2009/09/30
レフティやすおの楽しい読書 090930(No.26)『白い牙』ジャック・ロンドン―犬と狼と人と
■―★祝★【創刊4周年】レフティやすおのもう一つのメルマガ、 日本唯一の、左利きによる、右利きと左利きのための、左利きの "現役"メルマガ:『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』― ■ご登録は → http://archive.mag2.com/0000171874/index.html ><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><>< レフティやすおの楽しい読書 ― 読書で豊かな人生を! ― ><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><>< 本日も、 若い頃は本屋の店員だった本好きのレフティやすおといっしょに、 このメルマガ「レフティやすおの楽しい読書」を通して、 古今東西の古典、名作・名著から選りすぐった一冊にふれ、 豊かな人生の時をすごしましょう。 読書とは、他人(ひと)様の人生を追体験することです。 そこから何かを学ぶか、ひと時の愉快な時間をすごすか、 それは人それぞれ。 自分なりの楽しみ方でいいのです。 まずは楽しい読書を心がけましょう。 ><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><>< 2009(平成21)年9月30日号(No.26)-090930- 『白い牙』ジャック・ロンドン―犬と狼と人と ><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><>< ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 『白い牙』 WHITE FANG (1906) ジャック・ロンドン/著 ―犬と狼と人と ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ... 作家の戸川幸夫が『白牙』について印象深い言葉を残 しているので引いておこう。/ 本には、一度読んだらも う興味がなくなって読み捨てにするものと、くり返しくり 返し読むものとがあるが、「白い牙」は私にとって、くり 返し、くり返し読んだ愛蔵書となった。 /『白牙』は、 それほどの作品なのである。【現代教養文庫『白牙』(社 会思想社 2002)「訳者あとがき」より】 『決定版ジャック・ロンドン選集2 ボクシング小説集 /白牙』辻井栄滋/訳 本の友社(2005) 「『白牙』作品解説」p.319 より ジャック・ロンドンといえば、まず『野生の呼び声』が有名で、 かつ(文字通り)“呼び声”が高いのですが、 私個人としては、やはりこちらの『白い牙』がオススメです。 『野生の呼び声』が悪い、というのではなく、 もっとこちらの方がもっと優れている、と思うからです。 一般に、『野生の呼び声』の姉妹編として、 前作が人に飼われていた犬が野性に返る物語で、 この作品はその逆に、 野性の狼(と犬の血の混じった)の子が、 人間に飼われて文明化する物語とされています。 もちろん、その通りなのですが、 前作は長編としては弱く、 長さそのものからいっても中編であり長編とは呼びがたく、 全体を通してストーリイ的にも、 長編としての骨格ができていないように思います。 その点こちらの作品は、第一部の導入部から、 主人公が登場する第二部、第三部… と進んでゆく展開は 見事なものといえるのではないでしょうか。 野性を捨て、自然界から人間界に近づいてゆく過程を 全体の構想に基づいてストーリイ展開してゆくところは、 前作以上に練られているように思います。 かなたの林間の空き地から、なにか彼に呼びかけてくる ものがあった。母もそれを聞いたはずだったが、しかし、 それとはべつの、それよりもさらに大きな呼び声、火と、 そして人間の呼び声を、母は聞いていた。その声は、すべ ての動物のうちで、ただ狼にだけ―ただ狼と、その兄弟で ある野生の犬にだけ―答えるようにと発せられたものなの だった。/... 目に見えぬ神秘的な力で、いまなお神々は 彼女を束縛し、解放してくれようとはしないのだ。... 彼 には母の呼び声のほうが、人間や<荒野>の呼び声のいず れよりも、もっと強かった。... 『白い牙』深町眞理子/訳 光文社古典新訳文庫(2009) 「第三部 荒野の神々/第二章 とらわれの身」p.196 かつて人間(アメリカ・インディアン)に飼われていた母と 狼の父との間に、自然界の森の中で生まれた、 ... ホワイト・ファングは、外見上も、行動面でも、心の 動きの点でも、いまだに<野性>の残滓をひきずっている。 