2009/07/17
野球小説アンドロメダ
☆☆☆☆☆ 20XX年、未知なる魅力あふれる野球戦士たちが、それぞれの夢達成のゴ ールに向かって、走り出した。それは理想の世界だろうか、それとも…。 ☆☆☆☆☆ 球界の危機的状況を感じ取った選手会リーダー・高杉明太郎はある日、東京 グレート総務課長の村澤三四郎、マネジメント会社アンドロメダのリーダー・ 大田原健太郎と出会い、未知の魅力にあふれた選手の発掘を誓う。そして舞台 は全国の高校へ。アンドロメダ球児たちの夏が始まった。 ☆☆☆☆☆Jと小次郎7 ちょっと大げさにいえば、スリリングな脱出劇だった。午後8時30分。黒 いワンボックスカーが桜福坂の「自信寮」に滑り込んでいく。「ファントムス ポーツ」と記されている車から降りた男は大きなダンボールを抱えて、寮に消 える。そして5分後、出て行った…。 「ジェイ! もうよかよ」 車を運転するアンドロメダ調査員・神威小次郎はルームミラーで後部を見なが ら、声をかけた。 「何か、悪かことば、しよるごたんですねぇ…」 苦笑しながら起き上がったのはモデル兼高校球児の速水拳(桜福坂3年)だっ た。 寮には数人の速水追っかけの女性ファンがいた。神威は彼女たちに見つからな いようにした。正直、騙しているようで悪いと思っている。しかし、騒ぎになる ことだけは避けなければいけなかった。 事前にいろいろチェックしてのことではある。まず神威は寮の外のファンから 絶対に見えないポイント、死角を探し出した。検討の末、その地点を大きなダン ボールで隠し、さらに強化することにした。 「ファントムスポーツ」の車から降りた神威は大きな空のダンボールを寮に運 び込む。ほぼ同時に速水が車に乗り込む。そして5分後、何食わぬ顔をして神威 が車に戻り、出発、という具合いだった。 車は快調に走っていた。 「神威さん! どこでやるとですか?」 この時点では速水も行き先を知らなかった。 「まぁ、じき、わかるけん」 神威はわざともったいつけた。特に深い意味はなかったが…。 20分ほど走って、速水はどこに向かっているのか、薄々わかった。以前、 黒平寮長の車で連れて行ってもらった場所だなって思った。だって道が一緒だ ったから…。この前も見たばかりの光景が続いたから…。 神威と速水が出会った、あの山だった。先日、速水がひたすら走りこんでい た、あの山だった。ほとんど人通りがない、あの山…。前回も極秘練習を行う ために速水が選んだ場所を神威もセレクトしていた。 「ジェイ! もうわかったやろ」 「ハイ」 「この辺ではあそこが一番、見つからんごたっけんね」 「そうですね…。でも…」 速水が言いたかったのは設備のことだった。なにしろ、ただの山だ。昼間 ならともかく、夜は当然のごとく、真っ暗闇だ。どんな練習をするというの だろう。これまた当然の疑問だった。 「ジェイ! あそこでどがん練習ば、するとやろって思っとるやろ?」 「えっ。ま、まぁ」 「大丈夫って、ちゃんと用意ばしとるけん」 「ファントムスポーツ」の車はその山の麓で止まった。2人は車を降りて山道 を歩いた。ちなみに、この前、速水が走っていた山頂付近まではここから歩いて、 40、50分はかかる。しかし、今回の目的地はそこまではいかなかった。 「ジェイ! あそこばい」 「えっ」 歩き始めて、10分もかかっていなかった…。 つづく ☆☆☆☆☆ アンドロメダの物語はフィクションです。実在の人物、地名、組織には一切関 係ありません。


