2009/05/22
野球小説アンドロメダ・魔法エース27
☆☆☆☆☆ 20XX年、未知なる魅力あふれる野球戦士たちが、それぞれの夢達成のゴ ールに向かって、走り出した。それは理想の世界だろうか、それとも…。 ☆☆☆☆☆ 球界の危機的状況を感じ取った選手会リーダー・高杉明太郎はある日、東京 グレート総務課長の村澤三四郎、マネジメント会社アンドロメダのリーダー・ 大田原健太郎と出会い、未知の魅力にあふれた選手の発掘を誓う。そして舞台 は全国の高校へ。アンドロメダ球児たちの夏が始まった。 ☆☆☆☆☆魔法エース27 うだるような暑さが球児たちのドラマにはやけに似合っていた。全国各地で マンモスへの切符をかけた戦いが大詰めを迎えていた。下馬評通りの強豪校、 復活の古豪、そしてフレッシュな新興勢力…。夢に向かって、しのぎを削る姿 はやけに美しく、まぶしかった…。 X X X X X X X X X 愛知大会は驚異の学校が快進撃を続けていた。伝統校がひしめくなかで、今 年新設された、にしき水惣高校。もちろん、野球部も創部1年目で当然、オー ル1年生のメンバーだ。ところが、これが強い、強すぎる。1回戦10−0、 2回戦15−0…。圧倒的な強さであれよあれよと決勝まで勝ち進んだ。当初 は話題校扱いだったマスコミも日増しに見方を変えてきた。なかでも注目を集 めたのは大型バッテリーだ。早くも夏の甲子園のV候補とまで予想する声があ がりはじめていた…。 X X X X X X X X X 東東京大会は真極学園が力の違いを見せつけながら、準決勝まで勝ち進んで きた。こちらは2年生が目立っている。大型ショートの古城直人らが持ち味を 発揮していた。名将・大伴監督に育てられた秘密兵器たちが見事に表舞台で伸 び伸びプレーを連発だ。首都タイムスのアマチュア担当記者の樹鞍は、どこの 社よりも先にこの真極メンバーの記事を作成し、ちょっとした話題にもなった。 なにしろ、ここは芸能関係も注目する学校だから…。そして準決勝では、また 思わぬ角度のドラマが起きようとしていた…。 X X X X X X X X X 兵庫でも岡山でも長崎でも…。夏になって突然開花した選手、進化を遂げた 選手などのニュースがこの時期、連日、報道された。まさに夏本番といった感 じにもなっていた。そして、これもそんなニュースのひとつだった。神奈川大 会準々決勝、センバツの覇者・丘陵対殿檜杉の結果も…。 X X X X X X X X X 1点を追う丘陵の攻撃、9回裏二死二塁。1年生スラッガー・流鏑馬義の放っ た打球は左中間を襲っていた。レフト・宝居康雄とセンター・森壮忠徳が懸命に 追う。二塁ランナーの納谷辰夫はもう三塁ベースを回っている。マウンド上の立 花恭兵はその瞬間、同点を覚悟した。ところが…。 やぶれかぶれで懸命に横っ飛びした宝居のグラブの先に、何と打球がひっかか るように入っていた。「アウトだ! アウトぉー」。宝居は胸を地面に思い切り、 強打して立てなかったが、ボールはちゃんと抑えている。森壮が思わず、まるで 自分がとったかのように大きな声をあげた。審判が正式にアウトのコールをする 前に殿檜杉ナインは一斉に両拳を突き上げて雄叫びをあげる。ホームベース直前 で納谷は思わず、しゃがみこんだ。一塁ベース付近では流鏑馬がぼう然としてい る。丘陵ベンチは声を失った。スタンドでは殿檜杉応援団が大歓声の嵐だ。ベン チ上付近では立花の幼なじみの殴取薫が、男勝りのガッツポーズを決めていた…。 「本当に勝ったんだ…」 立花も頬を紅潮させていた。カウント2−2から流鏑馬に投げたボールは内角 フォークだった。事前には自らの不思議な力で、内角フォークを投げると左中間 に打たれ同点になる映像が見えていた。にもかかわらず、立花はあえてそれと同 じ球を投げていたのだった。 なぜ、投げたのか。根拠なんて無いに等しい。ただフォークが立花にとって自 信のあるボールだったこと、この試合、流鏑馬がフォークをまだ一度もバットに 当てていなかったこと、魔法に反してストレートを投げると、何かバチが当たる ような気がしたこと、そして何より自分の直感を信じることだった。目を閉じて、 魔法に頼らなければ、あの場面は間違いなくフォークで行く、と思ったからだ。 それに、たとえ打たれても同点ならまだ勝てるチャンスがある。サヨナラ2ラン は打たれないとの開き直りもあった…。結果、立花の魔法は相手にではなく、自 らによって打ち破られたのだった…。 X X X X X X X X X 「さ、出ようか…」 丘陵敗退のゲームを見終わったアンドロメダの大田原健太郎は調査員見習いの 垣浜昇に声をかけた。 「あっ、そうそう、流鏑馬が負けたってことは一応、神威にも電話で知らせてや れよ。その時、情報は正確でしたっていうのも忘れずにな…」 こう言って健太郎はニッコリ微笑んだ。 神威もまたアンドロメダ調査員の1人だった。ただし流鏑馬を「発掘」したわけ ではない。この男が神奈川に現れていたのは、ある案件のついでにすぎなかった…。 つづく ☆☆☆☆☆ アンドロメダの物語はフィクションです。実在の人物、地名、組織には一切 関係ありません。



