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社会人大学院(日本版 MBA)に通った経験から,生涯教育の意義について議論します.また,連載1年を超えましたので,広義な教育問題全般についても取り上げたいと思います.

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2009/03/26

<メルマガ配信 都の西北/山梨甲府から>第63話 教育版破壊的イノベーション

愛読者各位

 引き続きのご愛読,ありがとうございます.

都の西北/山梨甲府からです.

 息子の中学卒業式が 3/19に行われたわけですが,
  その式の風景も小生の子供の頃とは大きく変化しています.

 まずは,我々が中学を卒業したころ(実に30年以上前),
  式に父親が参列したことがあっただろうか?

 それと,息子の通う中学は私立の中高一貫校,
  中学を卒業したといっても,同級生のメンツはほとんど変わらない.
   勝負は大学受験といわれる.それまでは効率よく勉強する方が良いと!

 今や中高一貫教育が優れた教育制度がごとく,
  多くの学校で取り入れられ,それに賛同している父兄も実に多い!

 この中高一貫教育も我々が子供の頃にはほとんど聞いたことがない
  レアな教育制度だったわけです.

 教育制度も実は変化している事実,
  その変化は必要とされるからの変化であることを
   子供を持つ親は認識しておく必要があるように思います.
 
 今回は,今の教育制度に対して変化が必要であると提言した
  注目の一冊をご紹介します.

*****<以下,本文>********

第63話 教育版破壊的イノベーション

 今回は,話題の書籍

 「教育X破壊的イノベーション(教育現場を抜本的に改革する)」

 Clayton M. Christensen, Michael B. Horn & Curtis W. Johnson 共著(翔泳社)

 を題材に取り上げ,議論してみたい.

本書は先進国(米国,さらに昨今の日本も)における教育の衰退を具体的に指摘し,
教育版破壊的イノベーションの必要性についての提案を行っている.

簡単に言うと,先進国の教育制度は崩壊していると言わざるを得ず,
従来の継続的・改良的路線ではなく,斬新かつ全く新規な
教育システムを導入する必要があるとの提案で,
これにクリステンセンの「イノベーションのジレンマ」を
フレームワークに用いている.

イノベーションとは確立した市場における性能の継続的改善傾向を求める
「持続的イノベーション」 と

 無消費(これまでにニーズがなかった市場)を市場化する
 「破壊的イノベーション」 に 大別される.

既存技術の成功企業は「持続的イノベーション」路線をとるので,
多くの場合「破壊的イノベーション」への取り組みが遅れる.

「破壊的イノベーション」は取り組み初期において,性能も,コストも,
多くの視点から「持続的イノベーション」に対して劣勢にあり,
取るに足らない存在でしかないが,その形成はいつかは逆転する.

「破壊的イノベーション」が主流になった際,「持続的イノベーション」に
固執していた既存技術の成功企業はもはや「破壊的イノベーション」に追随できず,
過去の既存技術の成功企業が新規技術への転換に失敗しやすいという考え方.

「イノベーションのジレンマ」で有名なクリステンセンが,
この理論を教育現場の現状に適合させ
(教育を広義の変革すべき技術の一種と捉えて考察),
特にコンピュータ導入を具体的な破壊的イノベーションと捉え議論している.

コンピュータ教育は現在までにその潜在能力を成果として引き出せていないが,
その原因は既存のシステムに無理やり合わせこんでいるが故と主張している.
教育へのコンピュータ導入
(オンライン・ユーザー・ネットワーク,モジュール方式の教育体制)の可能性は
極めて高く,その破壊的イノベーションとしての潜在能力を引き出す本格的な成果は,
新規の教育システムとして導入すること(無消費層への攪拌)が
不可避であるということ.
(現状の教育システムと切り離した異なる視点からの発想が必要だと!)

実際,昨今の先進国(米国も,日本も)における教育がうまくいっていないことは
事実であるから,変革の必要性は疑う余地がないということが現行の教育を
再考すべきスタート点と言える.

 戦後復興の日本が1980年代の一時期,米国を追い抜いた.
 その時の日本人のモチベーションは豊かになりたい,
 そのために多くの日本人が一生懸命勉学に励んだ.

 技術立国日本の理系教育は非常に高い成果を得たわけであるが,
 この背景には,技術を身に着け,工業国日本に貢献したいと若者が多かった.
 日本の教育とその教育受ける側の若者のニーズとシーズがぴったり一致しており,
 当時の教育システムは非常にうまく機能していたといえる.

 ところが昨今の日本はどうか?
 理系人気は下がる一方,今の日本の若者は豊かになりすぎた故に,
 好き好んで難しい理系の教育を受けようとは思わないのである.
 従って,昔とは異なるこのような状況に合わせた教育システムが必要になると
 考えることが一般的になってきている.

 いつの時代にも万能な教育システムはなく,
  時代やニーズに合った変化が教育にも必要ということ.
   そこには,教育版破壊的イノベーションが必要となる.

確かに,

教育を受ける方にも個々の最適な受け方があり(one to one Business的発想),
これを一律に一人の教師が多くの学生を教える(いわゆるマスプロ教育)には
本来無理があったわけである.

これをコンピュータの導入によって対処,
(現状のままではなく,多様な生徒のニーズを個々に対応可能な
新システムの構築ツールとしてのコンピュータ),
個々の学生に最適化された教育が実践される方向に向かうとの主張は,
教育版イノベーションのジレンマを形作る背景はここから現れるとの見解である.

ただ,正直ピンとこないところはある.
まずはコンピュータ教育が本当に教育版破壊的イノベーションになりうるか? 
                               である.

教育はビジネス界とは異なるというか,
人間形成の場に同じ発想を本当に適用できるのかの疑問が残る.
ちょっと違うんじゃないかな? 
  とは感じた(ただ,可能性はあるとは思うが).

 本書ではone to one Business ライクなソフト開発に
 多額のコストを要する可能性も指摘している.
 そのソフトの出来が,ここでの議論の実現性を左右することになる.

とは言え,クリステンセンが考える教育の在り方については,
これまでとはまったく異なる切り口(イノベーションという指標を用いたこと)で
議論している斬新さがあり,これは評価に値する.

最後の解説(根来先生のコメント)にもあるように,
現実理解の仕方,その発想の豊かさにこそクリステンセンの魅力があるのであろう.

将来の教育が進むべき方向の一つとして,
本書の主張にも目を向けることは決して無駄なことではない.
教育界に身を置かれる方は読まれるとそれなりに得るところは多いと思います.



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