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3000軒のレストランを食べ歩いた精神科医でグルメ評論家の樺沢紫苑が、三ツ星レストラン、高級寿司店からラーメン、カレーまで。全てを食べ尽くしながら、食文化、そして食と人間、現代日本を徹底考察していくメルマガです。

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2008/02/09

グルメの心理学 「食」と想像力

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             グルメの心理学
       
      ●第1号● 2008年2月9日発行 ● 
 
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■1 はじめに
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 このメルマガは、三ツ星レストラン、高級寿司店からラーメン、
カレーといったB級グルメまで。

 2000軒のレストランを制覇した精神科医でグルメ評論家の
樺沢紫苑が、日本のみならず、世界中のレストランを食べつくしながら、
「食」と「人間」について考えていくメルマガです。


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■2 三ツ星レストランを行く 「カンテサンス」 その1
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┌─────────┐
 「食」と想像力
└─────────┘ 

 2月5日放送のNHK「プロフェッショナル仕事の流儀」に、
「カンテサンス」の岸田周三シェフが登場した。

 岸田周三シェフといえば、「ミシュランガイド」東京版で、
日本人としてフレンチの世界で初めて三つ星を獲得するとともに、
33才。現役、最年少の三つ星を獲得した天才シェフである。


 「カンテサンス」は以前から予約のとりづらい店であったが、
ミシュラン三ツ星を獲得して一層予約がとれなくなり、
さらに今回のNHKの特集によって、極めて予約困難な店になって
しまった。


 ミシュランの三ツ星フレンチ。
 そして、33歳という最年少の若さ。

 その岸田シェフは、一体どんな料理を作るのか?
 誰でも一度は食べてみたいに違いない。
 
 ということで、私が皆さんを代表して、自腹で「カンテサンス」の
料理を味わってきたので、その様子を報告していきたいと思う。


 私が「カンテサンス」を訪れたのは、2007年12月26日。
 
 「ミシュランガイド」東京版が発売されたのが、12月22日で
あるから、その直後のことである。


 実は、「カンテサンス」に予約を入れたのが、11月18日。
 ミシュラン掲載店発表の前日のことだ。

 「そういえば、明日、ミシュランの発表があったな」と思い出し、
ミシュラン三ツ星をとりそうな店で、最も行きたいと思う店を
予約しようと思った結果、選んだのが「カンテサンス」である。

 さすがに、ミシュランの掲載店の発表前ということで、電話も
1回でつながったし、希望の日時にアッサリと予約がとれた。

 翌日、ミシュランの掲載店発表のの記者会見。
 予想通り「カンテサンス」が三ツ星を獲得したので、
思わずニンマリした。


 さて、12月26日。
 一日遅いクリスマス。

 東京メトロ南北線・都営三田線「白金台」駅から、
「カンテサンス」まで、10分ほど歩く。
 マンションの一階ということで、それほど広い店ではない。

 ゴージャスというよりも、こじんまりとしたアットホームな
雰囲気である。

 しかしなから、来ている客の客層はさすが・・・というか、
非常にゴージャスである。

 ノーネクタイの男性は誰もいなくて、
「ああ、ネクタイをしてきてよかった」と思った。


 着席して、食前酒を頼むと、メニューが渡される。

 「アレ、おかしいな」と思った。

 なぜならば、「カンテサンス」はおまかせメニューが一種類のみで、
「メニューはない」と聞いていたからだ。

 しかし、メニューはあった。

 メニューブックの分厚い表紙を開くと、度肝をぬかされる。


 映画のネタバレのようになるので本当は書かない方が
いいのかもしれないが、おそらく読者のみなさんの中で、
実際に店を訪れる人は少ないだろうから、
書かせていただく。


 メニューブックの中には、
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      ・
      ・
      ・
      ・
      ・
      ・
      ・
      ・
 何も書かれていない。


 そう、「白紙のメニュー」である。


 何か、禅問答のような雰囲気すら漂うが、
この「白紙のメニュー」こそが、「カンテサンス」の
店のあり方というか、そのコンセプトを見事に反映しているのだ。


 一流レストランや一流寿司店に行って、
ただ席に座りさえすれば「おいしい料理が出てくる」と
思っている人は多いだろうが、それは完全に間違いである。


 特に高級になればなるほど、客にも「ある種の力」が要求される。

 その能力の一つは「想像力」である。


 料理を作る側がイマジネーションを駆使するのは当然のことだが、
料理を食べる側も、イマジネーションを駆使して、それを受けとめ
なければ、その料理を十二分に楽しむことはできない。

 「カンテサンス」の料理は、「意外性」に満ち溢れている。


 「意外性」というのは、定番なり王道なり定石を知っているから
こそ「意外」であると理解できる。


 例えば、初めてフレンチょ食べる人が「カンテサンス」に来ても、
何が「意外」なのか理解不能だろう。


 「次はこんな料理が来るだろう」という「予想」なり「期待」がある。

 次の料理を想像する。

 そして、それと違うからこそ、

「意外性」「驚き」「サプライズ」が

生まれる。


 「カンテサンス」の白紙のメニューは、これから始まる
美食の饗宴のプロローグいでありながら、
「サプライズ」を予感させる「予告編」のようなものだ。

 
 「意外性」「サプライズ」と言っても、先に来た客の料理を見ていれば
「サプライズ」も何もあったもんじゃない・・・とひねくれたことを言う
人もいるだろう。

 しかし、「カンテサンス」では、全く同じメニューは出てこない
ので大丈夫だ。

 二度、三度訪れるたびに、メニューは違ってくるし、また同じ日に
初来店の客が二組訪れても、客の年齢や性別や、いろんな要素によって
メニューは変わってくるという。


 この日、私の隣の席のカップルは、我々より30分ほど先に
コースをスタートしていたが、確かに私たちの料理とは
かなり違っていた。


 全く同じメニューもあったが、その場合は盛り付けが全く違っていた。

 そう、「同じ料理なのに盛り付けが全然違うじゃないか」と
別な「サプライズ」が用意されていたのだ。


 食べる側の客も、岸田シェフの独創性についていけるように、
イマジネーションを発揮しながら料理を楽しむと、
料理が2倍楽しめるだろう。


 「白紙のメニュー」を見て私が思ったのは、
この「白紙のメニュー」を埋めるのは、岸田シェフだけではない・・・
ということだ。


 そう、客とシェフとの共同作業によって、
この「白紙のメニュー」は完成されるのである。

 
 ピッチャーが150キロの剛速球を投げても、
キャッチャーがそれを受け取れないと、何の意味もない。


 ただ出されたものを味わうだけでは、
「白紙のメニュー」は埋まらない。


 客とシェフとの共同作業によって、白紙のキャンバスが
見事な食絵巻へと姿を変えていくのである。


 ある意味、我々、客のイマジネーションが試されている
ような気もした。



 さて、「カンテサンス」のサプライズに満ちた至福の時間。

 詳しくは、次号でお伝えしよう。


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■ 発行者: (株)樺沢心理学研究所 樺沢紫苑 (佐々木信幸)
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