■ろう者の言語・文化・教育を考える No.089
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◆ろう者の言語・文化・教育を考える◆ No.089 2008年3月31日
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■<教育・文化>「ろう文とコーダ」
「ろう文」とは、ろう者が書いた文章のことである。これまで、ろう者は厳
しい口話教育で発音の指導にばかり重きを置かれ、文章を書く力を十分に伸ば
してもらえなかった。そのため、文法的に間違った文を書く人が多い。口話教
育の弊害とも言える。その一方でろう者が書いたものだから…と納得できる部
分もある。私の両親などは、そもそも文を書くという段階で四苦八苦している。
ここで改めて「ろう文」とはどのようなものかを考えてみる。昔と違って最
近は、インターネットやメールの普及で、聴者が「ろう文」を目にする機会も
増えてきている。聴者が「ろう文」をどうとらえるかを考えておかなければな
らない。
先日、年下のろう者にある仕事を頼んだ。一応丁寧な文でメールを送った。
その後、彼から返信が届いた。日程が合わないのでどうしたらよいかというも
のだったが、文面は「どうしますか?」と書かれていた。聴者が書いたものな
らば失格だが、これはろう者が書いたものである。きっと、「どういたしまし
ょうか?」と言いたくて、手話をそのまま日本語に訳してみたのだと思う。同
じろう者同士だから斟酌もするが、これが、ろう者となじみのない聴者の目に
触れたときはどうなるだろう。「日本語も満足に使えないのか、非常識な」と
片付けられるのが落ちだ。
しかし、それ以上に微妙なのがコーダの場合だ。コーダは一般的に聴者の仲
間ととらえられているが、それゆえ、コーダの書く文に違和感を覚える聴者も
いるらしい。例えば、あるコーダが書いた文。大変丁寧に、「誠に申し訳ござ
いませんが…」で始まっている。内容は、「送り先を誤ってメールを送ってし
まったので、それを削除してほしい」と謝罪しているものである。ところが文
面には「削除しておいてください」と書かれていた。このメールが送られたの
は、年齢もさまざまな関係者が目にする送り先だ。年下の者から「…しておい
てください」とは何ごとだ!と先輩方の怒りに触れた。その後、書き手がコー
ダだったことが判明し「なあんだ…」ということになったのだが、果たして
「なあんだ」で済ませてよいことだろうか。
ろう者は聴者と違っているのは明らかで、日本語を母語としない移民の子と
同様に、マイノリティとしてバイリンガル教育など特別な教育措置が必要だと
意識されている。そのため明晴学園の開校となったわけであるが、コーダは日
本語を母語としないろう者を両親に持っているにも関わらず、自身が聞こえる
というだけで放置されている。コーダは一見、手話も日本語も扱えるバイリン
ガルであるように見えるが、実は手話は堪能でも日本語はいま一つとか、反対
に日本語はできても手話は拙いなど、言語環境はさまざまである。
コーダは移民の子と同じだ。移民の子どもは親の母語が居住国で使われてい
る言語ではない。それでも子どもは言語を獲得するのが早いので、周りで使わ
れている言葉(第二言語)を覚え自由に話せるようになる。ところが、高学年に
なるにしたがって勉強についていけなくなるという問題が起こることがある。
生活言語は扱えても学習言語が育っていないためだ。そこで、カナダなど移民
の多い国では、子どもたちが第一言語も第二言語も不十分なダブルリミテッ
ド・バイリンガルに陥らないよう、教育支援が行われている。実は、コーダに
も同じ支援が必要なのだ。言語環境が不十分なためにダブルリミテッド・バイ
リンガルのコーダが結構いるのではないかと思われる。
バイリンガル教育という観点でいえば、ろう児だけに目を向けるのでなく、
移民の子と同じ状況にあるコーダにもしっかりした言語教育のプログラムが整
備されるべきなのだ。今のままでは、コーダの言語力はいつまでも伸ばせない。
コーダの会にももう少し動いてもらいたいが、私自身もコーダのために力にな
りたいと思う。
(日本語訳:chu)
■発行人より
石川啄木の
はたらけど
はたらけど猶わが生活(くらし)樂にならざり
ぢつと手を見る
をもじって
木村晴美の
だいえっとしても
だいえっとしても猶わが身体スリムにならざり
ぢつと腹を見る
■メルマガNo.089の手話版は、3月28日のDeafTV-Japanにて配信されました。
□「ろう者の言語・文化・教育を考える」メルマガの手話版は、DeafTV-JAPAN
でごらんいただけます。(有料)
http://www.deaftv.jp/
□「ろう者の言語・文化・教育を考える」メルマガの手話版のDVDは株式会
社ワールドパイオニアで購入できます。
http://www.wp1.co.jp/
メルマガNo.001〜020収録『日本手話とろう文化』 1,800円
メルマガNo.021〜040収録『日本手話とろう文化2』1,800円
□<注意>
引用、転載:出典を明記してくだされば自由にして下さって結構です。
(メールによる丸ごと転送はご遠慮ください)
※著作権は木村晴美が有します。
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発行人:木村晴美
発行日:2008年3月31日(月)
読者数:360人(2008年3月17日現在)
http://deaf.cocolog-nifty.com


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