2009/09/11
野球小説アンドロメダ・Jと小次郎14
☆☆☆☆☆ 20XX年、未知なる魅力あふれる野球戦士たちが、それぞれの夢達成の ゴールに向かって、走り出した。それは理想の世界だろうか、それとも…。 ☆☆☆☆☆ 球界の危機的状況を感じ取った選手会リーダー・高杉明太郎はある日、東京 グレート総務課長の村澤三四郎、マネジメント会社アンドロメダのリーダー・ 大田原健太郎と出会い、未知の魅力にあふれた選手の発掘を誓う。そして舞台 は全国の高校へ。アンドロメダ球児たちの夏が始まった。 ☆☆☆☆☆Jと小次郎14 怒りのボールが鬼に向かっていった。魂をこめた球が打者の内角をえぐる。球 速もそれなりにあったのではないだろうか。鬼の顔がさらに鬼のようになる。「 あっ!」…。その瞬間、大阪・ロックスターナインは思わず声をあげた…。 「神威さん! 何がおかしかとですか?」 アンドロメダ調査員の神威小次郎はモデル兼高校球児の速水拳(桜福坂3年) のこんな声に思わずハッとなった。かつて現役選手時代、自分を支えた命綱のシ ュートを教えながら、つい昔を懐かしんでいた。いろいろあったあの頃。いつし か思い出し笑いを浮かべていたようだ。 「ごめん、ごめん。何でもなかよ。さ、続き、続き…」 神威はちょっと照れながら、再び速水の指導に入った。それでも、あの時の腫 れ上がった自分のぶざまな顔が脳裏にチラチラする。そして、そのたびに、なぜ かクスっとなった。なぜか思い出すと笑いたくなるのだった。 速水は確実にシュートを自分のものにしていった。センスがあった。バランス がよかった。顔やスタイルだけがいいのではなかった。神威が「ちょっとジェラ シー」って思うくらい、何でも揃っている男だった。そして、その成長度は当初、 思い描いていた以上のものがあった。 しかし、神威はまだ何かが速水には足りないとも思っていた。何かは、わかっ ていた。なぜなら昔の自分と同じだったから…。闘争心、気迫、ガッツ…。何か ほとばしるものが速水にはなかった。見かけ同様、すべてにスマートすぎるのだ った。 性格だからしかたない。でも、表向きでも裏向きでも、この「ナニクソ魂」は 勝負の世界に身を投じる以上、必要なことだと神威は思っている。自分の経験か らしてそうなのだ。 そこで考えた。神威はいろいろ考えた。それまでの段階でも神威は速水のレベ ルアップのためにその道のスペシャリストたちをアンドロメダ人脈で呼んできた。 そこに、また誰かを…。 神威が思い当たる人物は1人しかいなかった。そう。あの鬼だ。大阪ロックス ター・鬼崎平三だ。 「ダメ元で頼んでみるかねぇ」。神威は鬼崎のケータイに電話した。 しかし、出てきたのは別人だった。番号が変わったようだ。 「まぁ、ずいぶん連絡しとらんかったけんねぇ…」。神威はつぶやきながら、今 度は懐かしきロックスターに問い合わせてみた。すると、意外な答えが…。 「うそやろ…」。神威は驚いた。いまだ現役でプレーしていたハズの鬼崎は3ヶ 月前に突然、退社したというのだ。 「何があったとですか?」。神威はさらに突っ込んだが一身上の都合ということ しか教えてくれない。 「今、どこにおられるか、わからんですか?」。神威は粘った…。食い下がっ た…。 わかった。鬼崎は両親の問題で実家に帰っていた。何と、すぐ近くに、長崎に、 鬼は滞在していたのだった。 神威は「これも運命に違いない」と思った。思いついたら即行動だ。翌日の午 前中、速水が桜福坂にいる頃、神威は「ファントムスポーツ」号で長崎の鬼崎の 実家を訪ねた。 「何や神威じゃなかか! おう、元気やったかぁ? 懐かしかなぁ…! さあ さ、上がっていけ!」 鬼崎は張りのある声で神威を歓迎した。 「先輩は全然変わりませんねぇ…」。神威は涙が出てきた。いろんなことがあっ た昔をまた思い出した。 昔…。 神威にとって忘れられないロックスターグラウンドでの鬼崎との対決がまた脳裏 によみがえってきた…。 つづく ☆☆☆☆☆ アンドロメダの物語はフィクションです。実在の人物、地名、組織には一切 関係ありません。


