2008/11/30
大隈鐵工所事件【重要判例その52】
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆ 仕事が人を育てる。人が会社を育てる。 人は仕事で想いをかなえる。 重要判例から学ぶ!10分で経営を伸ばす人事労務戦略 http://ameblo.jp/fukuoka-sr/ 2008年11月30日発行 第52号 ★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆ いのしし社労士@中村です。 このメルマガが開始されたのが、昨年の11月25日。いよ いよ1年越えとなりました。引き続きご愛読をお願いします。 さて、12月に入り、いよいよ歳も押し迫ってきました。 年の前半のお気楽さとは裏腹の経済環境が、私も含めみなさ んの足元に忍び寄ってきました。 この不況は100年に1度と言われてますので、少なからぬ 事業体に影響があろうかと思います。しかし厳しい経営環境 でも、多くの経営者がこの苦境をしのいで生き延びるはずで す。 当事務所も弱小ではありますが、いのしし事務所だけが持っ ているスキル、資産を最大限に活用し、ニッチな分野に特化 して、業績を伸ばしていきたいと思います。 がんばります! それでは、判例解説にまいります。 退職の意思表示〜大隈鐵工所事件〜です。 最高裁昭和62年9月18日第三小法廷判決。 【いのしし事務所のお知らせ】**************************** 12月11日、北九州で就業規則セミナーを開催します! セミナーの詳細はこちらから! http://inoshishisyaroshi.com/081211seminar.pdf 経営者や人事労務担当者の方は必見です!ぜひ! ************************************************【感謝】 【どんな話?】 会社に秘密で「日本民主青年同盟(民青)」という政治団体 の支部をBさんと作り、組織加入の活動を行っていた、大隈 鐵工所で働くAさん。 ところがBさんは民青を脱退したいという気持ちが募り、つ いには失踪してしまったのです。 AさんはBさんの父親に電話で口止め。 会社側は、Bさんの行方について、いろいろ調査をし、Aさ んとBさんがやっていたことを突き止めました。 会社側はAさんにBさんの行方を尋ねましたが、民青のこと を隠したいAさんは、 「私はBさんの失踪とは関係ない」と主張。 会社側は、分かった内容を一部Aさんに突き付け、口止め工 作や事実を黙っていたことは懲戒処分に値するとして、以後、 事情聴取と異なる結果となったら会社を辞めるという 「詫び書き」を書かせました。 それでもAさんは民青の話をしなかったため、会社はAさん に民青活動の証拠を見せました。 Aさんは驚き、沈黙の末に 「退職します」と申し出。 会社側は民青との関係で辞める必要はないと慰留しましたが、 Aさんの意志が固かったので、その場で辞表を書いて会社側 に提出し、会社側もこれを受理。 ところが!翌朝になり、やっぱりAさんの気持ちが変わり、 辞表の撤回を会社側に申し出ました。 しかし会社側はこれを拒否。困ったAさんは会社側を訴えた のでした。 【争点】 思い切って話しを単純化すると、思い余って出した辞表が受 理されてしまい、それを撤回できるのかどうかが争点です。 ちなみにAさんとやり取りした会社側の担当者は人事部長で す。 第一審では、民青活動を隠したことが、詫び書きの退職事由 に当たるとAさんが誤解(動機の錯誤)したことが原因とし て、辞表を無効と判断。 第二審では、Aさんの退職動機が誤解ではなく、民青所属が ばれたことのショックと将来への失望が背景にあるため、辞 表の効力自体は有効だが、会社側の退職に対する意思が明確 でないため、承諾の意思表示があるまでは、Aさんは自由に 辞表を撤回できると判示しました。 会社側はこれを不服として最高裁に上告しました。 【判決は?】 第二審判決は破棄され、差し戻されました。 退職の意思表示とその承諾については、特定の方式が必要と いうわけではないし、人事部長が退職を独断で承諾すること も不合理なことではありません。 その上で、人事部長が独断で辞表を受理し、退職を承諾でき るのかどうかの審理が十分ではないとしました。 ちなみに、別件の辞表の承諾については、人事部長が最終決 権を行っており、職務権限規程でも課次長以上の者以外は、 人事部長が退職について決裁権限を持っていたことがうかが える、としています。 【いのしし社労士の解説】 Aさんが「辞めます!」と申し出た時の状況から見て、相当、 精神的に追い詰められた末の行動だったと思われます。 最高裁判決では、人事部長が受理したことが、即、退職の承 認につながることを示唆していますので、Aさんにとっては、 悔やんでも悔やみきれない行動だったと言えるでしょう。 一時の感情で会社を辞めると意思表示することは、もしその 気持ちが変わってしまった時に、あと戻りできず、大変危険 だということが、この判例が示しています。 実際、辞める時に撤回が可能かどうかを、人事担当者に確認 すること自体が難しいような気もしますが、確認することで 精神的な安定が 得られるのであれば、それもいいように思 います。 ただし、会社を辞める時に撤回前提で考えていること自体が 退職後の仕事について、自信がないことを示していますので、 そんな時は、退職を思いとどまる勇気も必要かと思います。 辞めるときは、自分の気持ちの強さ、意志の力を十分に確認 してからでも遅くありません。慎重に、しかして大胆に決断 されてはいかがでしょうか? 【関係条文・判例】 民法第95条(錯誤)、同第521条(承諾の期間の定めの ある申込み)、同第627条第1項(期間の定めのない雇用 の解約の申入れ)。 合意解約の民法解釈については、Wikipediaで「解除」を検索 して参照してください。 【学説など】 退職の意思表示については、 (1)一方的解約意思の通告の場合と、 (2)使用者の承諾を前提とする合意解約の申し入れの場合 に分けられるとする。 前者の場合は意思表示到達後は撤回は許されず、後者の場合 は、使用者の承諾までは撤回可能とするという説が判例主流 となっている。 一般的に労働者が退職の意思表示をした場合には、「合意解 約の申し入れ」と解されることが多いとされている。 【出典】 「別冊ジュリスト労働判例百選第7版」 【次回は?】 ユニオン・ショップ協定の効力〜三井倉庫港運事件〜です。 ============================ 【相互リンク】 さむらいコピーライティング道 http://www.mag2.com/m/0000250767.html 【海賊版】そろそろ社会保険労務士の出番です。 http://www.mag2.com/m/0000253225.html ☆chu_sanの魔法の人事労務☆ http://www.mag2.com/m/0000144368.html ================================ 【発行・編集】いのしし社会保険労務士事務所 【問合せ】http://tinyurl.com/69q3qc 【発行システム】http://www.mag2.com/ 【配信中止】http://www.mag2.com/m/0000252731.html 【免責事項】内容は筆者独自の見解です。また、掲載情報に基づいて 被ったいかなる損害・被害についても、筆者は一切の責任を負いか ねます。ご了承ください。 ================================


