■ろう者の言語・文化・教育を考える No.091
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◆ろう者の言語・文化・教育を考える◆ No.091 2008年4月14日
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■<言語> 新しい手話について
私は、手話指導や手話通訳者養成のかたわら、NHK手話ニュースのキャス
ターをしている。手話ニュースのキャスターになって、もう10年近くになる。
手話ニュースではあらかじめ用意された原稿を手話に翻訳している。自らが考
えたものを話すわけではない。時折、書かれている言葉をどのように手話にす
るか難儀することもある。一応、キャスター同士で申し合わせている用語もあ
るが、必ずしもそれを使わなければならないというわけではない。日本語の語
彙と手話の語彙の意味が完全一致するわけではないからだ。ニュース原稿に書
かれていることの意味を的確に伝えられる手話語彙を選択してお伝えしている。
全日本ろうあ連盟では、新しい手話や標準手話の普及に取り組んでいる。新
しく創られた手話でも、ろう者に受け入れられるものもある。例えば、「四
季」という手話だ。昔は、春・夏・秋・冬の手話はあったものの、その総称で
ある「四季」という手話はなかったので、新たにこの手話が創られたときには、
瞬く間にろう者の間に広まった。また「エイズ」という手話も同様である。
一方、せっかく創られた新しい手話でも、定着しなかったものもある。「真
実」と「心」を組み合わせたと思われる「真心」という手話などだ。どうも、
全日本ろうあ連盟が新しい手話を創るときには、複数の手話単語で表していた
ものの動きを簡略化して、少ない動きで表せるものにしようとの意図があるら
しい。
新しい言葉が定着するかどうかは日本語でも同様だ。国語審議会などが、外
来語等のカタカナ語をわざわざ日本語に訳したのに、結局受け入れられず、カ
タカナ語のまま使われていることもある。新しい言葉を創るのはかまわないが、
それが定着するかどうかはその言葉によるのだ。
私は、手話ニュースにおいても、新しい手話を率先して取り入れようとして
はいない。なぜなら、新しい手話を使っても、それが視聴者に理解されなけれ
ば意味がないからだ。手話ニュースは、全日本ろうあ連盟の会員であるなしに
関わらず、全国津々浦々のろう者に見ていただいている公共性の高いものであ
る。そのため、まだ定着もしていない新しい手話を積極的に導入するわけには
いかない。NHK手話ニュースはあくまでもニュースの内容をきちんと伝える
ことが優先なのだ。CS放送の「目で聴くテレビ」では積極的に新しい手話を
発信している。CS障害者放送統一機構は、ろうあ連盟の関係機関であるので、
そちらで積極的にやっていただきたい。
ところが、新しい手話が紹介されるたびに唖然とすることも多い。手話言語
学の専門家ならおわかりだと思うが、手話の動きにはあるルールがある。両手
を同時に使う手話の場合、左右同じ手の形で、同じ動きをするのが基本だ。左
右の手の形が異なっている場合は、非利き手が固定され、利き手だけが動く。
異なる形の手を左右同時に動かすのは難しい。ところが新しい手話は、この
ルールを無視して創られているように思える。新しい手話を考える際には、是
非、文法や音韻を熟知している人に関わっていただきたいものだ。
日本語の分野では、明治維新のころ西洋から新しい語彙がたくさん入ってき
た。その中には「社会」のように、それまでの日本には概念の存在しない語彙
もあった。「社会」は意外に新しい語彙で、明治以前の日本では「世の中」の
「世(世間)」という語が使われていた。日本語の「世(世間)」と西洋の
「社会」のように概念の微妙に異なる言葉を、慶應義塾大学の創始者である福
沢諭吉は大変な苦労をして翻訳した。そのときに新しく創られ、定着した日本
語も多い。新しい手話も同様に、使い手に受け入れられれば定着していくと思
う。ただ、新しい手話の創造や普及のしかたには、もう少し検討が必要ではな
いかと思う。
(日本語訳:chu)
■発行人より
NHK手話ニュース出演はしばらくお休みにしてもらっています。ところで、
最近、手話ニュースの質が高まったと思いませんか? ろう者やコーダの起用
が増え、キャスター同士、良い意味でお互いによい刺激を受けているようです。
キャスターが聞こえないと、本番中に何か事故が起きたときにフォローできな
いからとろうキャスター起用に積極的でなかった時期があったことを考えると、
隔世の感がします。
これからもご応援よろしくお願いします。
■メルマガNo.091の手話版は、4月11日のDeafTV-Japanにて配信されました。
□「ろう者の言語・文化・教育を考える」メルマガの手話版は、DeafTV-JAPAN
でごらんいただけます。(有料)
http://www.deaftv.jp/
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社ワールドパイオニアで購入できます。
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メルマガNo.001〜020収録『日本手話とろう文化』 1,800円
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□<注意>
引用、転載:出典を明記してくだされば自由にして下さって結構です。
(メールによる丸ごと転送はご遠慮ください)
※著作権は木村晴美が有します。
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発行人:木村晴美
発行日:2008年4月14日(月)
読者数:415人(2008年4月14日現在)
http://deaf.cocolog-nifty.com


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