2009/03/23
「エレベータのすべてがわかる!」〔VOL0058〕
===========================================2009.03.23 VOL.0058== みなさんお元気ですか? 「エレベータのすべてがわかる!」の第58号をお送りします。 港区の「シティハイツ竹芝」で06年6月3日に発生したエレベータ事故は、 被害者の高校生がかご床と乗場天井に挟まれて死亡する最悪の事態を招きました。 扉が開いたままでかごが上昇するという、本来はあってはならない現象の原因について、 港区は、09年1月29日に 「シティハイツ竹芝エレベーター事故調査中間報告書(第3次)」を発行しました。 事故機は、ブレーキライニングが磨耗してブレーキが効かなくなっていましたが、 ブレーキライニングが磨耗してしまった原因としては、報告書では、 FTA解析の結果から、故障によるソレノイドの出力低下が 考えられる要因の一つであることを指摘しています。 事故時に事故機のメンテナンスを担当していた エス・イー・シーエレベータ株式会社が事故機で測定していたデータを入手しましたので、 報告書にもある港区の4号機による実験データ(「実験データ」)に加えて、 そのデータ(「事故機データ」)も参考にして、 ブレーキライニングの磨耗の原因について考察しました。 その内容を、特集「シティハイツ竹芝のエレベータ事故原因の考察」にご紹介します。 このメールマガジンは、『まぐまぐ』で配送されています。 ================================================================= ==I==N==D==E==X================================================== ○連載 今週のニュース ○特集「シティハイツ竹芝のエレベータ事故原因の考察」 ○連載 エレベータクイズ ○編集後記 ================================================================ ==○今週のニュース ============================================ 東京都内のエスカレータで昨年、 手足や履物を挟まれてけがをした事故が21件あり、 このうち約7割に当る15件は10歳未満の子供が被害に遭っていたことが 東京消防庁の調査でわかった。 踏み段と側面とのわずかなすき間に挟まれるケースが多かったという。 JR水戸駅のエスカレータで6日、首に巻いていたストールが挟まれて 女性(57)が転倒した重体(16日死亡)事故を受け、同庁が同年中の 「挟まれ事故」を分析した。分析結果によると、 踏み段と側面のすき間には通常、衣服の巻き込みを防ぐ「スカートガード」 と呼ばれるカバーが取り付けられているが、 すべての巻き込みを防ぐことは難しいとみられる。21件のうち、 靴やサンダルなど足の部分を挟まれたのが12件、 手や指を挟まれたのが9件だった。 また、下りエスカレータのけがが目立つという。 同年3月に東京メトロ木場駅(東京都江東区)で起きた事故では、 女児(2)が下りエスカレータを利用中、脇を向いた男性と接触。 バランスを崩し、降り口付近で左足の長靴が挟まれて足の指を骨折した。 同年4月には、JR立川駅で、手摺に手を滑らせて遊んでいた男児(4) の左手の指が手摺の巻き込み口に巻き込まれ、軽症を負う事故もあった。 このほか、靴ひもが巻き込まれて女性(62)が転倒した例もあった。 同庁は「黄色の表示線の内側に乗り、手摺に届かない小さな子供の手は 保護者がしっかりつなぐように」と注意を呼びかけている。 ================================================================ ==○特集「シティハイツ竹芝のエレベータ事故原因の考察」========== 港区の4号機での実験では、次の結果が得られました。 (1)ソレノイドに0.75A以上流すと ブレーキスプリングを圧縮して、ブレーキを開放できる。 (2)ソレノイドに0.7A流すと、ブレーキが開放し切らず、 ブレーキスプリングによる約100Nmの摩擦力が発生して ブレーキライニングが9時間で0.1mm磨耗。 (3)ソレノイドに0.55A流すと、 約140Nmの摩擦力が発生して22時間31分の運転で滑りが発生。 (4)ソレノイドに0.48A流すと約360Nmの摩擦力が発生して、 最初はエレベータが動くが開始16分後に熱膨張のために動かなくなる。 (5)摩擦力が大きいほど磨耗量が大きくなる。 (6)ブレーキライニングの磨耗量が0.7mm〜0.8mmになると 滑りが発生する。 これらから、ソレノイドの出力がブレーキを開放するのに必要な出力から 7%〜36%低下すると、 ブレーキライニングが磨耗することが分かります。詳細は、 http://lab.ele-life.com/pdf/takeshiba.pdf をご参照下さい。 ソレノイドの定格電流は1.8Aですが、 この中の0.75A分の出力は、実験機のブレーキの調整の場合 ブレーキスプリングを圧縮しブレーキアームを作動させる有効な力になりますが、 残りの電流による出力は、ストロークストッパーを押すだけの無効な力になります。 従って、ブレーキスプリングに作用するソレノイドの出力の低下については、 実験機の場合0.75A分の出力からの低下の割合で考えれば良いことになります。 事故機の場合の電流値は当初1.79Aに調整されていたようですが、 無効な出力はブレーキの動作騒音になるだけですから、通常は、 ストロークや直列抵抗を調整するなどして無効な出力が0に近づくように 調整されていたものと想定されます。事故機データによれば、 その後コイルの抵抗値が44Ωから27.5Ωに減少していましたから、 コイルのターン数が27.5/44=0.625に減少したことになります。 電流値は56/39.5=1.316倍に増加しますから、 ソレノイドの出力は0.82と18%減少することになり、 ブレーキドラムとブレーキライニングの間に摩擦力が発生して、 ブレーキライニングが磨耗したものと思われます。 捜査機関に押収されている事故機のソレノイドを分解して調査すれば、 事故原因が究明されると思われます。 ================================================================= ==○連載 エレベータクイズ =================================== 稼動している日本最古の電動エレベータは、京都市の東華菜舘にありますが、 日本最古の手動エレベータが設置されたのは、次のどこでしょう? 1.水戸 偕楽園 好文亭 2.金沢 兼六園 時雨亭 3.岡山 後楽園 延養亭 ============================================================= 【答え】 1.偕楽園 好文亭です。 【解説】 1842年に設置された配膳用のエレベータです。 因みに、ぺりー来航は1853年です。 ============================================================= ==○編集後記================================================= 最後までお読みいただき、有難うございます。 第58号は如何でしたでしょうか? シティハイツ竹芝の事故原因である ブレーキライニングの磨耗を起こした原因について、 既に公表されている資料などから得られるデータを用いて考察しました。 事故原因が究明される日も近いと思います。 ================================================================ ================================================================ 【発行元】株式会社エレベータ研究所 〒567-0806 大阪府 茨木市 庄1丁目8−19 TEL 072-665-6801 URL http://www.ele-life.com EMAIL info@ele-life.com ================================================================



