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アメリカは知財法制度の抜本的な改革の途上にあります。裁判所もこれまでの判例を変える新しい判断を次々に出しています。このように過渡期にあるアメリカの特許・知的財産最新情報をお伝えし、アメリカがどこに行き着こうとしているのかを考えてみたいと思います。

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2009/04/06

藤野仁三の【アメリカ知的財産法への誘い】Vol.20 | 2009-04-06


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■■    「続・よくわかる知的財産権問題」         ■■□□
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□□■■     藤野仁三のアメリカ知的財産法への誘い      ■■
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                              2009.04.06
                                 Vol.20

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 目次 ◆アメリカ知的財産法への誘い
     〜 eBay判決を契機とした日本の特許法改正(その2) 〜

    ◇ウェブサイト更新情報

    ◇編集後記

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+ 本メルマガをご登録・ご購読いただきありがとうございます。     +
+                                  +
+ このメールマガジンでは、日刊工業新聞の「よくわかる知的財産権問題」+
+ 著者である東京理科大学院 知的財産戦略専攻教授 藤野仁三が、知財法 +
+ 制度の抜本的な改革の途上にあるアメリカの最新情報をお届けします。 +
+                                  +
+ ★日刊工業新聞「よくわかる知的財産権問題」            +
+  http://www.amazon.co.jp/dp/4526051160              +
+  内容(「BOOK」データベースより)                 +
+   「知財の国家戦略」とあわせて車の両輪を構成するのが、「知財  +
+   実務についての考察・分析」である。本書は、まさにその後者に  +
+   関する良書で、著者が自分の足で集めた情報を豊富な実務経験と  +
+   専門知識の裏付けにより分析・整理しており、知財実務に携わる  +
+   人の必携書。                         +
+                                  +
+ ★八朔社「アメリカ知的財産権法」                 +
+  http://www.amazon.co.jp/dp/4860140834/              +
+  内容(「BOOK」データベースより)                 +
+   近年、アメリカ知財権法制度への関心が高い。その理由のひとつと +
+   して、アメリカ連邦最高裁判所が知的財産権関連事件で新判例を  +
+   積極的に出し、判例形成に関与しようとしていることであろう。  +
+   本書は高い評価の法律書シリーズ〈ナットシェルシリーズ〉の   +
+   ひとつとして、アメリカ知的財産権法を初学者向けにした     +
+   テキストの翻訳である。                    +
+                                  +
+ ※メールマガジンご購読に際して                  +
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+  ご覧いただけます等幅フォントについては下記ご参照下さい。    +
+  http://www.mag2.com/help/r107.html               +
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◆アメリカ知的財産法への誘い                (藤野仁三)
 〜 「eBay判決を契機とした日本の特許法改正(その2)」〜
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前回、日本で特許法改正の検討が進んでいて、その目玉の一つが差止請求権の
廃止であることを書きました。

また、改正論の背景には、eBay米最高裁判決があったことも書きました。実は
差止請求権の廃止は、「知的財産推進計画2008」の中で提言されています。

そこでは、米国のeBay判決を引き合いに出されています。推進計画は、濫用的
な特許権の行使に対して規制のための何らかのルール作りが必要であるとして
います。

そして、そのための手段として検討されているのが差止請求権の廃止という訳
です。


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 知的財産推進計画2008
 http://www.ipr.go.jp/sokuhou/2008keikaku.pdf

 <67ページ>
 (5) 知的財産の円滑・公正な活用を促進する
  1 濫用的な権利行使に対応する
   知財権の権利行使の仕方によっては、産業界における自由な競争に
   悪影響を与え、公共の利益に反する場合等があるため、2008年
   度から、正当な権利行使を尊重することを大前提としつつ、民法の
   権利濫用の法理や米国最高裁判決(eBay判決)等を考慮し、差止請求
   や損害賠償請求等の適切な権利行使の在り方について検討を行い、
   ガイドラインの作成等の必要な措置を講ずる。
   (経済産業省)

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しかし、米最高裁判決をこのような形で、日本の知財政策の正当化理由に使う
のは、もう少し慎重であるべきです。


それは、

 「eBay判決が法制度の異なる米国のものであること」

そして

 「eBay判決そのものの影響がどのようなものかまだ検証が十分ではない」

ことが、理由です。


政策論としては濫用的な権利行使を規制することが正当化されても、法律とし
て制定するためにはなにが濫用的でなにが合法的かをきちんと議論する必要が
あるでしょう。

「法律は10年前の事象を追う」と皮肉られますが、権利として制定された
差止請求権を廃止するとなれば、それは十分な論議が必要であることは
明らかです。



eBay判決は、伝統的なエクイティへの回帰を求めたものでした。

エクイティとは、個々のケース毎に差止の利益・不利益を比較考量して、救済
としての差止命令の適否を決めようという米国独特の法理論です。

eBay判決の趣旨を日本でも活かそうとするのであれば、最初に差止請求権に手
をつけるのではなく、むしろ衡平の観点からの利益調整の可能性を考えること
が先決でしょう。特許法には「強制実施権」という格好の制度があります。
むしろその活用を検討する法が、法の発展という意味でも正統だと思います。



日本の政策立案者は、米国の動きを「プロパテントからの後退」という単純化
した図式でとらえているのかも知れません。筆者が、日本における差止請求権
をめぐる動きに違和感をおぼえる理由はまさにその点にあります。eBay判決の
意義は、当事者によって異なります。一律に「アンチパテント的」とするのは
誤っています。

当事者により、事例により、eBay判決の影響が異なるのですが、日本では、
伝えられるところによれば、権利としての差止請求を認めない方向で検討が
すすめられているというのです。



次回は、eBay最高裁判決の影響が、下級審の心理にどのような影響を与えて
いるかについて事例を挙げて紹介しましょう。



◇ウェブサイト更新情報
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ウェブサイトの論文・論説(和文)に

  ホールドアップ問題に関する米国判例の展開
  (知財管理2009年3月号寄稿)
  http://www.jinzofujino.net/article/jipa200903.html

を掲載しました。



◇編集後記                         (野崎篤志)
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先日、特許流通会社の方とお話させていただく機会がありました。

その方が言われていることを(大胆に)要約すると「パテントトロールのような
存在も特許の世界に一役買っている」ということでした。

パテントトロールがいろいろな特許を買い漁って権利行使を行う。確かにこの
行為自体肯定されるべきことではありませんが、訴えられないように特許出願
を行い権利化しておく、または定期的にウォッチングを行ってトロールに先ん
じて特許を購入してしまえば、パテントトロールは打つ手なしです。

つまりパテントトロールの存在によって企業自身の知財に対する意識が高まり
ます。そして既に出願・権利化されている他社特許に対するリスクマネジメン
トの一環として、他社特許の売買も1つのオプションになります。すると特許
流通が促進される、こんな流れです。

「パテントトロール = 悪」という等号でしか見ていなかったのですが、確か
にそれも一理あると納得した次第です。


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◆著者      藤野仁三
          ※プロフィールはこちら
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          ※ウェブサイトはこちら
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◇編集・発行人  野崎篤志
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