2009/05/15
野球小説アンドロメダ・魔法エース26
☆☆☆☆☆ 20XX年、未知なる魅力あふれる野球戦士たちが、それぞれの夢達成のゴー ルに向かって、走り出した。それは理想の世界だろうか、それとも…。 ☆☆☆☆☆ 球界の危機的状況を感じ取った選手会リーダー・高杉明太郎はある日、東京 グレート総務課長の村澤三四郎、マネジメント会社アンドロメダのリーダー・ 大田原健太郎と出会い、未知の魅力にあふれた選手の発掘を誓う。そして舞台 は全国の高校へ。アンドロメダ球児たちの夏が始まった。 ☆☆☆☆☆魔法エース26 ポーカーフェイスの裏側は、やはり余裕たっぷりだった。「いける!」「打 てる!」…。 自信に満ち溢れていた。追い込まれながらも確信していた。ど っしりと構えた。いつでも来い! って言っているようだった。 「大した問題じゃない」 打席で流鏑馬義は不敵に思っていた。それほど手応えがあった。打てる、と いう手応えが…。 神奈川大会準々決勝、丘陵対殿檜杉は緊迫した試合になっていた。1−0。 殿檜杉がわざずかに1点リードして迎えた丘陵、9回裏の攻撃も二死二塁だ。 バッターはこの試合がデビューのスラッガー・流鏑馬。投げるは167センチ のエース・立花恭兵。カウントは2−2となっていた。 立花は130キロ台前半のストレートとフォークボールをうまく使う。右ヒ ジのしなりは素晴らしく、フォームは芸術的に美しい。コントロールもよかっ た。ボールになるフォークとストライクになるフォーク。この使い分けもまた 巧みだった。 「腕の振りはストレートもフォークも一緒。その見極めはギリギリまで難しい。 でも何とかなると思います」 打席に入る前、流鏑馬は笹森監督に話していた。この打席に入るまで、流鏑馬 は立花のフォークを1球しか見ていなかった。だが、それだけで行けるという感 覚があったようだ。 9回の打席では2球目に真ん中低め、ストライクのフォークを見逃したが、そ れでも悠然としていた。むしろ、確信していた。「やはり何とかなる」と…。 マウンドでは立花が考えていた。 「内角のフォークを左中間に打たれたってことは…」 目を閉じれば、打ち取り方が見えるという立花の不思議な力はやはり1試合に 1回だけしか使えなかったのだろうか。流鏑馬の第3打席(レフトフライ)では、 はっきり見えた「打ち取り映像」が、何と、この土壇場では「打たれる映像」に 変わっていた。立花が1試合に2回、魔法を使おうとしたことはこれまでもあっ た。しかし、今までは何も見えなかったら、どうしようもななかった。こんな風 に2回も映像が見えたのは初めてだったが、よりによって、やられる映像とは…。 考えた。 「今度は逆をやれば、いいんじゃないだろうか。きっとそうだ。内角のフォーク ではなく、ストレートを外角に投げればいいんじゃないか…」 ほんの数秒の間に立花はいろいろ考えた。そして、見た。もう一度、見た。ベ ンチ上で応援してくれる幼なじみの殴取薫の姿を…。 薫は例によって祈っていた。 「恭兵! 頑張って!」 幼稚園の頃からだ。立花はくじけそうになると、薫にいつも励まされてきた。 「もっと、自信を持ちなさいよ! 恭兵は男でしょ!」 4歳頃から、立花の頭の中には薫のこの言葉が強烈に叩き込まれている。とに かく嫌というほど、このセリフを聞いてきた。薫は4歳の頃から、こんな調子だ ったのである。 立花は前を見た。キャッチャー・塚西のサインにうなずいた。いつものように ヒジがしなる。打席の流鏑馬はグッとためを作った。カウント2−2からの第5 球目。どよめきが起きた。 つづく ☆☆☆☆☆ アンドロメダの物語はフィクションです。実在の人物、地名、組織には一切 関係ありません。



