2009/06/12
野球小説アンドロメダ・Jと小次郎2
☆☆☆☆☆ 20XX年、未知なる魅力あふれる野球戦士たちが、それぞれの夢達成のゴー ルに向かって、走り出した。それは理想の世界だろうか、それとも…。 ☆☆☆☆☆ 球界の危機的状況を感じ取った選手会リーダー・高杉明太郎はある日、東京グ レート総務課長の村澤三四郎、マネジメント会社アンドロメダのリーダー・大田 原健太郎と出会い、未知の魅力にあふれた選手の発掘を誓う。そして舞台は全国 の高校へ。アンドロメダ球児たちの夏が始まった。 ☆☆☆☆☆Jと小次郎2 黄色い声援が乱れ飛んだ。OL、女子大生、女子高生、もしかしたら主婦も中 学生もいたかもしれない。平日なのに、学校は、職場は、家庭は、どうしている のだろう。そう思いたくなるほどの「追っかけ」の数だった。 マウンドの「彼」の一挙手一投足に歓声があがった。ただの歓声ではない。ア イドルか、何かのコンサート会場みたいな感じ。女性たちが総立ちだ。大フィー バーである。とても地方予選決勝の光景には見えない。ちなみに1回戦から、こ んな調子だ。その人気は文句なく全国区だった。 そんな熱気のスタンドにアンドロメダ調査員の神威小次郎はいた。切れ味鋭い 「彼」のシュートを見ながら、満足そうにうなずいた。飛躍的に伸びた打撃を我 がことのように喜んだ。足もまた一段と速くなったように見えた。 数ヶ月前。出会いは坂だった。厳密にいえば、ある山の頂に向かう、最後の直 線の上り坂だった。アンドロメダメンバー発掘のため、九州地区を巡回していた 神威は、その山に立ち寄った。休息だった。ちょっと頭を休める時に、高いとこ ろに登って、きれいな空気を味わうという習慣から、ちょいと顔を出したなじみ の山だった。(もっとも、山というほど標高はないが…)。 将来のプロ野球選手に、未来ある有望選手に、その素質を伸ばす環境などを無 料で与え続けるアンドロメダ方針。神威は大田原健太郎のそんな考えに賛同して、 その調査員になった。野球にかける情熱は健太郎にも負けていない。そして、選 手を見る目に関しても、健太郎に負けていなかった。というのも…(神威の過去 については、また後日…)。 「彼」は黒ずくめの「衣装」で走っていた。何度も何度も、全力で坂を駆け上 がっていた。顔は見えない。フードをかぶって、不似合いなサングラスまでして いる。明らかに顔を見せないようにしていた。 神威はそれを遠くでながめていた。きれいな空気を思い切り吸い込み、大きく 伸びをしながら、意味もなくながめていた。 「こがんところで、何の選手やろ?」 その地は神威の故郷でもあった。その山は小学校の頃、遠足で出かけた場所で もあった。子供の頃はとてつもなく高い山に感じたのが懐かしい。でも、今、登 っても空気は、きれいな気がした。平地だって、都会に比べれば、きれいな空気 だ。それでも、特別にそう思えるから不思議だった。 「彼」の走りは終わらなかった。いつまでも終わらなかった。延々とダッシュ を繰り返していた。傾斜はきつい。だんだん「彼」の動きは鈍くなっていった。 それでも、やめようとしなかった。意地でもやめようとしていないようにも見え た…。 「いつ、終わるとやろか…」 気がつけば神威は「彼」の走りに見入っていた。なぜかはわからない。でも気 になった。その必死さが気になった。やみくもに走ればいいってものではない。 でも気になった。だんだん「彼」に近づいてもいた。 「彼」はヘトヘトだった。何回繰り返したかはわからない。しかし、神威がこ の場に来てからも2時間くらいが経過していたのだから、かなりのものだろう。 はっきり言って、無茶苦茶だった。最後は歩くようにダッシュ? していた。今 にも倒れそうだった…。 「大丈夫とね?」 神威はつい声をかけていた。 「えっ」 「彼」は驚いたようだった。相当、集中していたのだろう。その時、初めて神 威の存在に気がついたのだった。そして、次の瞬間に「彼」はバランスを崩した。 サングラスがほんの少しだけ、本当にほんの少しだけずれた…。 「あれ? 」 今度は神威が驚いたような声をあげた。「彼」はすかさずサングラスをかけ直 したが、もう遅い。見覚えがあるどころではない。「彼」は神威もよく知ってい る有名人だった…。 つづく ☆☆☆☆☆ アンドロメダの物語はフィクションです。実在の人物、地名、組織には一切関 係ありません。


