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フリーライターの山口拓朗が、古今東西さまざまな映画のなかから、ビビっときた言葉やセリフを取り上げて、そこに独自の解説を加えていきます。銀幕にさまよう悲喜こもごもな名言を通じて、日々の生活に役立つ(?)人生のヒントを導き出して行きます★

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2008/05/18

銀幕をさまよう名言集! No.22「風の谷のナウシカ」

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 銀幕をさまよう名言集!  No.22  2008.5.18発行 

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1984年/日本 「風の谷のナウシカ」より



国民的映画とも言うべきアニメの傑作。
それが「風の谷のナウシカ」。
人間と環境のかかわりという重要なテーマを、
娯楽作品へと昇華させたアニメ映画の金字塔だ。

主人公ナウシカの人柄に魅力を感じる人は多いだろう。
明るく、勇敢で、正義感にあふれる少女。
地球上の生けとし生きるものすべてに、分け隔てなく愛情を注ぎ、
平和な世界を希求する。
風を読み、颯爽とグライダーを乗りこなす姿も、ただただカッコいい。

誰もが憧れ、惹かれるナウシカの人間性は、
ナウシカが住む風の谷の住人たちが、
彼女を慕う様子にも表れている。

物語の終盤で、
侵略国家のトルメキアに人質として捕われた風の谷の住人たち。

トルメキアの姫が、風の谷の住人に言う。

     「どうだ決心はついたか?
      降伏を勧めにいくなら放してやるぞ」

風の谷の住人のひとりが言い返す。

     「あんたも姫さまじゃろうが?
      わしらの姫さまとだいぶ違うのう」

そう言いながら、ゴツゴツした自分の手を見せる。

     「この手を見てみくだされ。
      ジルさま(ナウシカの父)と同じ病じゃ。
      あと半年もすれば石と同じになっちまう。
      じゃが、わしらの姫さまは、この手を好きだと言うてくれる――

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      働き者のキレイな手だ、と言ってくれましたわい」       

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風の谷の住人たちは、ナウシカ同様に勇敢だ。
人質の身でありながら、
トルメキアに対しても、まったく臆するところがない。
なぜだろう、と思ったが、

     「働き者のキレイな手だ、と言ってくれましたわい」 

のひと言で合点がいった。
ナウシカは、風の谷の住人を心から慈しみ、愛しているのである。
そして、風の谷の住人もまた、
ナウシカのことを愛し、彼女と心を共にしている。
だから、捕らわれの身でありながらも、堂々と正義を貫けるのだろう。
ナウシカを裏切るくらいなら、命など惜しくない、といった様子だ。

人は誰かに認められること、愛されることによって、
強さを手に入れるのかもしれない。

ゴツゴツした老人の手を、笑顔でさするナウシカの姿が目に浮かぶ。
その手を、好きだと、キレイだと、ナウシカは言ったという。
そこには、打算も、同情も、皮肉もない。
あるのは心からの愛情だ。

「返報性の原理」というのがある。
簡単に言うと“人はもらったものを返そうとする”という法則、だ。
ナウシカに愛をもらう風の谷の住人が、
ナウシカに忠誠を尽くすのは、
そうした「返報性の原理」とも無関係ではない。
彼らは、たとえ人質になろうとも、ビクともしない。
まるで自分の生き方を通して、
ナウシカの愛に報いようとしているかのようだ。

もちろん、ナウシカは、
そうした「返報性の原理」を意図的に利用しているワケではない。
むしろ、そんな法則など知らずして、
純粋に人を愛せるところに、彼女の素晴らしさがある。

一方、トルメキアの姫は、
おそらく……己の権力を傘に、
部下を管理・統率してきたのだろう。
つまりは圧制だ。
その証拠に、彼女は、直属の部下にさえ陰口をたたかれる。
それもまた「返報性の原理」である。

風の谷の住人を愛するナウシカは、住人たちに愛され、
部下の気持ちを無視するトルメキアの姫は、誰からも愛されない……。
同じ「返報性の原理」でありながら、そのサマは正反対だ。

     「じゃが、わしらの姫さまは、この手を好きだと言うてくれる――
      働き者のキレイな手だ、と言ってくれましたわい」  

このセリフを言った風の谷の住人は、
ナウシカからもらった言葉を、一生大事に持ち続けるのだろう。
ありのままの自分を認めてくれた、宝石のような言葉を。

誰かに愛し、認められるといことで、
人は強くなれる。
幸せになれる。

ゆえに。

自分が強く、幸せになりたいのであれば、
まずは人を愛し、認めることから始めなくてはならない。

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●編集後記             
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「風の谷のナウシカ」は、
人間の愚かさに、鋭い批判を突き付けた作品です。
2008年現在、環境問題は全世界共通の問題として認知されていますが、
1984年(映画公開年)の時点で、「風の谷のナウシカ」は、
すでに警笛を鳴らしていました。

警笛を鳴らした相手は、
日本を含めた先進諸国といっていいでしょう。
先進諸国の経済活動が、環境を破壊し、
結果的として、地球(そして後進国)に打撃を与えていることは、
残念ながら疑いの余地がありません。

今だからこそ、「風の谷のナウシカ」は、
改めて見られるべき作品という気がしてなりません。
生けとし生きるものすべてに、
分け隔てなく愛情を注ぐナウシカの姿に、
先進諸国が学ぶべき精神が隠されている気がします。

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■銀幕をさまよう名言集! No. 22「風の谷のナウシカ」
 
マガジンID:0000255028
発行者  :山口拓朗

●公式サイト「フリーライター・山口拓朗の音吐朗々NOTE」
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