)

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