2009/11/06
野球小説アンドロメダ・Jと小次郎22
☆☆☆☆☆ 20XX年、未知なる魅力あふれる野球戦士たちが、それぞれの夢達成 のゴールに向かって、走り出した。それは理想の世界だろうか、それとも …。 ☆☆☆☆☆ 球界の危機的状況を感じ取った選手会リーダー・高杉明太郎はある日、 東京グレート総務課長の村澤三四郎、マネジメント会社アンドロメダのリ ーダー・大田原健太郎と出会い、未知の魅力にあふれた選手の発掘を誓う。 そして舞台は全国の高校へ。アンドロメダ球児たちの夏が始まった。 ☆☆☆☆☆Jと小次郎22 衝撃だった。ドーンと来た。一瞬、何が何やらわからなかった。こん なこと、予想できるわけがない。思わず身構えた。とっさに大祐を守ろ うとした。大阪の夜…。心斎橋の夜…。御堂筋の夜…。運命がまた交錯 していた…。 信号待ちをしていた時だった。運転席には順子(古代聖子)、後部座 席に大阪ロックスター投手・神威小次郎(現アンドロメダ調査員)と順 子の子供・大祐がいた。そこへ、後方から1台の車が突然…。 心斎橋で食事を終えた神威ら3人は大阪ロックスター内野手の鬼崎平三 (現アンドロメダ特別講師)と順子の妹・大道寺百恵を残して家路につい た。当初、百恵には夜の予定が入っていた。そのため順子は神威との夜の デートを断っていたが、百恵が気を利かせた。しかし、大祐が神威から離 れない。結局、神威の車で2人を送ることになった。運転はもちろん、神 威がするハズだった。ところが、大祐が神威と離れるとなぜか泣き出して しまう。よほど気に入ったのだろう。どうしようもなかった。しかたなく、 順子が運転することになった。後部座席には百恵の車から移動してきたベ ビーシートをのせて、大祐を寝かせ、その隣に神威が陣取っていた。「大 祐はかわいかねぇ」。神威はもはや自分の子供のように思えていた。順子 もそんな光景がうれしくてしかたなかった。まさに幸せムード一色だった のに…。 その瞬間、ものすごい音がしたという。神威の車の後部トランクはぐち ゃぐちゃになっていた。酔っ払いの居眠り運転が赤信号に気がつかずに、 突っ込んできたのだった。気がついたら、神威は大祐に覆いかぶさってい た。順子は悲鳴をあげる暇もなかったという。 ひとまず、3人は無傷だった。車は廃車にするしかなかったものの、体 は軽いムチ打ち程度だった。大祐もケロりとしていた。いつものように笑っ ていた。ベビーシートのクッションとさらに神威の熱いガードがあったから だろう。まさに何事もなかったかのようだった。 「とんだ災難やったねぇ。でも、大祐が何ともなくてよかった…」 「神威さんが大祐を守ってくれた。もし、あの時、私が後にいたらどうだ ったか…」 事故から数日後、病院で「異状なし」の検査結果が出た時は神威も順子 も心底、胸をなでおろした。3人の絆はまた一段と深まったような感じで もあった。 ところが…。 事故後、神威の体に変調がおきた。事故のせいかどうかはわからない。で も、それ以外は考えられない。肩とヒジに違和感が発生したのだった。最初 はあまり気にしていなかった。徐々に元に戻るだろうと軽く見ていた。それ が一向によくならない。ブルペンでシュートを投げるとヒジに痛みも走った。 神威はそれを隠しながら、練習を続けていた。鬼崎にも言わなかった。鬼 崎との勝負も終了していたので、知られることなく、また幾日が経過した。 でも症状は変わらない。 チームには内緒で病院に行った。正直、この段階でも「何とかなるさ」程 度の気持ちだったが…。 診断結果は最悪だった。詳しい病名は覚えてもいない。ただ「元通りにな るのは難しい」。この言葉が神威の心に突き刺さった。医師の説明を聞くと、 原因はやはりあの事故にあったようだ。とっさに大祐を守ろうとした時に何ら かのアクシデントが…。 神威は順子と大祐と一緒に暮らすようになっていた。神威はプロ野球選手 を目指し、順子は10月12日の「ダース」オープンに備えた。忙しかった が、充実していたハズだったのに…。 神威は順子にケガのことを打ち明けられなかった。打撃は非力だから、投 手として、ダメなら野球人生は終わりを意味する。しかも、それがあの事故 のためと順子が知ったら…。言いたくなかった。心配かけたくなかった…。 しかし…。 神威のケガは鬼崎も知ることになった。いつまで立っても投球再開とならな いのだから、無理はない。そして、深刻な故障事情はチームの一部にも明らか になっていった…。神威は鬼崎に懇願した。「順子にはまだ言わないでくださ い。言う時は自分で言いますから。もう少し自分で何とかやってみたいんです 」と…。 神威は一生懸命、治療方法も模索した。手術なども検討された。鬼崎も親身 になって相談にのってくれた。しかし現実は厳しかった。やはり、どうしよう もなかったのである。 鬼崎をシュートで牛耳った自分の姿が懐かしい。「あの時の俺はいったいど こへ行ってしまったんだ」。神威は悔しくてしかたなかった。順子や大祐に、 この気持ちを悟られずに生活できたのが不思議なくらい悔しかった。夜も眠れ ない日々だった。加えれば、もうひとつ考えさせられることもあった。そして … 現役引退…。皮肉にも「ダース」のオープンが近づくにつれて、神威の決断 の日が近づいていた。 神威が腹をくくったのは「ダース」オープン2日前の10月10日だったと いう。鬼崎には電話で知らせた。順子と大祐には手紙を書いた。神威は旅立ち を決意していた…。 つづく ☆☆☆☆☆ アンドロメダの物語はフィクションです。実在の人物、地名、組織には 一切関係ありません。



