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元本屋の店員のレフティやすおが、毎月前半では読書に関するエッセイを、後半には古今東西の古典の名作・名著を一点ずつ紹介します。読書とは他人(ひと)様の人生を追体験すること。「楽しい読書」で楽しいひと時、豊かな人生を送りましょう。

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2008/02/29

レフティやすおの楽しい読書 08/02(No.2)大人も楽しい『トム・ソーヤーの冒険』

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         レフティやすおの楽しい読書

         ― 読書で豊かな人生を! ―

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本日から、
若い頃は本屋の店員だった本好きのレフティやすおといっしょに、
このメルマガ「レフティやすおの楽しい読書」を通して、
様々な本にふれ、豊かな人生の時をすごしましょう。

読書とは、他人(ひと)様の人生を追体験することです。

そこから何かを学ぶか、ひと時の愉快な時間をすごすか、
それは人それぞれ。

自分なりの楽しみ方でいいのです。

まずは楽しい読書を心がけましょう。

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 2008(平成20)年2月号(No.2)-080229-
                        大人も楽しい『トム・ソーヤーの冒険』

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 大人も楽しい『トム・ソーヤーの冒険』
    The Adventures of TOM SAWYER by Mark Twain (1876)
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私のお気に入りの本を紹介する第二回目は、
高二の夏休みに購入以来、何度も読んだ私の愛読書
『トム・ソーヤーの冒険』です。

 ・・・

『トム・ソーヤーの冒険』って子供の本でしょ?

と思う人も少なくないでしょう。
実際に子供のときに読んだきりという人も。

確かに児童文学の傑作として、子供向け文庫でも
各種の少年少女文学全集にも収録されています。

でもこの本は、大人になって読んでも面白いのです。
楽しいのです。

いえ、大人こそ楽しめる、といってもいいかもしれません。


朝日新聞学芸部/編『わたしの「心の書」―読みなおす一冊』
(朝日新聞社 1996)のなかで、

歴史家・猿谷要(さるや かなめ)は

同じくマーク・トウェインの代表作であり、
『トム―』の続編ともいえる
『ハックルベリー・フィンの冒険』について、こう書いています。


   ... 今では同じ作者の『トム・ソーヤーの冒険』と共に、こ
  の小説は私の心のなかの一隅に住み着いている。
   ... ページを開くと、トムとハックが跳びはねたり、冒険の
  話をしたり、野放図な夢をみたりしている。何十年か前に、私
  にもこんな時代があったはずだと、二度と戻らない自分の姿が
  甦るのである。
   分別くさい年齢になっても、見果てぬ夢を追った少年の頃を
  忘れたくない。今もこの小説を読んで、そのたびに胸がワクワ
  クするのがとてもうれしい。...
 

また、私の愛蔵本、
旺文社文庫版『トム・ソーヤーの冒険』に収録されている、

社会学者・加藤秀俊の文章「アメリカ大陸から生まれた文学」は、
こうなふうに締めくくられています。


   子どものときに読んでもおもしろく、いま、おとなになって
  読んでもおもしろい――そういう、数少ない本の一冊が、この
  トム・ソーヤーなのである。


そして、著者であるマーク・トウェイン自身、
『トム―』の「まえがき」のなかで、

この本は少年少女に喜んでもらうために書いたものだけれど、
大人が目もくれないというのはやめて欲しい、と書いています。

 
   ... わたくしの計画の中には、おとなにも、彼らがかつては
  どんな少年であり、どんなふうに感じ、考え、話したか、また
  時おり、どんな奇妙なくわだてをやったものかを、楽しく思い
  出してもらおうというつもりがあったからである。 

   鈴木幸夫/訳『トム・ソーヤーの冒険』旺文社文庫 (1969)


では、どの辺が面白いのでしょうか。

まずその一つは、
人生の重大な秘密を教えてくれる、という点にあります。

 ・・・

以前、学者か実業家かどなたかが、
『トム―』について書いているのを読んだ記憶があります。

経済学の本を読んで勉強する閑があれば、『トム―』を読め、
例えば、ペンキ塗りのエピソードには、仕事とは遊びとは、
需要とは経済とは何か、という秘密が描かれている。

といった内容でした。
どなたの言葉か、また正確な言い回しも定かではありません。

でも、納得の一言です。


夏の土曜日のすがすがしい朝、
トムはおばさんから罰として塀のペンキ塗りを言いつけられます。
高さ9フィート(約2.7m)、長さ30ヤード(約27m)もある塀です。

「人生ははかなく、生きていることは重荷にすぎない」
ように思われました。

ところが、ある霊感が働く!


