2009/05/08
野球小説アンドロメダ・魔法エース25
☆☆☆☆☆ 20XX年、未知なる魅力あふれる野球戦士たちが、それぞれの夢達成のゴー ルに向かって、走り出した。それは理想の世界だろうか、それとも…。 ☆☆☆☆☆ 球界の危機的状況を感じ取った選手会リーダー・高杉明太郎はある日、東京グ レート総務課長の村澤三四郎、マネジメント会社アンドロメダのリーダー・大田 原健太郎と出会い、未知の魅力にあふれた選手の発掘を誓う。そして舞台は全国 の高校へ。アンドロメダ球児たちの夏が始まった。 ☆☆☆☆☆魔法エース25 目を開けた。口元を真一文字に引き締めた。腹をくくったような顔をしている。 もう迷いはなくなった、ということだろうか…。捕手・塚西のサインにうなずい た。殿檜杉のエース・立花恭兵は丘陵・流鏑馬義に向かっていった…。 「えいっ!」 立花は投げる瞬間に思わずこう叫んでしまった。それほど、気持ちが入ってい たということだろう。第1球は132キロのストレート。これが内角高めに…。 「ブルン!」 流鏑馬のスイングの音がこう聞こえたか、わからない。でもそう聞こえても少 しもおかしくない豪快なスイングだった。バットは内角高めの速球をとらえた。 「ワー!」「ウォー!」「オー」…。 スタンドからは悲鳴と歓声が交錯したような何ともいえない声があがった。流 鏑馬の打球はレフトスタンド方向へ一直線だ。逆転サヨナラ2ラン…。殿檜杉ナ インはそう覚悟した。マウンドの立花以外はそう覚悟した…。 「大丈夫なハズだ…」 立花は心の中でつぶやいた。 「ファウル!」 その通り、打球はわずかに切れた。 「ウォーー!」「ワーー!」「オーー!」…。 またスタンドから何とも言えない声が沸き起こった。 「うーん」 打席で流鏑馬がちょっと悔しそうな顔をした。手応えはあったのだろう。そ れがわずかに風に流された感じだったようだ。 「よし、次だ!」 一方、マウンドの立花は心の中で気合いを入れ直した。塚西のサインにうなず き、もう第2球 に入る。 「えいっ」 投じたのは真ん中低めへのフォークボール。ストライクゾーンに落ちる計算だ。 「…」 流鏑馬はこれには無反応だった。平然と見逃した。 「ストライク!」 立花はあっさり2−0と追い込んだ。 「恭兵のフォークのコントロールはやっぱり大したもんだぜ!」 塚西はこう思いながら、立花にボールを返した。しかし、流鏑馬は例によっ てポーカーフェイスだった。全く動じる気配もなかった。 第3球は外にストレート。ボール。1球外した。第4球はまたまた外へ…。 ただし、今度はきわどいコースに立花はストレートを投げ込んだ。でも、流鏑馬 のバットはピクリとも動かない。選球眼には自信もあるのだろう。ボール。カウ ントは2−2だ。 「ここからだ、ここから…」 立花は心の中でつぶやいた。そしてスタンドを見た。幼なじみの殴取薫の顔を …。薫はひたすら祈っていた。その姿に立花はまた勇気をもらったようだった。 目を閉じると、打者の打ち取り方がわかる魔法。立花はこれを使う時はいつも テンポがよかった。結果を確信しているからではない。早くしないと、その通り にならないのではないか、との思いがスピードアップさせていた。それだけに、 このように魔法の途中で、スタンドを見たり、間を取るのは、初めてのケースだ った。 「ここからだ、ここから…」 立花はまた心の中でつぶやいた。 明らかにいつもと違っていたのは理由があった。目を閉じた時に見えた映像が いつもと違っていたからだ…。 カウント2−2から、立花が投じるのは内角へのフォーク。それを流鏑馬がき っちりとらえる。この試合、初めて、立花のフォークに流鏑馬のバットが反応す る。打球は左中間へ…。同点のタイムリー二塁打…。この映像が、立花には見え ていたのだった…。 つづく ☆☆☆☆☆ アンドロメダの物語はフィクションです。実在の人物、地名、組織には一切関 係ありません。


