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米国シリコンバレー、熊本へ単身赴任した時に感じた文化の差、エピソード、日常生活で感じた身近なこと等を面白おかしくレポートします。ほのぼの、癒し系マガジンです。「わくわく単身赴任日記」なる本も出版しています。本マガジンは、その続編、番外編です。

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2009/04/25

わくわく単身赴任日記 No.77ISSCCの思い出

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           by 住田正彦

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'88-'90の米国、'00-'06の熊本の単身赴任時代に感じた文化の差、
身近なできごとを中心に綴ったショートエッセイです。

No.77 ISSCCの思い出     2008.04.25

今日はちょっと自慢話で、専門的にもなりますがご容赦下さい。

忘れもしません。今から25年前、LSIの最大の学会であるISSCCにパネリストとし
出たのは、私にとってエポックメーキングな出来事でした。

当時、SRAM(メモリLSIの一種)グループの主任であった私は、開発と事業化に奔走
しておりました。研究所ではなく、実事業部門の方だったので、学会とはあまり縁が
ありません。そんなある日、課長から「ISSCCのSRAMのセッションからパネリストの
参加要請が会社に来ている。君、出ないか?」と持ちかけられました。何のことか
わからない私は、課長の言うことでもあり、まあいいですよ、と気楽に答えてしまい
ました。

後で、色々な人に聞くと、パネルディスカッションというのはテーマを決めて、5-6人
のパネリストが自分の意見を述べたうえで、聴衆も巻き込んで、議論をしていくと
いうものだ、ということがわかりました。もちろん英語です。これを知った時は、
目の前が真っ暗になりました。えらいものを引きうけてしまった。壇上で立ち往生
している私の姿が目に浮かびます。

それから悶々とした日が続きました。語学力の点で議論について行ける筈はない。
(技術力でも怪しい。)こうなったら、最初のプレゼンをバシッと決めて、後は
知らぬ顔の半兵衛を決め込むしかない。そのためには、何か特徴あるプレゼンに
しないといけない、と考えました。プレゼンは月並み、議論はできないでは日本の
恥さらしです。テーマはSRAMの技術動向と将来というものでした。

色々考えて、よし、これは笑いを取る作戦でいこう、わかり易いように絵を多用しよう
と決めました。消費電力と動作速度の2軸の平面の中に、SRAMの現状を書き込み、そこに
様々な外部要因が押し寄せている、というのを自然現象の絵を使って説明しようと
しました。例えば、当時DRAMがSRAMを侵食していたのですが、そこはDRAMの大きな
波が押し寄せている、しかしその波が越えられない壁が両軸方向に存在する、また
背後にはエネルギー問題の炎が燃え盛っている、というような絵です。CMOS化には
ラッチアップや、α線の罠が待ち構えている、というのも入れました。

この絵を7-8枚くらいに分け、順々にOHPで重ねて行くという手法を思いつきました。
今でいう、パワーポイントのアニメーションの手法です。当時はパワーポイントどころ
か、パソコンもカラーOHPすらありません。色をつけるには色付きフィルムをその形に
切り取って貼りつけるしかありません。これを業者に頼んだら10万円くらいかかると
言われました。高かったので驚いたのですが、なにせ生き恥をさらすかどうかの瀬戸際
ですので、課長に頼みこんで認めてもらいました。ここまでたどりついて、これなら
何とかなるかな、とやっとほっとしました。

さて、いよいよ本番の日が来ました。場所はNewYorkのHiltonHotelです。Panelは夜
なので、その前にパネラー同志の顔合わせのための夕食会が開かれました。他の人
(欧米人)は皆顔なじみのようで、会話が弾んでいます。私一人、ポツンと浮いて
ました。他のメンバは、こいつ大丈夫かな、という目で私を見ていたと思います。

本番が始まりました。聴衆は幸い少なくて70人ほどでした。(あまり人気のある
セッションではなかった。)ちょっとほっとしました。他の人の流暢なプレゼンに
圧倒されながら、私の番が来ました。えい、ままよ、と腹を決めて、日本で何回も
練習した通りにプレゼンを開始しました。

これが大いに受けました。OHPを1枚重ねる度に、大笑いです。だんだん、次ぎはどんな
のが出てくるのかな、と皆興味深々で見てくれているのがわかります。特に私のことを
心配していた座長の人がひときわ大きな声で笑っていたのが耳に残ってます。

という訳で、プレゼンは大成功でした。後は予定通り知らぬ顔の半兵衛です。予想
通り、議論には殆どついて行けません。東洋の謎の微少を浮かべて座っているだけ
でした。だけど、あれだけ受けたのだからいいだろう、金返せとは言われないだろう、
あほな東洋人とは思われないだろう、免責、免責と開き直ってました。

という訳で、何事も経験ですね。これ以後、外人の前に出てもあまり戸惑わなく
なりました。


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