悠然とペンキ塗りを始める。

「こどもが塀をぬるなんて機会は、そう毎日ありっこないぜ」

通りがかる子供たちは、ペンキ塗りがしたくなる。
リンゴを差し出す子、ビー玉と交換をねだる子…。

まんまと罰を―仕事を娯楽に変えてしまう。

「仕事というのは、嫌でもしなければならないもの、
遊びというのは、むりにしなくてもいいもの」

という、人間活動の一大法則を発見します。


あるいは、

  ... よくあることだが、旧習というものは、その存在を正当
  づける理由が少なければ少ないほど、これをやめることはむ
  ずかしいものである。
         (鈴木幸夫/訳『トム・ソーヤーの冒険』)

といった、辛辣な文明批評的な言葉が随所に見られます。

楽天的なユーモア作家とされていた作家の実像は
ユーモリストでもあり、モラリスト [英 moralist; 
(フランス) moraliste] でもあったのです。

 ・・・

二番目の魅力は
素直に楽しめる、面白いストーリイです。
エンターテイメントのお手本のような一冊です。


ペンキ塗りの一件ののち、
美少女ベッキーとの出会い、恋の駆け引きがあり、
自然児ハックが登場するや
海賊ごっこや洞窟探検、宝物探しなどの冒険を繰り広げます。

インジャン・ジョーが絡んでくると、
これは単なる空想の、お遊びの冒険ではなくなります…。

まさに、
命がけの、手に汗握る、ハラハラドキドキ、ワクワク胸躍る
スリルとサスペンスの物語となってゆきます。

 ・・・

世界文学史上においては、『トム―』よりも、
この続編とも言うべき
『ハックルベリー・フィンの冒険』のほうが評価は高く、
アメリカ文学を代表する、といった形容詞がつけられます。

『トム―』はロマンティシズムの、
『ハック―』はリアリズムの文学とも言われます。

『トム―』は、
『アラビアン・ナイト』や『モンテクリスト伯』、
『ドン・キホーテ』等の物語によっている、作られた物語。

それに対して、『ハック―』は、
もちろん冒険物語ではあるけれど、
ミシシッピ川沿いのアメリカ中西部の現実を描いていて、
人種問題や社会と自由等々といった問題を捉えた作品である、と。

もちろん、そうかもしれません。

しかし、これは、夏目漱石が『猫―』や『坊ちゃん』から、
『こころ』等の作家に変貌した、進化/深化したのと同じで、
マーク・トウェインの作家としての進化/深化の結果にすぎない
と思います。


何はともあれ、楽しい読書の友として『トム―』は、最高です。

続けて『ハック―』を楽しみ、その上で、
そういう社会的な問題にも自然と目がやれるようになれば、
いいんじゃないでしょうか。


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【付録】マーク・トウェインを楽しむために 
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●トムとハックの物語:

・『トム・ソーヤーの冒険』
鈴木幸夫/訳 旺文社文庫 (1969) 【絶版】
 高二の夏休みに購入以来、何度も読んだ私の愛読書・愛蔵書。
 オリジナルの挿絵がカッコイイ。
大久保博/訳 角川文庫 トウェイン完訳コレクション(2005)
 各章の扉に初版本の挿絵が小さく添えられている。
 完訳にふさわしい丁寧な翻訳。
大久保康雄/訳 新潮文庫 (1953,1987改版)
 一番手に入れやすい本。挿絵がないのがちょっと淋しい。
 まず読んでみるにはいいかも…。

【アニメ】『世界名作劇場 トム・ソーヤーの冒険』
『世界名作劇場・完結版 トム・ソーヤーの冒険』
 フジテレビで放映された「世界名作劇場」第6弾(1980)。
 DVD一巻完結版。
竹書房文庫 世界名作劇場 4(2004)
マーク・トウェイン/原作 箱石桂子/〔ノベライズ〕 
 アニメ『世界名作劇場』シリーズの一編を小説化。


