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2008/07/11

■ろう者の言語・文化・教育を考える No.101

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◆ろう者の言語・文化・教育を考える◆ No.101 2008年7月11日
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■<言語>「聴者受けしやすそうな手話」


 <まだ>という手話がある。手話講習会や手話サークルで、喜んで使われて
いる。<私、結婚、まだ>というときに、「当分ない」か「今はまだだけど間
もなく」かという時間の長短を、右手と左手の間隔で調整し、的確に表現した
と盛り上がっている。楽しく手話を使っているのだから、まあいいかとも思う
が、やはり捨て置けない。

 ろう者は、<まだ>の程度をきちんと手話で表現しているではないか。それ
でも、右手と左手の間隔で時間の長短や程度を表現できるのは、手話の特性の
ように思えて聴者に受けるのだろう。

 似たような例がある。ある通訳者が先輩通訳者の手話をみて参考になったと
回想していた。それは<いろいろ>という手話。<いろいろ>も程度がある言
葉で、先輩通訳者は「考え方は実にさまざまあり…」というところの<いろい
ろ>を両手を使い、上下左右広い空間と大きな動きで表現したらしい。その表
現に感心したというのだ。

 たしかに、そのような表現もありうるかもしれないが、通常は使われない。
顔の表情はそのままで手の動きだけ大きく動かせばいいというものではない。
ろう者が使う日本手話では、程度は手の動かし方だけでなく、顔の動き(非手
指動作)で表現する。「非常にたくさんの…」や「まぁまぁの…」は口の形
(マウスジェスチャー)による副詞的表現を使う。手話に非手指動作が伴うこ
とで実に幅広い程度を表わすことができる。手の動きの大小で程度を表現する
のは、演劇などで使われる手法だろう。

 さらに、同様の例で<全部>という手話もある。両手で描いた円の下部で手
が接しているかどうかで「完全」か「だいたい」かを区別しようとするものだ。
ところがろう者の<全部>は「完全」のときも「だいたい」のときも手は接し
ている。「完全」と「だいたい」の区別は前述のとおり非手指動作によるのだ。

 聴者は手にばかり注目することが多いが、ろう者は手話を見るのに手に注目
することはない。手話よりも相手の顔を中心に見る。顔の部分が文法的に重要
な情報を担っているからだ。手の動かし方を変えて意味の違いを表現できたと
喜んではいられないのだ。聴者は自らの学習方法を、ろう者は手話の教え方を
いま一度見直さなければならないのではないだろうか。


(日本語訳:chu)


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□<注意>
引用、転載:出典を明記してくだされば自由にして下さって結構です。
(メールによる丸ごと転送はご遠慮ください)
※著作権は木村晴美が有します。


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発行人:木村晴美
発行日:2008年7月11日(金)
読者数:506人(2008年7月11日現在)
http://deaf.cocolog-nifty.com

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