彼は<野生>を象徴するもの、<野性>の化身なのだ。... 「第四部 すぐれた神々/第一章 同族の敵」p.271 ... なんとしても、ひとり離れて、自由に、自分の足で立 ち、他の生き物との接触を避けなくてはならない。これは、 今なお<野性>が彼を去らず、彼を通しておのれを主張し ている、そのあかしだった。さらに、この感情をいっそう 強めていたのが、彼が仔狼のころからずっと送ってきた、 世の{のけもの、はぐれもの}(本文傍点*引用者注)と しての生活だった。他所との接触のなかにこそ、危険はひ そんでいる。それは罠だ。つねに罠でしかない。それにた いする恐れは、彼の命の奥深くにひそみつづけ、体質のな かに、しっかり織りこまれているのだった。 「第四部 すぐれた神々/第一章 同族の敵」p.275 そんな彼が、ついに、最愛の飼い主となる「神」に出会う。 これこそが、ホワイト・ファングにとっての“終わりの 始まり”であった。これまでの生活の、そして憎しみの支 配の終わり。そしてその先にひらけた新たな、想像もつか ぬほど美しい生活の始まり。それを成就するのには、ウィ ードン・スコットの側の深い省察と尽きざる忍耐、この二 つが必要だった。いっぽう、ホワイト・ファングの側に必 要とされたのは、ほかでもない、一種の革命であった。... 「第四部 すぐれた神々/第六章 愛の主人」p.369-370 とにかく、私にとっては、 人間の飼い犬から内なる野性の呼び声に誘われて、 自分の“本性”を見い出してゆく前作の感動とは違い、 この作品の“愛情”という“人間性”を取り戻してゆく、 ホワイト・ファングの心の、 非行少年が愛情あふれる養い親に見い出され改心してゆく、 あるいは、キリスト教徒の“回心”の過程? とでも言うべきものに興味を持ってしまいます。 孤独な一匹狼から、家族的な愛情を見い出す 「オオカミ大明神」(白石佑光訳) 「聖なる狼(ブレスト・ウルフ)」(深町眞理子訳) (捨て身で愛する飼い主の父を守った彼はこう呼ばれるのです。) 「闘狼(ファイティング・ウルフ)」(深町眞理子訳) (彼は、前の飼い主に「闘犬」として扱われていたのでした。) ホワイト・ファングの物語のラストは、快いものがあります。 犬はこうして人間の友達になったのだという、 一つの進化史を説きつけられているようでもありますが…。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【付録】ジャック・ロンドンを楽しむために ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ● 原典『白い牙』を読む: ★『白い牙』深町眞理子/訳 光文社古典新訳文庫(2009) 『野生の呼び声』に続く、深町訳ロンドンの古典新訳文庫ニ作品 目。信岡朝子の解説、年譜付。私はこのタイトルが好きです。 http://www.amazon.co.jp/dp/4334751784/ref=nosim/?tag=hidarikikidei-22 ★『白い牙』白石佑光/訳 新潮文庫(改版1992) 若い頃、最初に読んだのはこちら。 http://www.amazon.co.jp/dp/4102111018/ref=nosim/?tag=hidarikikidei-22 ★『決定版ジャック・ロンドン選集2 ボクシング小説集/白牙』 辻井栄滋/訳 本の友社(2005) 読書も含めて、知的生産に関する諸技術を説く古典的名著。 http://www.amazon.co.jp/dp/4894395223/ref=nosim/?tag=hidarikikidei-22 DVD 『ホワイトファング』ランダル・クレイザー/監督(1991) ブエナビスタ ホームエンターテイメント http://www.amazon.co.jp/dp/B000BKDRJ0/ref=nosim/?tag=hidarikikidei-22 『ホワイトファング2/伝説の白い牙』ケン・オリン監督(1994) ブエナビスタ ホームエンターテイメント http://www.amazon.co.jp/dp/B000BKDRIQ/ref=nosim/?tag=hidarikikidei-22 ● ジャック・ロンドンを読む: ★『野性の呼び声』深町真理子/訳 光文社古典新訳文庫(2007) 新訳版。『白い牙』の姉妹編とも呼ばれる誉れ高き名作。 http://www.amazon.co.jp/dp/4334751385/ref=nosim/?tag=hidarikikidei-22 ★『野性の呼び声』大石真/訳 新潮文庫(1981) 最初に読んだ本。 