2009/06/28
◆[都会育ち] 656:不定時法
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Daily Mail Magazine ―――都会育ちの田舎暮らし――― Written by N.Kato
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∧∧ 『不定時法』
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第656号 平成21年6月28日(日)発行 発行部数4297部
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時計が欲しいんですよ。「刻」表示が出来る時計。
「刻」ってのは、江戸時代の時間表示法。
落語の「時そば」で、「今、何時(なんどき)でぇ」「九つでぇ」
みたいなのが、ありますよね。あれなんかが「刻」です。
「刻」では、日の出の時間が「明け六つ」、
日の入りの時間が「暮れ六つ」となっています。
で、日の出から日の入りまでの「昼の時間」を、六つの「刻」に区切ります。
ここから、ちょっと複雑なんですが、刻の進み方は
「明け六つ」⇒「五つ」⇒「四つ」と、減っていくんです。
で、正午ごろに「四つ」からいきなり「九つ」になります。
で、「九つ」からまた減っていって、「八つ」⇒「七つ」。
日の入りの時刻のころが「暮れ六つ」。
「暮れ六つ」から、今度は夜の時間を六等分して、
「五つ」「四つ」と減っていき、真夜中にまた「九つ」になります。
で、「九つ」⇒「八つ」⇒「七つ」となって、日の出のころに「明け六つ」。
つまり、日の出から次の日の出までで、
6⇒5⇒4⇒9⇒8⇒7⇒6⇒5⇒4⇒9⇒8⇒7⇒6
という流れです。
これが、江戸時代の「刻」による、時間の区切り方。
落語「時そば」では、代金を小銭で払うときに、一枚ずつ渡していって、
「五つ、六つ、七つ、八つ、親父いま何どきでぇ」
「九つでさあ」
「とお、十一、十二・・・」
と、一文ごまかすことに成功した男が、おりまして。
それを真似ようとした男が、ちょっと早い時間に行っちゃったから、
「五つ、六つ、七つ、八つ、親父いま何どきでぇ」
「四つでさあ」
「五つ、六つ、七つ、八つ・・・」
と、余分に代金を払ってしまうというのが、オチ。
これは「刻」の表示が、「九つ」のすぐ前が「四つ」だから、成り立つ話。
「九つ」と「四つ」だから、5時間も早く行ったということじゃないんです。
「九つ」のすぐ前が「四つ」だから、ミスってしまったんです。
ついでに書いておくと、3時の「おやつ」というのは、
昼の「八つ」の時刻に食べるお菓子、ということです。
さて。
「刻」表示の最大の特徴は、「一刻」の長さが日によって違うということ。
現代では、1時間はいつも、1時間ですよね。当たり前です。
でも、江戸時代の「刻」は、そうじゃなかった。
「明け六つ」から「暮れ六つ」、つまり「日の出から日の入り」までの時間を
六等分したのが「一刻」なんですから。
夏には、昼の一刻は長くなります。
そして、夜の一刻は短くなるんです。
逆に、冬になると、昼の一刻が短くなって、夜の一刻が長くなる。
厳密に言えば、1日1日、日の出の時間は変わっているのですから、
1日ごとに「一刻」の長さも変わってくるわけです。
現在の、1時間が常に1時間である時刻表示法を「定時法」といいます。
それに対し、江戸時代に使われていた「刻」のように、
日によって「一刻」の長さが変わる表示法を「不定時法」といいます。
当然、不定時法を現代も使っていたら、社会が成り立ちません。
夏には『笑っていいとも』が1時間14分だけど、
冬には『笑っていいとも』が51分だというのでは、
タモリさんのギャラ計算だって困るでしょう。
1時間が常に1時間であるというのは、現代では必須のことです。
そんな「不定時法」の「刻」なんですけれども。
利点もあるのです。
特に、農業のような生活をしていると、
「刻」のほうが便利なんじゃないかと思えることが、多々あります。
例えば「日の出から働こう」と思うときに、
定時法ならば、「夏は4時から」「冬は7時から」というようになるんですが、
不定時法ならば、常に「明け六つ」から働くわけです。
太陽の動きと共に暮らそうとするのならば、
季節によって「一刻」が変わる「不定時法」のほうが
便利な局面というのは、いろいろとあるのです。
そんなこんなで、不定時法の「刻時計」が欲しいと思っているんですが。
なかなか無いんですよね〜。(゜△ ゜)
パソコン上で「刻」を表示できるソフトだとか、
腕時計なんかはあるんですけれども、
家の中心に置けるような、きちんとした時計が無いんです。
普通に、オフィスの壁にかかっているような時計でいいんですけれどね。
ああいうので「刻表示」が出来るものが無いかなと思っているんです。
定時法の時計よりも、不定時法の時計を作るほうが難しいです。
定時法ならば、常に時計は一定のスピードで針を動かせばいいけれど、
不定時法ならば、1日1日、針の進むスピードが違うわけですよ。
夏ならば、昼はゆっくりと針が進み、夜は早く針が進む。
そんな時計ですから、当然、作るのは難しいのでしょう。
じゃあ、江戸時代に「時計」は無かったのか、といえば。
あったんですよ。ちゃんと「刻」を表示できる時計はあった。
でも、昼と夜とで針の進むスピードが変わる、
そんなスーパーハイテクマシーンを作っていたわけではなく。
発想の転換というか、うまい方法を考えたものだといか。
「時刻盤」を変えるんですよ。
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針の進むスピードは一定ですけれども、
季節によって、背景の「時刻盤」を変えるんです。
夏になれば、昼が大きく、夜が小さい背景にする。
冬になれば、昼が小さく、夜が大きい背景にする。
何枚かの時刻盤を用意しておき、季節によって変えていたんですね。
当然、この「背景替え」は、人の手によって行うわけです。
ですから、現代のような「全自動」の時計ではありません。
でも、「全自動」じゃなければ満足できない、
そんな熱いハートを持った漢(おとこ)が、江戸時代におりました。
田中久重氏。
江戸時代に、からくり人形などを多数作っていた技術者。
別名は「からくり儀右衛門」。リアル・キテレツ斎です。
この田中さん、全自動の「不定時法」時計の作成を目指します。
というか、「不定時法」に限らず、
太陽と月の動きだとか、現代の「定時法」表示だとか、
そういうものも全部ひっくるめて全自動で表示させるという、
スーパーウルトラウォッチを開発しようとしたんですね。
秋葉原でいろんな部品を買える現代と違って、江戸時代ですから。
部品とかも、自分でコツコツ製作するんですね。
で、何年かの努力の末、世界で初めての、
「全自動の不定時法時計」を開発しちゃったんです。
モーターも無いから「ぜんまい式」なんですけれども、
一度、ぜんまいを巻くと、1年間、全自動で動くという、
スーパーハイテクマシーンを、たった一人で完成させちゃったんです。
そんな技術者が、江戸時代の日本にいたんです。すごいもんです。
で。
田中さんの「からくり時計工場」は、後年、東京の芝浦に移転します。
「東京芝浦電気」と名前を変え、会社はどんどん大きくなっていきました。
これが現代の「東芝」です。
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【関連サイトなど】
田中久重氏の万年時計(東芝ホームページより)
http://kagakukan.toshiba.co.jp/dna/spirit/clock/index.html
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これは、なかなか面白かった。種子島コーヒー、美味しそうです。
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2009年06月28日発行(創刊2007年9月10日) 発行者 加藤のどか
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