2009/08/02
銀幕をさまよう名言集! No.51「アイデン&ティティ」
********************************** 銀幕をさまよう名言集! No.51 2009.8.2発行 ********************************** 2003年/日本 「アイデン&ティティ」より 主人公の中島は、 バンドブームに乗って メジャーデビューしたバンドのギタリスト。 ファンからも支持されて、 順風満帆のように思えたが、 中島はいろいろと悩んでいた。 「世間に迎合する音楽」と 「自分が本当にやりたい音楽」の挟間で。 中島がやりたいのは後者だ。 レコード会社の言いなりではなく、 自分の音楽をやりたい。 それが本心だ。 ところが中島には、 「才能で勝負できる!」 という絶対的な自信がなく、 創作活動に行き詰まる。 この映画のなかで、 中島はこう独白する。 「中産階級に生まれ、 不良でも優等生でもなく、 ふつうに生きてきた。 ディラン(ボブ・ディラン)のように 旅に出る必然もなかった。 それがぼくのコンプレックス。 ロックに対するコンプレックス。 だからぼくの作る歌にはウソがある」 中島は言葉を締めくくる…… ☆★☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「不幸なことに、不幸なことがなかったんだ」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ☆★☆ ロックという創造行為にとって、 心の「渇き」はとても重要だ。 のどが渇いていればいるほど、 人は「水が飲みたい!」と渇望する。 それと同じで、 何らかの心の「渇き」が、 音楽を創造する原動力となるからだ。 のどが渇いていなければ、 「水が飲みたい!」とは思わないだろう。 「不幸なことに、不幸なことがなかったんだ」 この独白の意味は、 のどを渇かしておきたいにも関わらず、 豊富に飲み水が用意されていたということだ。 満たされた環境にいるということは、 ロックな創造をするうえでは、 やはりマイナスポイントなのだろう。 だから、 「ぼくの作る歌にはウソがある」 と中島は自覚しているのだ。 でも、だ。 中島にロックを志す資格がないかといえば、 そうではないと思う。 なぜなら彼は、 「それがぼくのコンプレックス。 ロックに対するコンプレックス」 とも自覚しているからだ。 そう。 コンプレックスもまた 心の「渇き」のひとつであり、 ロックという創造行為の原動力になりうるのだ。 ロックな創造をしたいなら、 コンプレックスを隠したり、 克服したりするのではなく、 コンプレックスを武器(=渇き)に してしまったほうがいい。 痛々しいコンプレックスを含め、 その人がその人自身を ありのままに表現できるようになったとき、 初めて人の心を動かす創造が できるはずだから。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●編集後記  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 15年ほど前に(1994年)、 ボブ・ディランの来日公演に行ったことがあります。 彼の演奏は自由気ままでした。 弾き語りではなく、 バンドスタイルでの演奏でしたが、 おそらくバンド内における演奏の決まり事は最低限。 基本的には彼の気の向くままに 即興で演奏が行われていました。 間奏や後奏がやたらと長く、 その間、ディランは、 いつも客席に背を向けてしまいます。 MCらしいMCもなく、 派手な演出もなく、 まるで客が目の前にいることに 気づいていないかのように、 自由気ままにギターを弾き、 あの独特なダミ声で、 ぶっきらぼうに歌っていました。 1992年に行われた ディランのデビュー30周年を 記念したコンサートの際には、 ステージ上に 彼をリスペクトするアーティストが勢揃いしましたが、 そのときでさえ、 彼は極めて不機嫌そうに、 歌を歌っていました(笑)。 「過去の人」扱いしたお祭り騒ぎが嫌だったみたいです……。 還暦パーティの席で、 主賓がすねるようなものです(笑) その自由さ、反骨精神たるは相当なもの。 常に渇き続けている希有な人物であり、 ゆえに「ロックの神様」と呼ばれているのでしょう。 今回紹介した「アイデン&ティティ」は、 みうらじゅんの自伝的コミックを、 俳優の田口トモロヲが初監督した作品です。 脚本は宮藤官九郎が担当しています。 ********************************** ■銀幕をさまよう名言集! No.51「アイデン&ティティ」 マガジンID:0000255028 発行者 :山口拓朗 ●公式サイト「フリーライター・山口拓朗の音吐朗々NOTE」 http://yamaguchi-takuro.com/ ●メール(ご意見・ご感想をお待ちしています♪) yamatak47@yahoo.co.jp ********************************** ◎ 銀幕をさまよう名言集! 【購読解除】 http://archive.mag2.com/0000255028/index.html 【発行システム:まぐまぐ!】 http://www.mag2.com/ **********************************



