2009/08/07
野球小説アンドロメダ・Jと小次郎10
☆☆☆☆☆ 20XX年、未知なる魅力あふれる野球戦士たちが、それぞれの夢達成 のゴールに向かって、走り出した。それは理想の世界だろうか、それとも …。 ☆☆☆☆☆ 球界の危機的状況を感じ取った選手会リーダー・高杉明太郎はある日、 東京グレート総務課長の村澤三四郎、マネジメント会社アンドロメダの リーダー・大田原健太郎と出会い、未知の魅力にあふれた選手の発掘を 誓う。そして舞台は全国の高校へ。アンドロメダ球児たちの夏が始まっ た。 ☆☆☆☆☆Jと小次郎10 どうしてもかなわなかった。何度向かっていってもはね返された。クッ ソー! そのたびに燃えた。いつか勝つ! いつかギャフンといわせる! 燃えた、燃えた。それが何よりも活力剤になった。生きがいだった、と いう…。 「神威さん! シュートって決まったら気持ちよかですね」。モデル兼 高校球児の速水拳(桜福坂3年)の目は日増しにキラキラ輝いた。新球の 感触が面白くてしかたなかった。140キロに満たないストレートが速く なったより、うれしかった。右バッターの内側をえぐってストライクコー ルを聞くのが快感だった。 「ジェイ(速水の通称)はスジがよかよ。でも、あんまりシュートにばっ かりたよっとたらダメばい。今から、あんまり投げすぎんごとしとかんばね 」。アンドロメダ調査員の神威小次郎も教えがいがあった。教える方も楽し んでいた。昔を思い出すように…。 昔… 神威は大阪ロックスターに入社して2年目のシーズンを迎えていた。前の 年に覚えたシュートが、この年、大きく花開く。ずっと体力作りがメインで仕 事は雑用係だったのが、変化する。ブルペンで披露したシュートに、当時の監 督・愛宕弓雄が反応した。 初登板は最終回1イニングのリリーフだった。いきなりストレートの四球を出 し、ヒヤリとしたが、逆に開き直れた。シュートが想像以上に効果的だった。続 く打者を内角低めのストレートで内野ゴロ併殺打にうちとると、次のバッターも ファーストフライだ。 デビューを打者3人で封じたことで神威の評価はさらにアップした。最初はリ リーフ専門だったのが先発のチャンスも与えられるようにもなった。「シュート の神威」の異名もついた。抑える時もあれば、滅多打ちもある。成績は極端だっ たものの、何とかロックスターの先発投手として、かっこもつきはじめた。 3年目。神威はさらなる飛躍を誓った。愛宕監督も密かにこの年のエース格に 期待していたという。そんなシーズンだった。ロックスターに海王星大学から、 1人のルーキーが入ってきたのは…。その男は神威のことをよく知らなかったが、 神威はひとつ年上になる、その男のことをよく知っていたという。 神威が長崎戊須高校時代の雲の上の人だったからだ。その男は長崎・和場工で主 将を務め、攻守のリードオフマンとして県内では有名な選手だった。気迫ムキだし のプレーにはオーラがあった。チームの勝利にそれこそ命をかけている、といって も過言ではないほどのファイターだった。 神威はあこがれていた。「かっこよかー」と思った。顔はどちらかといえば、不細 工の方だったにもかかわらず、そのプレーにひきつけられた。神威は投手にもかかわ らず「いつか、あがん選手になりたかー」と思った。残念ながら、高校時代の神威は、 その男と対戦することもできなかった。控え投手だったのだから、悲しいかな出番さ えなかった。ただベンチから「すごかぁー」とながめていただけだった…。 その男は和場工を卒業して東京の海王星大学に進学した。大学でも1年生からレギュ ラーを獲得、4年生時には主将を務めている。プロから注目されるほどではなかったも のの、高校時代同様、ガンガン、チームを引っ張る熱い選手として知られていた。 大阪ロックスターでも、その男のファイターぶりは変わらなかった。神威も自然と引っ 張られた。新人があっという間にリーダー格だった。それでいて嫌味がなかった。古株の ロックスターの選手たちも、いつのまにか、そのリズムに波長を合わせていた。愛宕監督 はそれを見ながら、ニンマリしていた。まさに狙い通りだったようだ。 その男の名前は鬼崎平三という。顔と名字がピッタリで、誰もが最初は心の中でクスッ となるから第一印象のインパクトも強い。そして神威はこの鬼崎に猛然と鍛えられること になる。 「何や今の球は…。そんなんで、ウチのエースになんかなれるか、アホ!」 長崎出身のクセに、大学も東京に出たクセに、社会人になって大阪に来たばかりのクセに、 鬼崎は関西弁で神威に連日、まくしたてたのだった…。 つづく ☆☆☆☆☆ アンドロメダの物語はフィクションです。実在の人物、地名、組織には 一切関係ありません。


