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元本屋の店員のレフティやすおが、毎月前半では読書に関するエッセイを、後半には古今東西の古典の名作・名著を一点ずつ紹介します。読書とは他人(ひと)様の人生を追体験すること。「楽しい読書」で楽しいひと時、豊かな人生を送りましょう。

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2009/12/31

レフティやすおの楽しい読書 0901231(No.29)『代表的日本人』内村鑑三―I for Japan

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         レフティやすおの楽しい読書

         ― 読書で豊かな人生を! ―

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本日も、
若い頃は本屋の店員だった本好きのレフティやすおといっしょに、
このメルマガ「レフティやすおの楽しい読書」を通して、

古今東西の古典、名作・名著から選りすぐった一冊にふれ、
豊かな人生の時をすごしましょう。

読書とは、他人(ひと)様の人生を追体験することです。

そこから何かを学ぶか、ひと時の愉快な時間をすごすか、
それは人それぞれ。
自分なりの楽しみ方でいいのです。

まずは楽しい読書を心がけましょう。

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 2009(平成21)年12月31号(No.29)-091231-
          『代表的日本人』内村鑑三―I for Japan

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 『代表的日本人』"Representative Men of Japan"
                       内村鑑三/著
  ―『日本および日本人』"Japann and the Japanese"(1894)
     明治43年(1910) 再版時改題
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明治初期、日本人が日本人及び日本文化について英語で書き、
世界でベストセラーとなった名著
―新渡戸稲造『武士道』、岡倉天心『茶の本』と並ぶ、
内村鑑三『代表的日本人』を紹介します。


   『日本および日本人』が英文で書かれたのも『地理学考』
   と同じ年だった。『日本および日本人』が、欧米人の日本
   旅行がようやく数を増し、欧米人の手による粗雑で歪めら
   れた日本紹介が現われはじめた状況において、世界におけ
   る<日本>(原文傍点・引用者注)の歴史の価値を、欧米
   人に対して紹介することにあった... /
   ... 『余はいかにしてキリスト信徒となりしか』も『日本
   および日本人』も、内村の親友新渡戸稲造の『武士道』
   (一八九九年)や同時代人岡倉天心の『東洋の理想』(一九
   〇三年)と同じく日本と日本人に固有の価値を、自らの英
   語で西欧世界に紹介しようと志しており、これらはいずれ
   も、同じ世代の人々の間に共通する開かれたナショナリズ
   ムを示すものといえよう。
    (「近代日本と内村鑑三」松沢弘陽
     『日本の名著 38 内村鑑三』中央公論社 1971 より)

『代表的日本人』は、
始め『日本および日本人』の書名で出版されたものを
再版時に、序文および他の論文を削除、改題したものです。

この本は、英文で書かれ、世界の人々に向けて、
世界における日本の地位を高める意味で書かれたものであり、
かつ自身の日本人としての出所を示すものでもあったのでしょう。

内村鑑三は、『余は如何にして基督信徒となりし乎』のなかで、

   ... 人はその国を一歩出て個人以上である。彼は彼自身の
   中に彼の国民と彼の民族を担う。彼の言葉と行為はただ彼
   のものとしてだけでなく、彼の民族と彼の国民のそれとし
   てもまた判断される。かくてある意味では、異郷における
   滞在者はいずれも彼の国の全権公使である。... 
    (鈴木俊郎/訳 岩波文庫 初1938,1993 
    「第七章 基督教国にて―慈善家の間にて」p.128より)

と述べています。

自分の言葉により、極東の野蛮国と目されていた日本が、
世界に誇り得る文化を持ち、
優れた人物を輩出した国であることを、
世界中に知らしめるために書かれたものである、
という事実がわかるでしょう。


西郷隆盛、上杉鷹山、二宮尊徳、中江藤樹、日蓮上人
この五人を日本人の代表として取り上げ、
それぞれの小伝とともに、
彼らがいかに優れた精神の持ち主であり、
辺境の国に生まれ、異端の教えを受けたものであっても、
決してキリストの教えを受けたものに負けない
気高い精神を持ち、精進を重ねた聖人であることを紹介します。


