2008/02/29
こころとからだとたましいの交流
■■■イーストウエスト対話センター 情報マガジン■■■ <2008年2月号>2008/2/29 発行責任者:村川治彦 ==INDEX============================================================== ◆エッセー◆ 深尾篤嗣 ◆イーストウエスト対話センター主催の講座・ワークショップ◆ ◆関連する講座・ワークショップ◆ ====================================================================== ◆エッセー◆ 深尾篤嗣(藍野学院短期大学第1看護学科教授) <Don't think ! Feel!> あなたはこの言葉を御存知だろうか?もし御存知なら、おそらく私と同世代 (筆者は現在45歳)の男性か、かなりの格闘技マニアであろう。 これはクンフー映画の草分け「燃えよドラゴン」の冒頭で、主演のブルース・リーが 自分の弟子にクンフーを教えるワンシーンでの名セリフである。 そのシーンでブルース・リーは、弟子に命じて何度か自分を蹴らせたあと 「どんな感じがしたか?」と尋ねる。弟子が頭をかしげて考えようとすると、 その頭をこづきながら上記のセリフを言い放つ。次に弟子が放った蹴りをみて 「そう、それだ!」と声をかけると、弟子も何かをつかんだ表情を見せる。 最後に、その指導風景をイギリス人の諜報部員が感心した様子で見ている姿が 大映しになったところで、あのチャーンチャチャーンという独特のテーマ音楽と 怪鳥音とともに映画が始まるのである。 当時小学生であった私は、このシーンを見た時に、正直ブルース・リーのセリフの 意味がさっぱり理解できなかった。けれども、からだの内部から湧き上がるような 強い衝動を感じて、いっぺんに彼の魅力の虜になってしまった。 ブルース・リーはおそらく、自分の半生においてもっとも大きな影響力をもった 人物の一人であろう。生来運動音痴で、身体性や男性性に劣等感の強かった私に とって、彼は理想的な男性像であった。また、それ以上に彼が自分と同じ東洋人で あったことに大いに惹かれた。 「燃えよドラゴン」が日本で初公開された時、すでに故人であったという神秘性も あいまって、彼は瞬く間に伝説的スターとなった。さらに彼自身が本物の武道家で あったことから、単なる映画スターの枠を越えて、今や世界中に広がっている格闘技 ブームの火付け役ともなった。実際、現在K1で活躍する選手達の多くも、彼の映画が 格闘技を始めるきっかけになったと語っている。 日本で映画が公開されるより前から彼は、香港や東南アジアなど同じ東洋人だけ ではなく、欧米白人が優位である社会構造の中で圧迫感を感じていた第三世界の黒人、 ヒスパニック系、イスラム系など多くのマイノリティ達のヒーローとなっていた。 ハリウッド作品である「燃えよドラゴン」以外の香港で製作された3本の主演作 すべてに、「外国人に疎外されている中国人達の誇りを取り戻すために闘う」という テーマがあるのも偶然ではなかろう。 ブルース・リー以前のアクション映画と言えば、007のようにガタイの大きな白人が、 銃やメカニックを駆使して闘うといったヒーローが主流であった。ところが、自分達と 同じ有色人種で体も小柄なブルース・リーが、鍛えられた肉体と技で次々に巨大な 外国人どもを圧倒していく姿に、マイノリティ達は大喝采を送った。しかも彼はただ 強いだけではなく、要所要所で東洋哲学に裏打ちされたセリフを吐くことで、身体性 のみならず精神性の高さも示してみせた。 以上のように、アクション映画という極めて西洋的なメディアから世界の前に現れたが、 東洋的要素こそが彼の大きな魅力になっていた。映画が初公開された1970年代初頭の 米国はヒューマンポテンシャルムーブメント真っ盛りの頃で、禅、瞑想、ヨガなど 非西洋的な文化に注目が集まっていた時期であったこともブームを支えていたこと であろう。 あまり知られていないと思うが、実はブルース・リーの父方の祖母はドイツ人である。 つまり、彼は白人の血が1/4入ったクオーターなのである。そのために、生地香港 では子供時代に友達からいじめられた体験がある。その後彼は米国に渡り、東洋人 ゆえにさんざん人種差別に苦しめられた。やがて彼は、教室を開いて中国人、白人、 黒人など人種を問わずにクンフーを教え出したが、当時クンフーは門外不出の技と されていたため、今度は同胞である中国人からの妨害を受けた。このように彼は、 自分の体に流れる東洋と西洋両方の血に導かれるように国際社会の荒波に漕ぎ出して 行き、かつ東洋からも西洋からも疎外される体験を繰り返してきたわけである。 彼の武道に関する著作の中には、西洋的価値観で発達してきたスポーツと区別する ために、「自我ゆえに敵は存在する」など、老荘思想にはじまる東洋哲学への言及が 多くみられる。一方、晩年に彼が創始した総合格闘技「ジークンドー」には、母体と なったクンフー以外に、フェンシング、ボクシング、柔道、テコンドーなど世界各国の 格闘技術が含まれている。彼の短い人生には、常に東洋と西洋の相克と融合のテーマが 流れているのを感じる。 ところで最近私は、ブルース・リーに匹敵する大きな出会いを経験した。それは プロセスワーク(プロセス指向心理学、以下POP)との出会いである。自分はまず、 西洋医学を学んで内科医となり、ついで西洋由来の心理療法を主体とした心身医学を 学んで心療内科医となった。