2009/07/05
電気自動車―ビッグスリーからスモールハンドレッドへ
小学校の頃、電気で動くモーターを作ったことがある。 エナメル線と電池とクリップと磁石を用意すれば作れる。 創るのは極めて簡単だが、N極とS極がこうなっていて、それで動くのだと説明されても、目に見えないから、どうして回転するのかやっぱり不思議だった。 電気自動車は、モーターの回転運動をタイヤの回転運動に伝えればいいわけだから、理に適っていることは確かだ。 ガソリン車はピストンの上下運動を回転運動にしているわけだからおかしいといえばおかしい。 ロータリーエンジンはその点が最も優れているというわけだ。 ガソリンエンジンはその仕組みはわかっても、小学校で作れるほど簡単ではない。 ガソリンエンジン車となると、ガソリンエンジンの構造がもともと複雑なうえ、排ガス規制への対応、無段変速機、 燃費改善等の性能向上のため極めて複雑になっていることもあり、ちょっとやそっとで作れる代物ではない。 開発には長い時間と膨大なお金がかかっている。 現在の自動車産業は、膨大な下請け企業を抱え、高度な企業ピラミッドが構成されている。 自動車産業への新規参入は極めて難しい状況となっている。 自動車産業はその生き残るためには、生産規模が400万台以上ないと、コスト競争力が保持できないとか、研究開発費が工面できないとかいわれてきた。 しかし電気自動車はバッテリーとモーターさえあれば、誰でもつくれる。 問題は電池だ。 ゴルフ場でよく使われている電気の乗用カートも、1回の充電で2ラウンドは難しいとか、寿命が2年程度と短い。 それにめちゃ重いし、値段も高い。 三菱自動車はモーターとバッテリーだけで走るi-MiEV(アイ・ミーブ)を今年7月から受注を開始すると発表した。 電気のみで走るという極めて革新的なコンセプトの車だ。 「バッテリーはリチュームイオンタイプでプリウスやインサイトが搭載するニッケル水素タイプより効率が高く、大きな電力を蓄えられる。 充電も家庭用の100Vのコンセントからでもできる。 1回の充電で160km走行できる」 という。 現実にはクーラーを使ったり、信号で止まったりするから、走行距離は半分くらいのもんだろう。 それでも普段の生活には充分だ。 問題は価格だ。 400万円以上とまだまだ高い。 中電は2009年度取りあえず30台を導入すると発表した。 実情はまだまだ研究段階だ。 しかしいずれ近い将来安くて、充分な性能の電池も開発されるだろうと予想される。 電池は汎用性があることもあって、自動車メーカーもその調達は難しくないだろうといわれている。 そうなれば、電気自動車は、今後は大型家電と同じく、パナソニックやソニーが販売するようになるかもしれない。 電気自動車をデオデオやビックカメラで買えるようになるかもしれない。 電気自動車を作るには、それほどの技術と資金がいらないということになれば、 中国、インド等今世界の工場になっている国の企業が今以上に凄い勢いで進出してくることも予想される。 東京大学教授の村沢義久氏は「電気自動車の時代にあっては、ビッグスリーからスモールハンドレッドの時代になる」 「既存の自動車メーカーは安全性や乗り心地の提供業者にならざるを得なくなるだろう」ともいっている。 電気自動車の時代になれば、T型フォードで完成されたベルトコンベアー方式による大量生産のメリットなんて関係なくなるというわけだ。 既存の技術体系の上に成り立っている自動車産業というシステムがまったく無意味になるということだ。 GMが破綻したのは、トヨタを代表とする燃費の良い小型車に敗れたからだといわれている。 GMはアメリカ政府の公的資金の注入でかろうじて経営は続けられることになった。 不採算ブランドを廃止、売却し、必死の生き残り策を模索している。 しかし電気自動車の進歩はそんな努力を吹き飛ばす可能性もありそうだ。 トヨタ、ホンダのハイブリッドカーの売れ行きは凄いが、そのハイブリッドカーはガソリンエンジンの延長線上にある。 これだって将来はどうなるかわからないということになる。 自民党をぶっ壊すといった小泉さんではないが、電気自動車の先頭を切った三菱自動車も会社あり方そのものを根本から変えることが必要だろうが、 はたしてそんなことができるのだろうか。 電気自動車はとんでもないパラダイムシフトを起こそうとしているようだ。 光岡自動車の車のように、質の高いデザイン、面白い形をした電気自動車が街を走るようになるかもしれない。 以前はあの車はポルシェだ、シトロエンだと、どれだけ車の名称を当てられるかが、男の子の自慢だった。 今の若者は自動車離れが進んでいるという。 そんな面白い車が走るようになったら、また車を見る、乗るのが楽しくなるかもしれない。 大変な時代になった。 ゲン