http://www.amazon.co.jp/dp/4102111026/ref=nosim/?tag=hidarikikidei-22 『どん底の人びと ロンドン1902』/訳 岩波文庫(1995) イギリス・ロンドンの貧民街に潜入したルポルタージュ。 ★『ジャック・ロンドン幻想短編傑作集』 彩流社 2008 死の直前に描いたSFや幻想的な作品。初訳4編を含む。(夜の 精 赤い球体 コックリ占い板 古代のアルゴスのように 水の子) http://www.amazon.co.jp/dp/4779113911/ref=nosim/?tag=hidarikikidei-22 ★『火を熾す』柴田元幸翻訳叢書 SWITCH LIBRARY スイッチ・パ ブリッシング(2008) いまや訳者名で売れるといわれる、柴田元幸の翻訳による、ロン ドンの全生涯から選んだ傑作短編集。筆者未読。(火を熾す メ キシコ人 水の子 生の掟 影と閃光 戦争 一枚のステーキ 世界が 若かったとき 生への執着) http://www.amazon.co.jp/dp/4884182839/ref=nosim/?tag=hidarikikidei-22 ★『南海物語』深沢広助/著 春風社(2006) 自分の船で航海に出たロンドンがそのときの経験を基に書いた南 海もの。(マプヒの家 鯨の歯 マウキ ヤー!ヤー!ヤー! 異教徒 怖ろしいソロモン諸島 大胆不敵な白人 マッコイの子孫) http://www.amazon.co.jp/dp/4861100704/ref=nosim/?tag=hidarikikidei-22 ★『ジャック・ロンドン選集』辻井栄滋/訳 本の友社(2005-2006) ロンドン研究と翻訳をしてきた辻井栄滋の個人訳全集ともいうべ きジャック・ロンドン選集。 1 決定版 野生の呼び声/どん底の人々 3 決定版 太古の呼び声/アメリカ浮浪記 4 決定版 マーティン・イーデン 5 決定版 ジョン・バーリコーン/赤死病/エッセイ 6 決定版 短篇集 極北もの、ハワイ・南海もの、社会派SFもの、歴史ファンタジー など。(生の掟 ミダスの手先 まん丸顔 豹使いの男の話 生命に しがみついて 背信者 焚き火 全世界の敵 奇異なる断章 恥さら し デブズの夢 スロットの南側 さよなら、ジャック 支那人 ハ ンセン病患者クーラウ ゴリア 椿阿春 比類なき侵略 原始時代に かえる男 強者の力) ★『ジャック・ロンドン放浪記』川本三郎/訳 小学館 地球人ライ ブラリー(1995) 16-18歳当時ジャック・ロンドンは、アメリカ大陸横断鉄道の無 賃乗車により、放浪を重ねていた。その自伝的放浪記。当時の社 会情勢の理解を促すコラム付き。編年体でないのが残念。 http://www.amazon.co.jp/dp/4092510144/ref=nosim/?tag=hidarikikidei-22 ● 伝記 ★『馬に乗った水夫 ジャック・ロンドン、創作と冒険と革命』ア ーヴィング・ストーン/著 橋本福夫/訳 早川書房 ハヤカワ・ノ ンフィクション・マスターピース(原著1938, 2006) ロンドンの二度目の妻の資料を得た、ロンドンの評伝の力作。何 かというと実父の遺伝を重視しすぎる点が鼻につくが…。 http://www.amazon.co.jp/dp/4152087374/ref=nosim/?tag=hidarikikidei-22 ★『二十世紀最大のロングセラー作家―ジャック・ロンドンって何 者?』辻井栄滋/著 丹精社(2005) 日本におけるロンドン研究の第一人者による、手軽にロンドンを 知ることができる、右側ページに文章、左側に写真などを配置し たロンドンの人と作品的フォト・エッセイ。 http://www.amazon.co.jp/dp/4839110107/ref=nosim/?tag=hidarikikidei-22 『地球を駆けぬけたカリフォルニア作家 写真版ジャック・ロンド ンの生涯』ラス・キングマン/著 辻井栄滋/訳 本の友社(2004) 筆者未読。 ● その他:ジャック・ロンドンを知る 『地球的作家ジャック・ロンドンを読み解く 大自然と人間-太古 ・現在・未来』辻井栄滋/著 丹精社(2001) 日本におけるジャック・ロンドン研究の第一人者、辻井栄滋のロ ンドンに関する研究論文集。 『ジャック・ロンドン讃歌』辻井栄滋/監修・編集 明文書房(2009) ロンドンに関する最新の本。筆者未読。 (★マークは、筆者のおすすめ本です。本選びの参考にどうぞ。) * 上記の本以外にも、近年、辻井栄滋氏の活躍もあり、ロンドン の著作がドンドン出版され、再評価されつつあります。