2009/10/29
鞆の浦モデル―古い歴史の街を最先端の技術で捉え直す
鞆の浦の埋め立て架橋計画に差し止め判決がでた。 判決は「景観は国民の財産を認め、計画は県の裁量権を逸脱している」とした。 歴史に残る画期的判決だ。 しかし広島県は「今後の公共工事に影響が甚大」だとして、控訴に踏み切った。 改めて「広島県の行政っておかしいよな」と感ぜざるをえない。 公共工事をやる、やらないを、明確な基準のはっきりしない景観で判断されたら、たまらんという思いがあるのだろう。 もう世の中は大きく変化してしまっているというのを解っていないようだ。 港町はどこでもそうだが、この鞆の浦の街も道路は狭く、木造の建物が密集して建っている。 車はすれ違うのも大変だ。 個々の家には駐車場もない。 火事になったら消防車も入れない。 極めて危険な状態にある。 火事が起こったら、街はあっというまに消えてなくなる恐れすらある。 これでは、不便と危険のダブルパンチだ。 そんな不便で、危険な街には住めないと思うのはとうぜんだろう。 だからだろう、若者はどんどん街をすて、都会に行ってしまった。 高齢化率は40%を超えるという厳しさだ。 同じような理由から、古くからある建物を壊し、太い道路を作った街は多い。 でも結果は、街の魅力は薄れ、結局は街から人はいなくなってしまった。 残ったのは、車すら殆ど通らない太い道路だけというのが、地方都市の現実だ。 それがいままでの公共工事の実態だ。 今回の判決がでてから、観光客が急増し、売上も数倍になったともいう。 これは可笑しい。 これは、チャンスだ。 これを契機に新しい鞆の街のあり方を考えたらいい。 鞆の浦には、数百年もたつ建物が残っている。 そこには膨大な歴史のストーリーがある。 ここはなんとしても、景観的価値、歴史的価値を経済的価値に変換する仕掛けが必要だ。 保命酒という古くから伝わるお酒もある。 薬草が入っているとのことで、健康にいいという。 今医食同源ということは今の流行りだ。 世界的にも日本酒の美味しさが見直されている。 「英語、中国語、韓国語等でのネット販売」も積極的に進めたらいい。 アキハバラ塾に相談したらいい。 坂本竜馬が泊まった部屋、朝鮮通信使のパレード、そして歴史的建造物の一つ一つを「You Tube」に載せ、 その魅力を人々に理解してもらえるようにPRすることもしたらいい。 古い民家を改装したカフェやレストラン、宿泊施設を作ったりすることはもちろん必要だが、 それに加えてサービスの仕方について研修することも必要だろう。 観光地として「シェイプアップ」していくことが必要だ。 尾道もそうだし、竹原だって、大三島神社だってそうだが、瀬戸内海には鞆の浦に匹敵する歴史的な港町が沢山ある。 そうした港町が連携し、ドイツのロマンチック街道のような「瀬戸内海ロマンチック海の道」として売り出す仕掛けも必要だろう。 「瀬戸内海ロマンチック海道」として世界遺産へも登録」したらいい。 鞆の浦だけで何とかしようなんてしない方がいい。 世界中から観光客を集めためには、もっと大きな意欲と仕掛けが必要だ。 そうでなければ、国内からの観光客だって集められない。 街中の交通機関は、あの狭い道をすれ違えるような小さな「電気自動車」だけにすればいい。 自動車メーカー各社は競ってEV車の開発を進めている。 時速4~15KMの自転車と同じ程度の速さの電動自動車を走らせるようにしたらいい。 時速100KMなんてスピードはいらない。 そんな電気自動車のテストコースとしたっていい。 ゴルフ場のコースを走っている4人乗りの乗用カートを改修して使ってもいい。 火災対策には、街全域を重要文化財並みに「火災感知器と消火栓」を張り巡らすことも必要だろう。 生活上必要な幹線道路は後ろの山にトンネルを作ったっていい。 今までの市街地整備は、利便性、快適性、安全性を確保するために、ハードな面的基盤整備ばかりに気がとられてきた。 つまり、なにごともまずいわゆるインフラで対応しようとしてきたわけだ。 景観法もできた。 政府はダム、道路等の公共工事の大幅な削減することを決めた。 公共工事のありかたが変わったのだ。 広島県もオールタナティブ・テクノロジーの存在に気がつくべきだ。 こうした鞆の浦の歴史的景観保存のための工事は、これからの時代に適った新たな公共工事を創り出すことでもある。 今回の判決に控訴するという広島県の記者会見は土木局長が行っていた。 それもおかしいが、鞆の浦の問題を土木局だけの問題にせず、クロスセクション的に見ていけば、別の答が出たようにも思う。 最先端の技術は意外と古いものとは相性がいい。 「鞆の浦の街の古い歴史を、最先端の技術で捉え直す」という試みをすることで、新しい街の姿が見えてくるのではないだろうか。 他の街でも、参考になるような「鞆の浦モデル」が作られることを期待したいが、それは当分先のことになってしまうのだろうか。 残念だ。 広島県は、こうした新しい試みこそを応援すべきだろうと思う。 元安川