実際の臨床経験を重ねるうちに、心身二元論を背景にした 現在の心身医学の限界を感じて、非西洋的アプローチを統合したトランスパーソナル 心理学に惹かれていき、その流れの中で、ソマティクス(=ボディワーク)の一つでも あるPOPに出会った。 POPは、ユング派の心理分析家であったMindellによって、ユング心理学を基に老荘思想 や仏教など東洋の叡智やシャーマニズム、量子物理学などをとりいれて開発された深層 心理学的アプローチである。症状や事故、人間関係のトラブルなどの「問題」を、 私達のふだんの意識状態(一次プロセス )が不都合で否認したい自分の一部(二次 プロセス)と葛藤を起こした状態と捉え、より大きな存在からの大切なメッセージ として扱う。 POPは、西洋で重視される分析的な視点(見の目=自我)と東洋で重視される包括的な 視点(観の目=気づき)の両立により、症状や問題の中に解決を見出す。私にとって、 POPは東西文明融合により身体性と精神性を統合できる強力なツールである所に大きな 魅力がある。これはまた、私がかつてブルース・リーに感じた魅力と同一のものなの である。 西洋的「見の目=自我」は論理的思考、つまり「think」することにつながる。感染症 や外傷などの治療において圧倒的威力を発揮してきた西洋医学は、この「見の目」に 基づいて進歩してきた。しかしながら、実際の医療、特に心身医療においては、これ だけでは全く不十分である。そこでは東洋的「観の目=気づき」、すなわち臨床体験に 裏打ちされた直感が必要となる。この「観の目」を育てるには、決まった形で体験を 繰り返す中で極意を感じとっていく、つまり「feel」するしかない。東洋の武道や 芸道がすべて型を重視する理由はここにあろう。 こう書きながら、小学生であった私にはさっぱりわからなかった「Don’t think! Feel! 」というブルース・リーのセリフの意味が今やっとわかった!腑に落ちた!… 「腑に落ちた」という日本語には、「腑」という心身一如の「からだ」に落ちた時に こそ真に解ったと言えることが暗示されている。そう、「真の理解」とは、頭で考えて ではなく「体験」してはじめて得られるものなのだ!ブルース・リーが映画のワン シーンで弟子に教えようとしていたことはこれだったのだ! 私は、いまだ医学・医療の世界でマイノリティの存在でしかない心療内科が、科学主義 偏重のメインストリームの医学・医療に立ち向かっていくためには、東西両文明、 およびこころとからだ間の対話と統合を促すPOPのスピリットが必須であると確信して いる。そして、世界中でマイノリティの立場に置かれている人々が、等しくブルース・ リーの中に見出してきたのもきっとこれと同じスピリットだと感じている。 私がようやく彼の言葉の意味を理解できるようになったのが、彼の影響で学生時代に かじったヘボ空手ではなく、心療内科医としての臨床体験からであったという事実に 感動している。自分の人生に一環として流れているタオ、POP的に言うとドリーミング プロセスを感じざるを得ない。今この瞬間、からだの奥にある魂から湧き起るマグマ のような熱いエネルギーが、私に(全てはつながっている)というトランスパーソナル 体験を促してくれている。 Don’t think! Feel! アチョー! 参考文献 ブルース・リー―李小龍の栄光と孤独 四方田 犬彦 価格:¥ 2,730(定価:¥ 2,730) http://www.amazon.co.jp/dp/479496689X/ref=nosim/?tag=BMSIntegral-22 プロセス指向心理学アーノルド ミンデル 価格:¥ 3,045(定価:¥ 3,045) http://www.amazon.co.jp/dp/4393363485/ref=nosim/?tag=BMSIntegral-22 身体症状に「宇宙の声」を聴く―癒しのプロセスワークアーノルド ミンデル 価格:¥ 2,000(定価:¥ 2,000) http://www.amazon.co.jp/dp/4531081536/ref=nosim/?tag=BMSIntegral-22 プロセス指向心理学入門―身体・心・世界をつなぐ実践的心理学藤見 幸雄 価格:¥ 2,625 (定価:¥ 2,625) http://www.amazon.co.jp/dp/4393364074/ref=nosim/?tag=BMSIntegral-22 ------------------------------------------------------------------------------- ◆イーストウエスト対話センター主催の講座・ワークショップ◆ ★詳細・お申込みは http://www.east-westdialogue.org★ ------------------------------------------------------------------------------- <統合医療と一人称のからだ第2回 日常の姿勢・アレクサンダーテクニーク> 講師:片桐ユズル 日時:3月9日(日) 場所:イーストウエスト対話センター(大阪・朝潮橋) 参加費:6,000円 定員:15名 <統合医療と私のからだ トランスパーソナル心理学/ボディワーク基礎講座> 講師:村川治彦 日時:3月16(日) 場所:イーストウエスト対話センター(大阪・朝潮橋) 参加費:8,000円(学生5,000円) 定員:15名 <看護師のタッチを「癒し」レベルに深める> 講師:こやごれいこ、森すみれ、原田美穂子 日時:3月30日〔日) 場所:イーストウエスト対話センター(大阪・朝潮橋) 参加費:10,000円 定員:12名 <気功心学講座 第二期> 講師:津村喬 日時:4月〜12月 毎月1回 場所:イーストウエスト対話センター(大阪・朝潮橋) 参加費:5,000円/回 40,000円/一括前納 定員:15名 <看護・介護における『死の受容』> 講師:井上ウィマラ 日時:2008年4月13(日) 場所:イーストウエスト対話センター(大阪・朝潮橋) 参加費:8,000円 定員:12名 ※同日の19時からヴィパサナ瞑想会も開かれます <アレクサンダーテクニーク入門> 講師:片桐ユズル 日時:4月20日、5月18日(日) 場所:イーストウエスト対話センター(大阪・朝潮橋) 参加費:6,000円/回 定員:15名 <身体の声を聴くーバイオフィードバック 第二回> 講師:神原憲治 日時:4月26日(土) 場所:イーストウエスト対話センター(大阪・朝潮橋) 参加費: 8,000円 定員:15名 <センサリーアウエアネス・タッチ(触れる)&プレゼンス(存在感)> 講師:ジュディス・ウィーバー 日時:4月29日−5月3日(火〜土) 場所:女神山ライフセンター(長野) 参加費:80,000円 + 宿泊食事代(一部・二部通し) 45,000円 + 宿泊食事代(第一部 or 第二部) 定員:30名 ※早期割引あり! <センサリーアウエアネス・身体の声に耳を澄ます> 講師:ジュディス・ウィーバー 日時:2008年5月4日−6日(日〜火) 場所:奈良県・明日香村(予定) 参加費:36,000円 + 宿泊食事代 定員:30名 ※早期割引あり! <女神ワークショップ ボディマップ> 講師:小田まゆみ 日時:5月23日−25日(金〜日) 場所:関西セミナーハウス(京都) 参加費:39,000円 + 宿泊食事代 定員:25名 ※早期割引あり! <ボディワーカー・アロマセラピストのためのブレイクスルー・アプローチ> 講師:鎌田麻莉 日時:2008年6月4日−5日(水・木) 場所:イーストウエスト対話センター(大阪・朝潮橋) 参加費:56,000円 定員:8名 ※早期割引あり! <日本人の身の深層を探る 〜神話を身体で読む> 講師:安田登 日時:7月19日−20日(土・日) 場所:イーストウエスト対話センター(大阪・朝潮橋) 参加費:18,000円(学生13,000円) 定員:15名 ★詳細・お申込みは http://www.east-westdialogue.org★ ------------------------------------------------------------------------ ◆関連する講座・ワークショップ◆ ------------------------------------------------------------------------ 3月21〜23日「からだ気づきワークショップ」in 明日香村(主催:関西大学) http://www.kansai-u.ac.jp/Fc_let/topics/karada-kiduki/karada2008.htm 3月23日 「瞑想・呼吸・スピリチュアリティ」井上ウィマラ〔主催;JACT阪奈支部) http://www.jact.or.jp/pdf/20080323.pdf ------------------------------------------------------------------------ 【編集後記】 今月は「日本の冬」という感じの、凛とした寒さを感じる日が多かったですね。 しかし、ここ数日は、空気のなかに春の粒子が感じられます。もすぐ春です。 私事ですが、昨夏に骨折した足首の抜釘手術を先週受けました。ざっくりと した5センチほどの傷もすでにふさがり、まったく人間の身体はよくできて いるもんだと関心しています。半年がかりの怪我でしたが、これを通して様々な 気づきがありました。人の優しさ・無関心さ、自分の中の思いがけない感情、 触れてもらうことの力、人間の身体の素晴らしさ。ご迷惑をおかけした方々や 治療していただいた医療関係者の方々には申し訳ないのですが、「怪我して よかった!」と、心から思っています。起こることには全て意味がありますね。 3月以降も心と身体にフォーカスする講座・ワークショップが目白押しです。 ぜひご参加ご検討ください。(与田智水) -------------------------------------------------------------------------- イーストウエスト対話センター ホームページ: http://www.east-westdialogue.org 住所: 〒552-0014 大阪市港区八幡屋1丁目11−1 電話・ファックス: 06−6599−2520 電子メール: info@east-westdialogue.org -------------------------------------------------------------------------- メールマガジンの登録、解除および原稿の作成方法は下記をクリック。 http://www.east-westdialogue.org/mel/ バックナンバーは下記をクリック。 http://backno.mag2.com/reader/