・『ハックルベリー・フィンの冒険』
『ハックルベリ・フィンの冒険』大久保博/訳 
角川文庫 トウェイン完訳コレクション(2004)
 初版本で割愛されたエピソード(「筏のエピソード」16章、
 「死体のエピソード」9章、「キャンプ・ミーティングのエピソ
 ード」20章)を補った完訳版の文庫化。
 初版本の挿絵が各章の扉に小さく添えられている。
『完訳 ハックルベリ・フィンの冒険』 加島祥造/訳 
ちくま文庫 マーク・トウェイン・コレクション〈1〉(2001) 
 今や伊那谷のタオイストとして有名になった英米文学者、
 加島祥造による完訳。
 架空社版(1995)に「筏のエピソード」(16章)を追加した追補版。
 訳者は大人の読む本として解説しているが、原書初版本の挿絵を
 添えて子供にも楽しめる本になっている。
『ハックルベリー・フィンの冒険〈上〉〈下〉』西田実/訳 
岩波文庫(1977)
 原書初版本の完訳、原書初版本の挿絵を多数収録。
『ハックルベリイ・フィンの冒険』村岡花子/訳 
新潮文庫 改版(1959) 
 一番手に入れやすい一冊。私も最初に読んだ『ハック―』。
 挿絵がなく淋しい。まず読んでみるにはよいかも…。


『トム・ソーヤーの探偵・探検』大久保康雄/訳 新潮文庫(1955) 
【絶版】
 『ハック―』以後のトムとハックの冒険物語「トム・ソーヤーの
 探検」(1994)と「トム・ソーヤーの探偵」(1996)の二編を収録。
 旺文社文庫版『トム―』に続けて購入。
『トム=ソーヤーの探偵』斉藤健一/訳 講談社 青い鳥文庫(1995) 
 上記『―探偵』の子供向け版。

他に、未刊の作品もあるという。また『不思議な少年』も当初は
トムとハックの設定だったという。


●その他のマーク・トウェイン作品:

『王子と乞食』村岡花子/訳 岩波文庫(1934/改版1958)
 『トム―』『ハック―』と並ぶ最も有名な作品。乞食と王子が入
 れ替わるとどうなるか? 原書挿絵が少し入っている。
『不思議な少年』中野好夫/訳 岩波文庫 (1969/改版1999)
 死後出版された作品。未完のものに編者が第三原稿の結末を付け
 足したほか、数々の手を加えているという。晩年のペシミズムを
 色濃く漂わすといわれる。別版『不思議な少年第44号』もある。 
『人間とは何か』中野好夫/訳 岩波文庫 
 老人と青年の対話の形をとるエッセイ。晩年のペシミズムを色濃
 く示すという。訳者は上の本といっしょに読んで欲しいという。
『アーサー王宮廷のコネティカット・ヤンキー』龍口直太郎/訳
創元推理文庫(1976)
 現代(当時の)のヤンキーがイギリス中世のアーサー王の時代に
 タイムスリップする話。
『マーク・トウェイン短編集』古沢安二郎/訳 新潮文庫(1961)
 処女作とも言うべき「噂になったキャラベラス郡の跳ぶ蛙」、
 「百万ポンド紙幣」「エスキモーの娘」晩年の作「ハドリーバー
 グの町を腐敗させた男」など、財産が人の心に及ぼす影響を皮肉
 なストーリイで綴る名作短編の数々。
『ちょっと面白い話』大久保博/編・訳 旺文社文庫(1980)
 ユーモリストでモラリストといわれる著者の真骨頂を見せてくれ
 る、各著書から編者が抜き出した小文集。続編『また・ちょっと
 面白い話』等も出ていた。私は新古書店で百円で購入。【絶版】
『マーク トウェイン自伝(上・下)』勝浦吉雄/訳 ちくま文庫 
(1989)

他多数...。

*『ハック―』他、マーク・トウェインの作品は、
 またいずれ機会を見て紹介します。お楽しみに!

*『レフティやすおの本屋』支店「海外名作文学館」
 「マーク・トウェイン」の棚
http://myshop.7andy.jp/md_fair/foreignbooks/lefty-yasuonohonya?shelf_id=04

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 次号(3月)の予定 : 『老子』根源は“水”の世界観
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※
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『レフティやすおの作文工房』
ろんご・ロンゴ・論語―創刊号「楽しい読書」別冊編集後記
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