藤野仁三の[アメリカ知的財産法への誘い]  RSSを登録する

アメリカは知財法制度の抜本的な改革の途上にあります。裁判所もこれまでの判例を変える新しい判断を次々に出しています。このように過渡期にあるアメリカの特許・知的財産最新情報をお伝えし、アメリカがどこに行き着こうとしているのかを考えてみたいと思います。

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2008/05/07

藤野仁三の【アメリカ知的財産法への誘い】Vol.11 | 2008-05-07

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■■    「続・よくわかる知的財産権問題」         ■■□□
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□□■■     藤野仁三のアメリカ知的財産法への誘い      ■■
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                              2008.05.07
                                 Vol.11

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 目次 ◆アメリカ知的財産法への誘い
     〜合衆国憲法の「発明条項」のはなし(2)〜

    ◇編集後記

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+ このメールマガジンでは、日刊工業新聞の「よくわかる知的財産権問題」+
+ 著者である東京理科大学院 知的財産戦略専攻教授 藤野仁三が、知財法 +
+ 制度の抜本的な改革の途上にあるアメリカの最新情報をお届けします。 +
+                                  +
+ ★日刊工業新聞「よくわかる知的財産権問題」            +
+  http://www.amazon.co.jp/dp/4526051160              +
+  内容(「BOOK」データベースより)                 +
+   「知財の国家戦略」とあわせて車の両輪を構成するのが、「知財  +
+   実務についての考察・分析」である。本書は、まさにその後者に  +
+   関する良書で、著者が自分の足で集めた情報を豊富な実務経験と  +
+   専門知識の裏付けにより分析・整理しており、知財実務に携わる  +
+   人の必携書。                         +
+                                  +
+ ★八朔社「アメリカ知的財産権法」                 +
+  http://www.amazon.co.jp/dp/4860140834/              +
+  内容(「BOOK」データベースより)                 +
+   近年、アメリカ知財権法制度への関心が高い。その理由のひとつと +
+   して、アメリカ連邦最高裁判所が知的財産権関連事件で新判例を  +
+   積極的に出し、判例形成に関与しようとしていることであろう。  +
+   本書は高い評価の法律書シリーズ〈ナットシェルシリーズ〉の   +
+   ひとつとして、アメリカ知的財産権法を初学者向けにした     +
+   テキストの翻訳である。                    +
+                                  +
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◆アメリカ知的財産法への誘い                (藤野仁三)
 〜合衆国憲法の「発明条項」のはなし(2)〜
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パテントトロールへの対応が問題になっていますが、この問題を考える手がか
りを連邦憲法の発明条項に見出すことができます。


前回書きましたように、連邦憲法の発明条項は、特許法・著作権法を制定する
権限を連邦議会に与えるものでした。その場合の立法目的は「学術および有用
な技術の促進」であり、その手段は「排他的権利の保証」でした。これまでに
特許法を正当化する理論がいくつか出されてきましたが、それらは上記の目的
規定と手段規定のどちらにウェイトを置くかによって根拠が異なってきます。


たとえば「学術および有用な技術の促進」を重視する立場の人は、特許法の
目的は、学術・技術という公共財の促進に貢献することであり、場合により
個人の自由や権利は制約されても仕方がないと考えます。

この考え方は、18−19世紀のイギリスの哲学者ジェレミー・ベンサムの「功利
主義哲学」を根拠としています。ベンサムは「 最大多数の最大幸福 」という
思想で有名で、この考え方に立てば、特許は多数の人々の幸せに貢献するもの
でなければなりません。


それに対して「 排他的権利の保証 」を重視する人は、そもそも発明は人間の
精神的労働から生まれるものであり、それは発明者個人の財産であると主張し
ます。この論を唱える人は17世紀のイギリスの哲学者ジョン・ロックの思想を
根拠として、発明は人間の精神労働と公共財との組合せであるから、それは
発明者の財産権となると考えます。ロックは、私有財産の概念を定着させた
法学者として知られています。


ベンサム説もロック説も、特許正当化論としては完璧ではなく、それぞれ弱点
をかかえています。たとえばベンサム説では、必然的に個人の自由が制約され
ることになり、それでは排他権の保証に矛盾します。またロック説では天賦の
権利であるのに、有限の権利となるのはおかしいという指摘にうまく反論でき
ません。


冒頭のパテントトロール問題に、ベンサム説とロック説を適用するとどうなる
でしょう。パテントトロールはロック説を主張するでしょうし、権利行使され
る側はベンサム説に傾くことでしょう。ただ、あまりベンサム説を声高に主張
すると、自社特許の権利主張に響くのでさじ加減は難しいところではあります。


米国の裁判所も揺れています。eBay v. MercExchange事件が好例です。

控訴裁のCAFCは、原告(パテントトロール)の特許侵害の主張を認め、差止命令
を出しました。しかし最高裁は差止命令は退けました。最高裁の判断は、事業
実体のない原告(パテントトロール)が差止命令により得る利益と、全米にわ
たりネット販売事業を展開しているeBayが被る被害(つまり消費者の不利益)
をはかりにかけると、本件の場合差止めは事業者である eBay に負担がかかり
すぎるというものでした。

一種のバランス論ではありますが、ベンサムの「最大多数の最大幸福」という
考え方に近いととれなくもありません。


このように考えてみると、連邦憲法の発明条項は230年前に作られたものです
が、すっかり時代が変わった今日でも、依然として存在感を維持していること
がわかります。 


[eBay v. MercExchange事件・参考リンク]
・Wikipedia: eBay Inc. v. MercExchange, L.L.C.
 http://en.wikipedia.org/wiki/EBay_Inc._v._MercExchange,_L.L.C.
・U.S. Supreme Court official website
 http://www.supremecourtus.gov/opinions/05pdf/05-130.pdf



◇編集後記                         (野崎篤志)
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まったく知財と関係のない話で恐縮ですが、このGWに友人から誘われタケノコ
堀りに行ってきました。

30歳で初のタケノコ掘り。タケノコ料理(タケノコご飯・タケノコの刺身など)
を食べて、お酒を呑んで、子供と遊んで・・・疲れました・・・

日ごろの運動不足が祟って筋肉痛になってしまいました。


本日から勤務開始の方も多いと思いますが、頑張っていきましょう。


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◆著者      藤野仁三
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