2008/06/02
藤野仁三の【アメリカ知的財産法への誘い】Vol.12 | 2008-06-02
■ ■■■□□ ■■ 「続・よくわかる知的財産権問題」 ■■□□ ■■■ ■■■ □□■■ 藤野仁三のアメリカ知的財産法への誘い ■■ □□■■■ ■ 2008.06.02 Vol.12 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 目次 ◆アメリカ知的財産法への誘い 〜 牛糞は発明の母(前編)〜 ◇編集後記 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+- + + + 本メルマガをご登録・ご購読いただきありがとうございます。 + + + + このメールマガジンでは、日刊工業新聞の「よくわかる知的財産権問題」+ + 著者である東京理科大学院 知的財産戦略専攻教授 藤野仁三が、知財法 + + 制度の抜本的な改革の途上にあるアメリカの最新情報をお届けします。 + + + + ★日刊工業新聞「よくわかる知的財産権問題」 + + http://www.amazon.co.jp/dp/4526051160 + + 内容(「BOOK」データベースより) + + 「知財の国家戦略」とあわせて車の両輪を構成するのが、「知財 + + 実務についての考察・分析」である。本書は、まさにその後者に + + 関する良書で、著者が自分の足で集めた情報を豊富な実務経験と + + 専門知識の裏付けにより分析・整理しており、知財実務に携わる + + 人の必携書。 + + + + ★八朔社「アメリカ知的財産権法」 + + http://www.amazon.co.jp/dp/4860140834/ + + 内容(「BOOK」データベースより) + + 近年、アメリカ知財権法制度への関心が高い。その理由のひとつと + + して、アメリカ連邦最高裁判所が知的財産権関連事件で新判例を + + 積極的に出し、判例形成に関与しようとしていることであろう。 + + 本書は高い評価の法律書シリーズ〈ナットシェルシリーズ〉の + + ひとつとして、アメリカ知的財産権法を初学者向けにした + + テキストの翻訳である。 + + + + ※メールマガジンご購読に際して + + 本メルマガはMSゴシックなどの等幅フォントにて最適に + + ご覧いただけます等幅フォントについては下記ご参照下さい。 + + http://www.mag2.com/help/r107.html + + + +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+- ◆アメリカ知的財産法への誘い (藤野仁三) 〜 牛糞は発明の母(前編)〜 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 品のない表題で恐縮です。読者がこの記事を目にするときは食事時でないこと を祈るばかりです。今回は、牛の糞が関係した有名な特許事件を2件紹介しま す。1つが「チャクラバーティ事件」で、もう1つが「サクライダ事件」。 まず、チャクラバーティ事件から。 チャクラバーティ事件は、微生物に特許を認めた最初の最高裁判決として知ら れています。米国特許法史上十指に入る重要判例です。その発明はアナンダ・ チャクラバーティという研究者が生み出したものでした。 アナンダはイリノイ大学で石油を分解する特定の菌(シュードモナス菌)を研究 していました。GEに就職し、最初に与えられたのが、牛糞のセルロースを微 生物で分解して飼料を作るというテーマでした。糞の中に含まれる未消化繊維 を分解して飼料にするという発想です。 ところが世界の原油価格が大幅に下がり、原料となる原油が安く入手できるよ うになっため、会社は方針を変えてしまいました。石油そのままでは飼料にな りませんから、微生物を使ってそれを分解し、栄養分を飼料に転用しようとし たのです。 アナンダは、会社の研究テーマとは別に、就業時間後や週末にシュードモナス 菌を使って自分の研究を進めていました。その結果を論文発表したところ中東 で開催される学会で口頭発表しないかという招待状が彼に届いたのです。 当時、GEでは、学会発表のための海外出張はほぼ機械的にみとめられていた ようですが、アナンダの場合、たまたま副社長が彼の出張願いを見て、アナン ダに研究内容を特許出願してから学会で発表するようにと条件をつけたのでし た。そのため、学会では実質的ことは何も話せなくなりました。アナンダは後 に回顧録の中で「これについては特許出願を準備中なのでこれ以上は発表でき ません」と何度も壇上で繰り返さざるをえなかったとその困惑ぶりを書いてい ます。後からみればそれがアナンダに幸いしました。 さて、問題の特許ですが、微生物を使って原油を分解するプロセス、微生物が 着床する浮遊物(海面に浮かぶもの)、人工的に生成した微生物―という3つ の発明から構成されていました。