2009/10/19
集団的労働関係における使用者【朝日放送事件】
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆ あなたの悩みはここで解決!雇用トラブルは判例に相談! http://ameblo.jp/fukuoka-sr/ 2009年10月19日発行 第70号 ★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆ こんにちは。いのしし社労士事務所の中村です。 一日遅れてしまいました。申し訳ありませんです。 ついにジュリスト労働判例百選第7版、70本目の解説にな ります。この70本目の節目の時ですが、前回もお伝えして いた本百選の第8版が7年ぶりに有斐閣より出版されました。 判例数が132本から120本に減らされ、本のタイトルで ある「百選」へのこだわりもうかがえます。 新規判例が11事件に上る一方、収録が中止された判例が全 部で27件にもなりました。 27件中、すでに解説済が11件ですので、残り16件も、 もちろん旧版を用いて解説いたします。 判例解説の順番は原則として7版を用います。8版で加えら れた判例はすべて新しいものですので、7版最高裁判決の解 説終了後、随時解説いたします。 差し替えられた判例8件中、解説済は3件ですので、それ以 外の判例は8版を使用します。適宜7版も参考にします。 上級審または下級審に差し替えられた3件の判例のうち、1 件は解説済ですので、これについては解説は行いません。 とりあえず以上の方針で進めていきたいと思います。 ややこしいですが、もし私のメルマガで勉強などをされてい る方がいらっしゃいましたら、ご参考までに。 とりあえずは、第8版を購入されてみてください。7版から 7年も立ってますので、新しい論点も多くあり、実務にも役 立つと思いますよ。 それでは、判例解説まいります。 集団的労働関係における使用者~朝日放送事件~です。 最高裁平成7年2月28日第三小法廷判決。 【どんな話】 朝日放送は在阪のテレビ放送会社です。朝日放送はテレビ番 組の制作のため、大阪東通、大東及び関東電機という請負会 社(以下「請負三社」)と契約し、撮影や照明、音響効果な どを請け負わせていました。 朝日放送は番組編成に合わせて、下請社員の業務シフトを作 成し、請負三社からはほぼ毎回同じ人が朝日放送に派遣され、 同社社員とともに、朝日放送のディレクターに従って業務を 行っていました。 当然、業務に必要な機材などは、朝日放送から借り受け、業 務中の休憩や残業の指示などは、そのディレクターから出さ れています。 さて、その請負三社の社員はそれぞれ何人かずつ、民放労連 近畿地区労働組合に加入していました。請負三社と労働組合 は適宜団体交渉を行い、それぞれ独自の就業規則を持ち労働 協約を結んでいました。 しかし、現場の業務を実際に動かし、労働条件についての実 権を握っているのは朝日放送であり、請負三社には現場労働 の実態に関与することがほぼ不可能であったことから、労働 組合は朝日放送に対して、直接、団体交渉を申し入れました。 しかし朝日放送は、自分の会社の社員ではないので当然のこ とながら「団体交渉を受ける立場にはない」として交渉を拒 否。 また、組合に加入している請負三社の社員に組合を脱退する よう働きかけた、として、労働組合は朝日放送の行為を 「団交拒否と組合脱退の勧めは組合つぶしの不当労働行為だ」 として労働委員会に救済の申し立てをしました。 労働委員会は地方、中央とも大筋で組合側の意見を支持し、 朝日放送側に救済命令を出しました。 朝日放送がこれを不服として、中央労働委員会を相手に裁判 を起こすことになりました。 【争点】 請負三社には労働組合があり、確かに下請け労働者の労働条 件をめぐって交渉を行うのは、請負三社自身でした。 事実上、下請け労働者の労働条件を握っていたのは朝日放送 ですが、果たして自分の会社の社員でもない請負三社の労働 組合と、労働組合法上の「使用者」として団体交渉を受ける 立場にあるのか、これが争点です。 第一審では、労働委員会の救済命令を支持して朝日放送の請 求を棄却。 逆に第二審では、会社側の主張を認め、請負三社とその労働 者が労働組合を通じて団体交渉を行い、労働協約を結んでい るのだから、朝日放送は団体交渉を受けるべき「使用者」と しての立場にはない、としました。 労働組合と中央労働委員会は最高裁に上告しました。 【判決は】 最高裁は、中央労働委員会と労働組合の主張を認め、第二審 判決を一部破棄自判、一部差し戻しとなりました。 朝日放送の下に派遣される請負3社の従業員は、事実上、朝 日放送のディレクターの指揮監督下に置かれていました。 ですから、彼らの労働条件等について、朝日放送は、雇用主 である請負3社と部分的とはいえ、同じくらいの立場で決定 する地位にいたというべきです。 その限りにおいては朝日放送は労働組合法でいう「使用者」 に当たる、として、朝日放送が労働組合と団体交渉に応じる 義務があると認めました。 したがって朝日放送が自分で決めることができる、たとえば 勤務時間の割り振りであるとか、労務提供の態様、作業環境 などについては、正当な理由なしに団体交渉を拒否すること はできない、としました。 ちなみに組合の脱退勧奨や支配介入に当たる部分については、 高裁に差し戻しました。 【解説】 判決文を要約すると、いくら雇用主以外の事業主であっても、 派遣された労働者の基本的な労働条件を一部とはいえ現実に 具体的に決定することができる場合は、労働組合法の使用者 として団体交渉に応じる義務がありますよ、ということです。 実際に、請負労働者や派遣労働者については、賃金や労働時 間などの勤務条件を請負先や派遣先が決定していることが多 く、直接の雇用主だけを団体交渉の相手先としてしまうと、 労使交渉の実効性がなくなることになります。 裁判所は、労働組合法の趣旨などから、実効性ある団体交渉 を実現する観点で、団体交渉を受けるべき「使用者」の考え 方をある程度広く認めているということができそうです。 近年、偽装請負や派遣労働者の待遇などが政治問題化し、労 働組合なども、この件では活発に運動を展開していますので、 請負、派遣労働者を使っている企業には必須の判例だと言え そうです。 【関係条文・判例】 憲法第28条(労働基本権)、労働組合法第7条(不当労働 行為) 判例では、油研工業事件、阪神観光事件、大誠電機工業事件、 タイガー魔法瓶事件、などがある。 【学説】 労働組合法第7条の「使用者」概念について、以下の説があ るとされる。 「雇用契約説」・・・直接に雇用契約関係にある者に限定する 説 「使用従属関係説」・・・直接の契約関係になくても、事実上 の使用従属関係がある者とする説。 「支配力説」・・・労働関係上の諸利益に対する支配力を有す る者とする説 「対向関係説」・・・労働者の自主的な団結と団結目的に関連 して対向関係に立つ者を「使用者」とする説。 【出典】 「別冊ジュリスト労働判例百選第7版、第8版」 【次回は?】 労使慣行の効力 ~商大八戸ノ里ドライビングスクール事件~です。 ============================ 【相互リンク】 さむらいコピーライティング道 http://www.mag2.com/m/0000250767.html 【海賊版】そろそろ社会保険労務士の出番です。 http://www.mag2.com/m/0000253225.html ☆chu_sanの魔法の人事労務☆ http://www.mag2.com/m/0000144368.html ================================ 【発行・編集】いのしし社会保険労務士事務所 【問合せ】http://tinyurl.com/69q3qc 【発行システム】http://www.mag2.com/ 【配信中止】http://www.mag2.com/m/0000252731.html 【免責事項】内容は筆者独自の見解です。また、掲載情報に基づいて 被ったいかなる損害・被害についても、筆者は一切の責任を負いか ねます。ご了承ください。 ================================


