2009/10/04
時間外労働手当【高知県観光事件】
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆ あなたの悩みはここで解決!雇用トラブルは判例に相談! http://ameblo.jp/fukuoka-sr/ 2009年10月4日発行 第68号 ★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆ みなさん、こんにちは。いのしし社労士事務所の中村です。 いよいよ、紛争解決手続代理業務試験の特別研修が始まりま した。いわゆる「特定社会保険労務士」の資格を取るための 前提となる研修です。 「紛争解決手続代理業務」とは、読んで字のごとく、労使紛 争が起こった時に、それを解決する手続きを当事者の代理人 となって行う業務のことです。 紛争解決には、憲法や民法などの知識が必要です。他士業で はある意味当たり前の知識ですが、社労士は、こうした法律 を系統だって勉強することなく資格が取得できる数少ない法 律専門職です。 ただ、実際の仕事には憲法はともかく、民法や会社法などは 基礎知識として必要ですし、これから労使紛争に関わってい くならば、民事訴訟法などの知識も不可欠となります。 私は、将来的には特定社労士をメインに据えた仕事をしてい きたいと希望していますので、何としても一発で合格して、 労使トラブルで困っている会社や労働者を救っていきたいと 考えています。 そのためにもまずは研修を乗り切らないと! がんばりまーす。 それでは、判例解説まいります。 時間外労働手当~高知県観光事件~です。 最高裁平成6年6月13日第二小法廷判決。 【どんな話】 高知県観光はタクシー会社です。タクシー会社は、年中無休 24時間体制の業界ですので、勤務形態も一般の会社とはか なり異なります。 この会社の勤務形態は、 (1)隔日勤務、 (2)勤務時間は午前8時から翌午前2時(休憩2時間)の 16時間勤務、 (3)賃金は、料金月間売上高に一定率を乗じた歩合制、 (4)深夜割増賃金、時間外勤務手当はなし、 (5)歩合給に深夜割増、時間外勤務がどのくらい含まれて いるかは判別できない、 となっていました。この会社で働くAさんらは、午前2時以 降働いても時間外手当が出ないし、深夜勤務しても割増賃金 も出ないため、 「こうした状況はは労働基準法違反だ!」 として、法律に定める割増賃金と労基法の罰金に当たる「附 加金」を支払うよう、裁判を起こしたのでした。 【争点】 会社側は、 支給している歩合給には所定外及び深夜の各割増賃金が含ま れており、社員の入社時には、必ずその旨説明して理解を得 ていること、 労働基準監督署の指導を受けて、労使で結んだ協定で新たに 計算しても、協定前の賃金額と遜色ない額であったこと、 他のタクシー会社と賃金を比較しても、そこまで低くはない こと、 から、違法性はない、と主張しました。 第一審では、Aさんらの請求を認めたものの、第二審では、 午前2時以降の勤務については仕事をさせる根拠に欠け、仕 事をしてもしなくても賃金を支払う義務がない、として所定 労働時間に関する割増賃金のみを認めました。 そこでAさんらが最高裁に上告したものです。 【判決は】 最高裁は、第二審の判決を見直し、自ら判断してAさんらを 勝訴としました。 まず午前2時以降の勤務について否定した第二審の判断を違 法とした上で、 (1)深夜勤務や時間外勤務をしても、歩合給は増額されな いこと、 (2)歩合給の中で、基本給と時間外、新夜勤の割増賃金を 見分けることができないこと、 などから、会社はAさんらに割増賃金は支払っていない、と 判断、割増賃金と附加金の支払いを命じました。 【解説】 数ある会社の中で残業のない会社は無に等しいかも知れませ ん。それだけ残業させることで支払う割増賃金の削減は、ど この会社でも課題です。 青天井になることを避けるため、一定額の手当を支払うこと で残業代に替える会社も多いことと思いますが、この判例は その基準について判断したものとなっています。 判例や学説、行政解釈は、算定方法や支払方法は問わないけ れども、実際に働いた残業時間分以上を、基本給と見分けが つく形で支払っていればよいとしています。 また、この判例の会社のように、全額歩合給制のもとでも、 同様の対応をしていなければ、割増賃金を支払っていないと 判断されます。 ただし歩合給の場合は、時間外・深夜労働が、すぐに賃金の 増額に結び付かないところに難しさがあります。 ちなみに歩合給の場合の賃金の計算方法は、次の通りとなり ますのでご紹介します。 (例)固定給なし、全て歩合給で、ある月の労働時間が以下の 場合の計算方法。 月額総労働時間 200時間 所定労働時間 170時間(1年間における1ヶ月平均所定 労働時間数) 時間外労働時間 30時間 深夜労働時間 10時間 歩合給 300,000円 時間外割増賃金 11,250円(300,000÷200 時間×0.25×30 時間) 深夜割増賃金 3,750円(300,000÷200 時間×0.25×10 時間) 総支給額 300,000+11,250+3,750=315,000円 【関係条文・判例】 労働基準法第13条(法律違反の労働契約)、同第37条(時 間外、休日及び深夜の割増賃金)、同法施行規則第19条第1 項(割増賃金の計算額)。 判例は、関西ソニー販売事件、千里山生活協同組合事件、徳島 南海タクシー事件、リッツグループマネージメントセンター事 件、日本コンベンションセンター事件、ジオス事件、小里機材 事件、など多数。 【学説】 特になし。 【出典】 「別冊ジュリスト労働判例百選第7版」 【次回は?】 救済命令の限界~ネスレ日本事件~です。 ============================ 【相互リンク】 さむらいコピーライティング道 http://www.mag2.com/m/0000250767.html 【海賊版】そろそろ社会保険労務士の出番です。 http://www.mag2.com/m/0000253225.html ☆chu_sanの魔法の人事労務☆ http://www.mag2.com/m/0000144368.html ================================ 【発行・編集】いのしし社会保険労務士事務所 【問合せ】http://tinyurl.com/69q3qc 【発行システム】http://www.mag2.com/ 【配信中止】http://www.mag2.com/m/0000252731.html 【免責事項】内容は筆者独自の見解です。また、掲載情報に基づいて 被ったいかなる損害・被害についても、筆者は一切の責任を負いか ねます。ご了承ください。 ================================