最初の二つの発明には特許が認められました が、3番目の人工微生物には特許は認められませんでした。 GEの社内弁理士はバイオ専門ではなかったのですが、新規・有用・非自明の 3つの要件を満たす限り特許は人工微生物にも認められるべきだという信念か ら裁判で争ったのです。この事件は最終的に米最高裁で決着をみることになり ました。そして遺伝子操作による生命体にも特許が認められるという判例が 確立したのです。これが、微生物にも特許が認められ、米国のバイオ産業の 発展の端緒となった「チャクラバーティ事件」です。 この事件は、特許庁の審決に対する裁判なので、後世、当時の特許庁長官の 名前を入れて、「ダイアモンド対チャクラバーティ事件」と呼ばれるように なりました。 [Diamond v. Chakrabarty事件・参考リンク] ・Wikipedia:Diamond v. Chakrabarty http://en.wikipedia.org/wiki/Diamond_v._Chakrabarty ・アナンダ・チャクラバーティ氏の出願特許(GE名義) −US3813316・US4259444 対応日本特許:特開昭49-061376・特開昭58-028277 Microorganisms having multiple compatible degradative energy-generat ing plasmids and preparation thereof http://v3.espacenet.com/textdoc?DB=EPODOC&IDX=US3813316&F=8 −US3923597 Mercury concentration by the use of microorganisms http://v3.espacenet.com/textdoc?DB=EPODOC&IDX=US3923597&F=0 −US3923603 Discrete plasmid construction from chromosomal genes in pseudomonas http://v3.espacenet.com/textdoc?DB=EPODOC&IDX=US3923603&F=0 ※日本・特許電子図書館(IPDL)の外国公報DBで和文抄録を見ることが可能 ◇編集後記 (野崎篤志) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 必要は発明の母 (Necessity is the mother of invention) と、よく言われま すが、牛糞は発明の母 (Cattle dung is the mother of invention) は初めて 聞きました(笑)。 藤野先生の話に出てきた「GEの社内弁理士」はバイオ専門ではありませんが 特許法の基本原則からすれば当然特許化されるべきであるとの判断から裁判で 争いました。 事件の名前として残っているのはチャクラバーティ氏と当時の特許庁長官ダイ アモンド氏の両名ですが、このGEの社内弁理士がいなければ、米国のバイオ 産業の発展が遅れていたかも・・・と考えると、所属が企業・事務所を問わず 弁理士が歴史的に大きな流れを生み出しうることを示唆している事件と捉える こともできるのではないでしょうか? ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆著者 藤野仁三 ※プロフィールはこちら << http://www.jinzofujino.net/j_profile.html >> ※ウェブサイトはこちら << http://www.jinzofujino.net/ >> ※ブログはこちら << http://jinzofujino.seesaa.net/ >> ◇編集・発行人 野崎篤志 ※ウェブサイトはこちら << http://www.e-patentmap.net/ >> << http://www.e-patentsearch.net/ >> ◆連絡先 magazine@jinzofujino.net ※迷惑メール対策用に大文字にしています お問い合わせいただく際は小文字で入力してください ◇発行システム 『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/ ◇配信中止 http://www.mag2.com/m/0000251729.html ※本メルマガに掲載されている情報・広告を利用して発生したトラブル・ 不利益に関して発行人は一切責任を持ちません。情報を利用する際は、 皆様の自己責任において行っていただくようお願い申し上げます。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ Copyright(C)2008 Jinzo Fujino All rights reserved.