彼らの多くは、
後に新渡戸稲造『武士道』によって示されるような
武士道精神に則った人物であり、
彼らの信奉した武士道精神は、内村に言わせれば、
キリスト教信徒となる礎―接ぎ木の台木となりうるもの、
あるいは、それ以上であったのです。

さらに、日蓮上人に対しては、
世に受け入れられぬ自らの信仰とその社会との戦いを投射し、
自らを鼓舞しているように思われます。

ただし、内村鑑三はこう書いています。

 《戦闘的でない日蓮、これが我々の理想とする宗教家である。》
  (『代表的日本人』「仏僧 日蓮上人/八 人物評」p.191より
     岬龍一郎/訳 PHPエディターズ・グループ 2009 )


札幌農学校の同期生であり、
自分よりも学業において劣っていたと思われる新渡戸稲造が、
東大進学さらに米国留学を果たし、いち早く出世した
という現実に対する屈折した思い、
また最初の結婚に失敗したことなどが、
その後の彼の人生に大きな影を落としてゆきます。

米国留学から帰国後も、一高教師となるも
教育勅語不敬事件で失職、社会的にも大きなダメージを受けます。

しかし、彼はそれらの逆境にあって、神への信仰心により、
自らの道を切り開いてゆくのです。

それはまさしく、
日蓮上人にも相通ずるものがあるといえるでしょう。

そして彼自身も、日蓮上人同様に、
この乱れた世を何とかしたいと願い、社会活動を行います。

ところが、それらは必ずしも受け入れられることなく、
世の中は、まさに私欲のための戦争へと突き進んでゆくのです。

それでもなお、彼は墓碑銘として、以下の言葉を遺しています。

   余は日本の為め  I for Japan;
      日本は世界の為め  Japan for the World;
      世界は基督の為め  The World for Christ;
   基督は神の為め也 And All for God;

 ・・・

今日、日本は混迷の中で漂っているように思われます。

世界の中の日本としても、
内村鑑三が言った「日本の天職」とは何かを見出せないままに。

窮(九)鳥が山に逃げ込むかのような、
迷走振りを見せる総理大臣の下、
一党の権力者が政治の行方を左右するような、
どっかの国に似た状況に危機感を抱かずにはいられません。

世界に誇れる日本、および日本人はどこへいったのか、
今こそ私たちは過去の偉人に学ぶ時だろうと思います。

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【付録】『代表的日本人』内村鑑三を読む 
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●原典を読む:

★『代表的日本人』鈴木範久/訳 岩波文庫 (1995)
http://www.amazon.co.jp/dp/4003311930/ref=nosim/?tag=hidarikikidei-22
★『代表的日本人』岬龍一郎/訳 PHPエディターズ・グループ
(2009)
 新渡戸『武士道』の新訳などを手がける現代に武士道精神を復活
 させようという訳者による新訳。
http://www.amazon.co.jp/dp/4003311930/ref=nosim/?tag=hidarikikidei-22
『代表的日本人 対訳』稲盛和夫/監訳 講談社インターナショナル
(2002)
 稲盛和夫の序文。日本語英語対訳本。
http://www.amazon.co.jp/dp/4770029284/ref=nosim/?tag=hidarikikidei-22

●内村鑑三『代表的日本人』について:

『内村鑑三の『代表的日本人』 品格ある5人の日本人が教えてくれ
たこと』童門冬二/著 PHP研究所 (2007)
 時代小説家が『代表的日本人』を要約、“新たな視点で活写する”。
http://www.amazon.co.jp/dp/4003311930/ref=nosim/?tag=hidarikikidei-22
(web)『松岡正剛の千夜千冊』
第二百五十夜【0250】2001年3月15日『代表的日本人』内村鑑三 
http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya0250.html

●その他の内村鑑三の著作:

