2009/03/13
野球小説アンドロメダ・魔法エース17
☆☆☆☆☆ 20XX年、未知なる魅力あふれる野球戦士たちが、それぞれの夢達成の ゴールに向かって、走り出した。それは理想の世界だろうか、それとも…。 ☆☆☆☆☆ 球界の危機的状況を感じ取った選手会リーダー・高杉明太郎はある日、東京 グレート総務課長の村澤三四郎、マネジメント会社アンドロメダのリーダー・ 大田原健太郎と出会い、未知の魅力にあふれた選手の発掘を誓う。そして舞台 は全国の高校へ。アンドロメダ球児たちの夏が始まった。 ☆☆☆☆☆魔法エース17 汗が飛び散った。ものすごい集中力。たかが野球ではない。その時、その一 瞬に人生をかけて、魂を込めている。それが普通、というものだ。無我夢中、 必死な姿は美しい。1球にかける熱い思いはプレーにそのまま反映された…。 「ここは打つ! 絶対塁に出る!」 打席に入った殿檜杉高校の立花恭兵は相手投手をにらみつけた。はっきりい って迫力はない。体格も小柄だし、顔もどちらかといえば、かわいらしい系…。 打撃ももともと得意ではない。でも精一杯の気迫をみなぎらせた。気持ちで打 つくらいに…。神奈川大会準々決勝、丘陵高校対殿檜杉高校、7回表。この回 先頭が立花だった。 今春センバツの覇者・丘陵のマウンドには捕手から転向した琴原が上がって いた。大黒柱のフリッシュが予選前に失踪騒ぎを引き起こし、今大会には出場 できない。琴原は急きょ、新エースに抜擢された。球はそれなり。適当に荒れ るところがむしろ功を奏している。準々決勝まであまり大崩れすることなく投 げてきた。この日も殿檜杉打線に走者は許すものの、要所は締める、といった 感じだった。 「とにかく先に点を取る。アイツが出てくるまでに…。絶対、先に点を取られ てはまずいはずなんだ…」 立花は打席のなかで強く念じていた…。あの時を思い出すように…。 X X X X X X X X X 予選前の丘陵高校のグラウンド(正確にいえば、予選は始まっていた。殿檜 杉高校と丘陵高校の出番がまだ先だった頃の話だが…)に立花は幼なじみの薫 に連れられてやってきた。そこでスペクトル学園の207センチの巨漢「ジャ イ周」こと道空周二と出会い、丘陵のスーパー1年生・流鏑馬義の存在を知っ た。 「薫さんもあの時、見ていたんですか」 「まぁ、たまたまだけどね」 「驚いたでしょう」 「すごかったわよねぇ。周囲の雰囲気が一瞬、変わったものね」 義は薫のいとこであり、ジャイ周の後輩でもあった。偶然の出会い、偶然 の共通点。薫とジャイ周は中学時代の義の話をし始め、それを立花は聞き入 っていた。 「薫!それで、どうなったの? 流鏑馬とその納谷ってヤツの対決は…」 立花は話の続きを急かした。 昨年夏の由元綱シニア対絵山シニアの一戦。流鏑馬義(由元綱)と納谷辰 夫(絵山シニア)のライバル対決は9回二死、由元綱シニア1点リードの場 面で実現した。 X X X X X X X X X 義は小走りにマウンドに向かっていった。うれしくてしかたない。初めての 実戦という緊張感なんかまったくない。それよりも喜びが支配していた。いっ たい何キロ出るだろうか…と。 スピードだけを追求してきたといっても過言ではない。未完成のフォーム、 未完成の体格ではある。将来のプロを逆算して、一歩、一歩、階段を上がって いることに不満もない。しかし、本音は早く試したかった。 この日の登板は元東京スパークトレーニングコーチの後端氏の了解をとって 実現した。由元綱シニアの道空監督(注:ジャイ周の実父)も10球限定で許 可してくれた。絵山シニアのエースでもある納谷とは「どちらが速い球を投げ られるか」で競う約束にもなっていた。納谷はこの日、何と自己最速の144 キロをマークしていたが、義にはそれも関係なかった。とにかく投げる! 胸 がときめいていた。 打席には納谷が悠然と待ち構えていた。144キロをマークした余裕もあっ たのだろう。薄ら笑みさえ浮かべていたようだった。 ネット裏(というほど立派な場所ではないが…)でスピードガンを構える後 端コーチはマウンドの義にサインを送った。といっても、こそこそしたもので はない。義にも見えるように、後端は指で数字の「8」を大きく描いた。「8 割の力で投げろ! 全力は禁止!」ということだった。それを見て義は軽くう なずいた。しかし…。 大きくふりかぶった。ダイナミックなフォームで義は第1球を投げた。 つづく ☆☆☆☆☆ アンドロメダの物語はフィクションです。実在の人物、地名、組織には一切 関係ありません。


