2009さわやかお受験のススメ<保護者編>
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「めぇでる教育研究所」発行
2009さわやかお受験のススメ<保護者編>
「情操教育歳時記」
日本の年中行事とむかし話
〜21世紀に活躍する子ども達の心を育てる〜
2008年 5月23日
−29−
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第8章(1) 何にもないのかな 水 無 月
暦の上では、今月から夏です。
夏の読み方は、「暑(あつ)」の転化したものといわれていますが、他にも
「生(な)る」「暑(ねつ)」などの転化したものという説もあるそうです。
水無月(みなづき)のいわれは、たくさんあるようです。
旧暦六月は、梅雨も終わり、炎天下の酷暑の季節に入って、文字通り、水もか
れつきるという説と、逆に、田植えも終わり、田に水を張る月「水張り月」
「水月」からきた説、また、農家のもっとも重要なイベントでもあった田植え
が終わったことから「皆仕月(みなしつき」「皆月(みなつき)」からきた説、
そして、雷が多い季節から「かみなり月」の「か」と「り」をとり、「みな月」
という説もあるそうです。
最後の「ゴロ合わせ」ではなく「語呂合わせ」がおかしいですね。
★★大切な田植えの時です★★
六月といったら、何といってもというものがありません。
毎日、雨が降り、むし暑くて、うっとうしい梅雨です。
「夏よ、早く来い!」
うんざりする毎日です。
しかし、この時期に、しっかりと雨が降らなくては、困ることがあります。
お米です。
田植えの季節です。
しょうぶやよもぎ、柏の葉は、端午の節句の専売特許ではありません。
実は、昔の五月は、今の六月頃にあたります。
今のように、機械で苗を植えるのと違い、田植えは、お百姓さんが、苗を一本
一本、手で植えていました。
ですから、時間はかかりますし、田んぼが広ければ人手もたくさん必要になり
ます。
まさに、猫の手も借りたいほどの忙しさです。
「米」という字は、「八と十と八」からできています。
お米は、種から芽を出した苗を田んぼに植えて収穫し精米するまでに、人の手
を八十八回わずらわすほど、手がかかるのです。
さらに、天気にも左右されます。
梅雨にたくさん雨が降らないと、田植えはできません。
水稲といって、稲は水田で栽培するのですから。
そして、夏に日照りが悪いと、稲はきちんと育ちません。
しかし、日が照りすぎても、田んぼの水が干上がって、稲は駄目になります。
また、稲は順調に育っても、収穫前に台風がきて、たわわに実った稲穂は強風
になぎたおされ、豪雨で水に浸かってしまっては使いものになりません。
本当に、大変なのです、自然、任せですから。
農耕民族の自然と宿命的な因果関係です、厳しいのです。
ですから、神頼みになります。
そこで、昔の人は知恵を働かし、田植えが無事に終えるように、たっぷりとお
水をいただき、夏にはしっかりとお日さまに顔を出してもらい、稲が立派に育
って、秋には、おいしいお米がたくさんとれるようにと、神様にお祈りをした
わけです。
早乙女といって、田植えは、女性の仕事でした。
ですから、お祈りをするのも、女性の役目だったのです。
早乙女というと、若い女の人のことですが、猫の手も借りたいほどの忙しさで
すから、早乙女ではない早乙女さんもいたことでしょう。
それはともかくとして、田植えをする人は、悪いことが起きないように、屋根
をしょうぶの葉で作った小屋に集まり、一晩中、お祈りをしたのです。
ですから、昔の五月五日は、夏負けをしないように、匂いの強い草で、魔物を
追い出す日であり、田植えの準備の日でもあったのです。
浄瑠璃といえば近松門左衛門、そのすぐれた伝統芸能を観賞する機会はほとん
どありませんが、残された名作を本で読むことはできます。
代表作の一つ、どうしようもない放蕩無頼で、典型的な自己中の不良少年、与
兵衛を描いた「女殺し油地獄」の中に、「五月五日の一夜を女の家というぞか
し」とあり、男の祭りではなく、無事に田植えを行えるよう祈願する、女性の
祭りであったことがわかります。
その田植えですが、本当に、たいへんな仕事です。
私も、子どもの頃に猫の手になって、手伝った経験があります。
泥んこの田んぼに足をつけたまま、幅一メートルほどの範囲を、十センチ間隔
ほどに苗を植えていくのです、腰をかがめて。
これを三十分程続けると、完全に腰にきます。
伸ばすと、ボリッと音がするほど、筋肉は、まいってしまいます。
夏になると、稲のまわりに雑草が生えますが、これを取り除くのも一苦労です。
また腰をまげて、手で雑草を取ります。
これが、かんかん照りの太陽のもとでの作業ですから、田んぼの水は、それこ
そ生あたたかく、草いきれで、むっとする匂いには、泣かされました。
蚋(ぶよ)や蛭(ひる)とう人の血を吸う虫もいて、環境のよい仕事場ではあ
りません。
最後の収穫、これも一株、一株、かまで刈っていきます。
お百姓さんの背が、曲がるわけです。
刈った稲を、今度は、天日で乾かします。
それを脱穀機で稲穂を取り、もみ殻にして、これを精米機にかけ、やっとお米
になるのです。