★『日本の名著 38 内村鑑三』責任編集/松沢弘陽 中央公論社(1971)
 「余はいかにしてキリスト信徒となりしか」「求安録」「地人論」
 「小篇」収録、他に「近代日本と内村鑑三」松沢弘陽、年譜など。
http://www.amazon.co.jp/dp/4003311930/ref=nosim/?tag=hidarikikidei-22
★『余は如何にして基督信徒となりし乎』鈴木俊郎/訳 岩波文庫
(1973)
 幼少時から、札幌農学校でのキリスト教入信、渡米後の生活、大
 学生活とそこで得た回心の経験、キリスト教国アメリカの現状な
 ど、帰国までの日々を綴る自伝的半生記。
http://www.amazon.co.jp/dp/4003311922/ref=nosim/?tag=hidarikikidei-22
★『後世への最大遺物 デンマルク国の話』岩波文庫(1976改版) 
 兼ねも事業も、思想も教育も後世の人たちに遺せない並みの人間
 が唯一遺せるものは何か、人生における最大の価値ある行いとは
 何かを教える「後世への最大遺物」。ドイツとの戦争に敗れた後、
 植林により国を立て直したデンマークの人とその行いに範を取り、
 日本の未来に期待する「デンマルク国の話」。
http://www.amazon.co.jp/dp/4003311949/ref=nosim/?tag=hidarikikidei-22
『内村鑑三所感集』鈴木俊郎/編 岩波文庫(1973)
 『聖書之研究』巻頭「所感」から選んだ約千篇。
http://www.amazon.co.jp/dp/4003311957/ref=nosim/?tag=hidarikikidei-22
『キリスト教問答』講談社学術文庫 531(1981)
 (筆者未読)キリスト教の根本問題に対しての考察。
http://www.amazon.co.jp/dp/4061585312/ref=nosim/?tag=hidarikikidei-22

『内村鑑三著作集』全40巻 岩波書店(1984)

―内村鑑三は、個人雑誌『聖書之研究』始め、
 非常に多くの著作の人で多数の著作があります。

● 内村鑑三とその著作を知る:

★『内村鑑三』鈴木範久/著 岩波新書 黄版(1984)
 岩波文庫『代表的日本人』訳者による、内村鑑三の伝記。小原
信/著『内村鑑三の生涯』に出ていないエピソードも。
http://www.amazon.co.jp/dp/4003311930/ref=nosim/?tag=hidarikikidei-22 
『内村鑑三 人と思想 25』関根正雄/著 清水書院センチュリー・
ブックス(1967)
 内村鑑三の生涯と著作および思想の解説入門書。
http://www.amazon.co.jp/dp/4003311930/ref=nosim/?tag=hidarikikidei-22
『内村鑑三 シリーズ宗教と人間』富岡幸一郎/著 五月書房(2001)
 リブロポート刊『内村鑑三 偉大なる罪人の生涯』(1988)に対談
 を加えた増補版。宗教的な立場から書かれたもの。
http://www.amazon.co.jp/dp/4003311930/ref=nosim/?tag=hidarikikidei-22
★『内村鑑三の生涯 近代日本とキリスト教の光源を見つめて』
小原信/著 PHP研究所(1992)
神格化を避けて、“人間内村鑑三”に多角的にふれた伝記。人間
的に矛盾のある(人間なら大なり小なり当然のことだけれど)人
物像としてよりリアルな内村鑑三に迫る。500頁を超える大作。
http://www.amazon.co.jp/dp/4003311930/ref=nosim/?tag=hidarikikidei-22

(★マークは、筆者のおすすめ本です。本選びの参考にどうぞ。)

*『代表的日本人』以外の内村鑑三の作品は、
 またいずれ機会を見て紹介します。お楽しみに!

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 【2010年1月の発行予定】
 次30号(1/15):私の読書論―その9―私の蔵書から(仮)
  次々31号(1/31):『タイムマシン』H・G・ウェルズ―暗い未来
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※「別冊 編集後記」~『レフティやすおの作文工房』~
『代表的日本人』内村鑑三―I for Japan
 ―第29号「楽しい読書」別冊編集後記
http://ameblo.jp/lefty-yasuo/entry-10421378380.html

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●『営業のカンセツワザ』2008/03/13 208号「我流 文章術(2)」
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