2008/03/13
076:最近読んだ本
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 新廃止派の砦 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ご購読の皆さんへ 076:最近読んだ本 最近読んだ本の中から、幾つか感想のメモを並べてみます。 感想とも言えないような「雑感」的なものですが、何かの参考にでもなれば、 また興味を感じられる部分があれば、実際に手にとってお読み下さい。 ↓ 「少年犯罪被害者遺族」 そのものズバリのタイトルで、遺族へのインタビュー集。遺族感情の軽視、配慮の 無さがよくわかる。捜査の過程でも裁判においても、更生に関しても、出所後の謝罪 に関しても(その後改善された部分もある)。芸術的な映画を批判した部分が印象的 だった。 私は遺族に関する配慮を軽視してまで、「死刑廃止」を叫ぶつもりはないが、世間 は「死刑廃止派=遺族感情踏みにじり団体」と見ている。警察や法の不備に対する 漠然とした苛立ちがこれに加わっていることは明白。 「現代思想」 2004年3月号「特集:死刑を考える」を読んだ。内容は良かったが、これを読む 人は少ないだろうなという気がしてとても残念。 しかし決して難解すぎて読めない内容ではない。書き換えれば中学生でも理解できる ものも多い。特に死刑制度を巡るパラドックスについて論じた文章は明解で、自分が もっと整理してまとめてみようかと思うほどだった。 特に広くお奨めしたいのは「死刑をめぐる幾つかのパラドクス」「死刑存廃議論の 沸騰のなかで 一九七〇―八〇年代フランス」「人間性剥奪への道(死刑に関して)」 など。今まで考えたことも無かったような視点が幾つもあった。 参考のために目次を挙げておく。 ↓ 特集=死刑を考える 【討議】 死刑文化からの抜け道を求めて / 森達也+鵜飼哲 【インタヴュー】 国家と死刑 オウムという転換点 / 安田好弘 【死の文化】 死刑と正義とのあいだ 晴らせぬ怨念の行方を考える / 池田浩士 死のかなたでいかに出会うか / 鵜飼哲 【死刑と世論】 いくじなし宣言 / 森毅 死刑肯定と減刑嘆願のアナロジー / 吉田智弥 死刑と喫煙 / 中山千夏 【死刑と暴力】 死刑の文字と精神 自律と他律と / 港道隆 死刑をめぐる幾つかのパラドクス / 澤野雅樹 暴力の合法性と非対称性 / 萱野三平 【死刑廃止への道】 人間性剥奪への道(死刑に関して) / ジャン・ラプランシュ (訳=郷原佳以) 死刑存廃議論の沸騰のなかで 一九七〇―八〇年代フランス / 郷原佳以 死刑・主権・赦し / 松葉祥一 【法】 死刑と国際人権法 国際法における死刑存置論をめぐって / 前田朗 終身刑導入と刑罰政策の変容 終身刑は死刑の代替刑となりうるか / 石塚伸一 【戦争と死刑】 戦争裁判と死刑 / 内海愛子 【被害者の視点から】 弟を殺した加害者と僕 / 原田正治 「被害者」 の声を聴くということ 死刑に関する 「語り」 をめぐって / 坂上香 「少年A 矯正2500日全記録」 少年Aとは酒鬼薔薇聖斗を名乗った少年のことで、彼のその後の矯正に関する本。 少年Aの捻じ曲がった人間性を正すのではなく、もう一度遡ってやり直すといった 観点から矯正・再教育が施される。途中まではあれだけの残虐な犯罪を行った少年が そう簡単に改悛するものだろうか、という疑いを持って読んだ。 また、そう簡単に人間性が変ってしまったらおかしい、そこにはどこか「洗脳」的な 恐怖があるのではないかという疑問もあった。つまり悪が善に矯正されることを望み ながらも、どこかでそう簡単に人間が変わってはいけないようにも思えるという、 妙に矛盾した気持ちで読んだ。 結果として少年は少しずつ心を開き、見事に更生の道を歩むことになる。これは意外 でもあり、うまくイメージできない部分でもある。事件そのものや事件直後の描写が 生々しく印象深いことに比べると細かい描写に迫真性が無く、どこか表面的に見えなく も無い。だからやや不満も残るものの、自分が考えていたよりはずっと少年犯罪者に 対する指導は計画性も真剣味もあり、慎重かつ熱心に取り組まれてもいるのだ、と いう印象も受けた。 世間全体の受け止め方としては「更生」というイメージや流れが密行的な「死刑執行」 以上に理解されていないというか、共有されていないような気もする。この事件は 今でも単に「猟奇的、残虐な事件」であって、「過ちを犯した少年が更生した事件」 とは全く思われていないだろう。勿論、私自身も初めて知った部分が多いので偉そう なことは言えない。 076:2008年3月12日 記 【ブログ】 「新廃止派日録」(不定期更新、リンクフリー) http://d.hatena.ne.jp/toride/ 【推薦・引用図書】は上記のブログに書いています。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