農業の機械化というのでしょうか、田植えから脱穀まで、全部、機械でできる
そうですから、これは、すごい省力化です。
そういえば、最近、腰の曲がったお百姓さんを、あまり、見かけません。
省力化のせいでしょうか。
田植えは、実りの秋への出発点です。
ですから、この時期の天候は、本当に神頼みでした。
★★しみじみとうまいにぎり飯★★
日本人に生まれてよかったなと思うことはたくさんありますが、米の飯を食べ
られるのもその一です。
米の飯ほどうまいものはありません。
寿司や鰻重、すき焼きなどでは、魚や鰻、肉が主役になり、称賛を浴びがちで
すが、どっこい、縁の下の力持ちは「ご飯」です。
米がまずけりゃ話になりません。
トロだろうが、天然物だろうが、霜降りだろうが、米に袖にされたら、もうい
けません。やっぱり、米は偉い。
この話をすると、何とも貧弱な食生活をと思われるかもしれません。
事実、その通りで食も細いのですが、しかし、しみじみと米のうまさがわかる
のは、「にぎり飯」ですね。
炊きたてのご飯を、手につけた塩で握り、海苔をまいて食べる。
中身は梅干しやかつお節があれば、もう、それで十分。
こんなに簡単で、安く出来上がり、満腹感を味わえる食べ物は、他にあるでし
ょうか。
小さく握ると、これが酒の肴になり、こたえられません。
にぎり飯、というよりは「おにぎり」の方がふさわしいかもしれませんが、こ
のおにぎりには、忘れがたい思い出がしみ込んでいます。
現代っ子には、絶対に味わえない食べ物、それは「おこげのおにぎり」です。
昔は、釜で米を炊いていましたから、釜の底に、こげたご飯がへばりついてい
ました。
これに、少し醤油をかけ、しゃもじでかき集め、握ってもらうのです。
何ともうまかった、絶品でしたね。
戦後の食糧難の時代で、とにかくお腹を空かしていましたから、これが楽しみ
でした。
電気炊飯器では、おこげなどできないようですね。
便利になりすぎると、失うものも出てきます。
このことを考えるべきではないでしょうか。
何事も工夫しなくなると、受け身になりがちです。
スーパーで売っているおにぎりを子どもに食べさせてはいけないと思います。
お母さんの手作りだからこそ、「おにぎり」なのです。
だから、うまいのです。
手作りだからこそ、うまいのです。
手作りだからこそ、お母さんの愛情が伝わるのではないでしょうか。
何とも不遜な言葉で嫌いですが、飽食の時代とか、「しみじみとうまい!」な
どといった味わい方を、どこかへ置き忘れているようですね。
私の子どもの頃には、茶碗に一粒のご飯を残しても、厳しく叱られたものです
が……。
ところで、日本画の巨匠、横山大観先生は、「酒は米から造るから、酒を飲ん
でいれば飯を食べたことになる」とおっしゃり、主食は酒だったそうですが、
真偽の程は定かではありません。
何かと話題となる給食問題。
その是非は置くとして、お母さんが真心をこめて弁当を作ってあげていれば、
親子の絆は切れることはありません。
食べている本人が、お母さんの苦労をかみしめているからです。
給食から、何かが築かれていくのでしょうか。
「男の人にはわかるものですか。毎日の献立だって大変なンですから……」
でも、お母さんが弁当を作ってもらった経験があれば、こういった声も出ない
と思います。
弁当は、おふくろの味です。
おふくろの味は、愛情ではないでしょうか。
その弁当ですが、やはり、ご飯ですね。
ところで、日本、いや、世界中を探険しているかと思うほど、あちらこちらに
出かけ、面白い探険記を読ませてくれる椎名誠氏といえば、生ビールとかつお
が大好きなことは、よく知られているようですが、何を隠そう、ご飯、だい好
き人間なのです。
簡単明瞭に、エイ、ヤァ!と一刀両断にした傑作な文章があります。
コメ、というのも非常にすぐれた携帯食料である。1.食べるときに3倍
以上に増える 2.常温でいつまでも腐りにくい 3.水と火さえあれば
いつでも食べられる。
この3項目だけでもつくづく素晴らしい。
これに対してパンはどうか。1.中身がたいしてないくせにかさばる
2.ほうっておくとパサパサ化してカビがはえる 3.原料からつくると
なるとやれイースト菌はどこだとか7時間はネカセロだとか、オーブンは
どこだ! トースターを持ってこい! とかできたら早くくえ、などとう
るさいことはなはだしい。
(「でか足国探険記」 椎名誠 著 新潮社 刊 P153)
一ヵ月以上、旅に出るときの必携三点セットは、何と、ショーユ、コメ、カツ
オブシで、これに海苔があれば、我々いくところ無敵である、そうな。
「これに梅干しを加えていただきたいと、私は断固、主張したい!」などと真
似ることもないのですが。
この後、脆弱で傲慢なレタスを俎上にあげ、玉ねぎを尊敬し敬愛し嘆賞するの
ですが、これもおかしい。
もっとおかしいのは、ペンギンの話。
歳時記に関係がありませんから省略しますが、この本は、電車内など人目のあ
るところでは、絶対に読めないと、しみじみと感じたものです。
突然、顔の筋肉が意志に関係なくゆるみ、押さえるのに苦しい思いをするから
です。
(次回は、「衣替え他」についてお話しましょう)
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