いずれま た、紹介の機会もあるかと思います。お楽しみに! *『レフティやすおの本屋』支店「海外名作文学館」 「英米文学2」の棚 http://myshop.7andy.jp/md_fair/shinsho/lefty-yasuonohonya ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【10月の発行予定】 次27号(10/15):私の読書論―その7―読書のイロハ(3) 次々28号(10/31):『代表的日本人』内村鑑三―I for Japan ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ※「別冊 編集後記」~『レフティやすおの作文工房』~ 9.30『白い牙』ジャック・ロンドン―犬と狼と人と ―第26号「楽しい読書」別冊編集後記 http://ameblo.jp/lefty-yasuo/entry-10352574865.html ----------------------------------------------------------- ◆ 弊誌「楽しい読書」が 以下の各誌で紹介されました! ----------------------------------------------------------- 内気な内向型でも営業ができる、性格と営業は関係がないという 『内向型営業マンの売り方にはコツがある』大和出版 左利きの不便さを綴った、「渡瀬けん」名義の今売れ行き好調の 『左利きの人々』中経の文庫 の著者で左利き仲間、 無口営業の達人・渡瀬謙氏の殿堂入りメルマガ ●『営業のカンセツワザ』2008/03/13 208号「我流 文章術(2)」 http://archive.mag2.com/0000115536/20080313130000000.html まぐまぐのオフィシャルマガジン、 ●『ウィークリーまぐまぐ[エンタテイメント版]』2008/3/14号 「今週のおすすめメルマガ@エンタテイメント」コーナー http://www.mag2.com/official/wmagentr/2008/03/14.html ●『まぐまぐ!』サイト 「今週のおすすめメルマガ」2008年03月12日~03月18日 http://www.mag2.com/wmag/osusume/osusume080312.html ><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><>< ▼レフティやすおの<左利きを考える>メルマガ: 『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』 (レフティやすおの左組通信メールマガジン) http://www.mag2.com/m/0000171874.html http://homepage3.nifty.com/lefty-yasuo/mm-hikkii.html ▼本のことなら: 『レフティやすおの本屋』―左利き関連本、古典入門書ほか http://myshop.7andy.jp/myshop/lefty-yasuonohonya ▼レフティやすおのホームページ: 『左利きを考える レフティやすおの左組通信』 http://homepage3.nifty.com/lefty-yasuo/ ▼レフティやすおのブログ: 『レフティやすおのお茶でっせ』 http://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/ 『レフティやすおの作文工房』 http://ameblo.jp/lefty-yasuo/ 『レフティやすおの新しい生活を始めよう!』 http://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/ ><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><>< レフティやすおの楽しい読書/発行人:レフティやすお 発行システム:『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/ 読者登録解除(配信中止) ↓ http://www.mag2.com/m/0000257388.html http://homepage3.nifty.com/lefty-yasuo/tanosiidokusho.html Copyright(c) 2009 by L.YASUO ><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><<><


