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ARTは、親であることに関する社会慣習的そして法的な観念に大混乱を引き起こした。憲法と家族法の指導原理は、始めに子の親たらんとする意思を持つ者は、生物学上のまたは分娩上の関係を持っている者よりも、その子への親権に関して優勢である。

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2008/09/03

討議用資料 その3

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                  親子と法〜ARTと親子関係
       No. 21  討議用資料 その3
          September 3 , 2008
                                           Yasunao Kondo.Ph.D
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まぐまぐメールマガジンご愛読お皆さん、こんにちは

 この度『親子と法〜ARTと親子関係』という題でメールマガジンを創刊
しました。このメールマガジンでは、ARTの発達に伴いこれまで考えられ
なかった親子関係も生まれていますが、その法制度の提案をしていきます。

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課題9 「人」と「物」との境界線は?

 精子、卵子、胚等の生殖細胞を物権法のカテゴリーに組み入れて考える
件について、ご異存はありませんか?では、「物」とは何でしょうか? 
端的にいって、人以外のものはすべて「物」です。では、「人」とは何で
しょうか?つまり、人の始まりと終わりはどうなっていますか?
このことは既に既存の説が存在します。
  ・人の始期………民法と刑法で「人」としての出発点が異なります。
  ・人の終期………お亡くなりになられた時ですが、最近は延命治療法
の進歩や、心臓移植技術の進歩により、どの時期を人の終期とみなすかに
ついて、様々な議論が交わされました。これはこでは詳しく述べませんが、
ほぼ解決できています。
 人の始期について、既存の「始期」概念が適用できないのですか?既存
の「始期概念」とは、何でしょうか? 通説として刑法と民法では人の「
始期」概念が異なるらしいです。刑法では一部露出説(11)を、民法で
は全部露出説が通説です。一部露出説とは、ご存知でしょうが母体から幼
児の体が一部……すなわち足だけとか……出た段階で人とみなし、民法で
は体の全部が出た段階で人とみなす、という考えかたです。すなわち刑法
では攻撃の客体となりうる時期を基点に人の「始期」を考え、民法では権
利・義務の主体たりうる時期を基点に人の「始期」を考えているからだそ
うです。これには判例も多数存在します。では、精子、卵子を体外に取り
出すことができる時代にあって、既存の刑法や民法概念が援用できないの
ですか? と考えがちですが、これが、結構難しいのです。
 では、どのような場面で既存の刑法や民法概念を適用するのが難しいの
でしょうか?卵子、精子を体外に取り出し、体外で胚をつくり、別の女性
に当該胚を移植すれば子供ができる時代です。卵子、精子は体外に取り出
した段階で、そして体外で胚ができた段階で、当該卵子、精子、胚は物権
の対象です。その物権は、ある特定の人物に所有権があり、他人に保管さ
せれば、当該保管人には当該卵子、精子、胚に対して占有権が生じるし、
品質を劣化させないで保管する義務がある、という点では債権法上の債務
が生じてきます。このような場面における各々人の権利義務責任も構想し
ておかなくてはなりません。実は、このあたりはあまり難しくありません。
マイナス198度摂氏で凍結保存しておく限り、品質に変化がないからです。
ですが、凍結保存しておくことが、最終目的ではないはずです。そうです、
子供を創造することです。胚を女性の子宮に移植し、着床させ、細胞分裂
を経て胎児から幼児へと成長せしめる、ことが脳中の思いでしょう。その
過程は、物権として存在していた胚が成長し、親権の対象たる「人」に変
化していくのです。子供は女性の胎内で一日で胚から幼児になるわけでは
ありません。10ケ月くらいの期間が必要です。さらに、懐胎し胚から幼児
へと直接成長せしめる女性と、その女性と協力して子供の成長環境を用意
し、子供が生まれた暁には当該子供を引き取り育てようと考える女性が別
人の場合は、さらに複雑になってきます。
 では、胚が「物」から「人」に変化する境界の時期はいつでしょうか?
      1 胚が分裂して8細胞になったとき
      2 胚が子宮に着床したとき
      3 心臓が動き出したとき
      4 妊娠第8週
      5 女性の体から一部体が出たとき
      6 女性の体から全部体が出たとき
私たちは、遺伝的血縁と、妊娠と、育児とを分離可能な時代に生きていま
す。従来これらは同一人の手中にありました。同一人の手中にあるうちは、
人とは刑法の一部露出説、民法の全部露出説で事足りていました。また、
胎児は生産で生まれてきた場合に限り相続権がある、これは民法886条の趣
旨ですが、もうこれで十分でした。では、遺伝的血縁と、妊娠と、育児
を分離可能な時代にあって、当該胎児は誰の遺産を相続する権利があるの
ですか?
     遺伝的血縁者の財産ですか?
     妊娠者の財産ですか?
     育児者の財産ですか?
民法の886条の規定からすれば、相続に限っていえば妊娠第8週以降は、現
行法でももう人のようですが、新時代にあってはさらにその「物」または
「人」に対して誰に「所有権」「親権」があるのでしょうか?「胚」が物
であるうちは、対物保険が利きます。しかし「人」になった段階で対物保
険は終了です。新時代にあって、「人」とは民法の全部露出説でいいんで
すか?複数の人がかかわってくるので、「物」「人」の境界線を、もっと
早期に設定しておく必要性が出てくるでありましょう。物としての生殖細
胞は液化窒素下で凍結保存ができます。いっぽう、人の命は限りがありま
す。保管依頼者が死んだ場合、その生殖細胞の所有権は誰にあるのですか?
一時すごく話題になった「死後生殖」もやりようによっては可能です。そ
の親子関係はどうなるのですか?精子は「物」でした。ですが、固体死の
後も、「物」を使って死んだはずの人に顔がよく似た「人」を創造するこ
とができます。体外受精技術は、民法では明確に峻別しているはずの「物
」と「人」の境界線を問うてきています。
 「生殖細胞」の状態にある時期に関して、議論をして見解をまとめてお
くべき論点はまだ他にもあります。例えば一例として、
 ・凍結中の生殖細胞が火災、地震などの保管義務者には不可抗力な要因
     で死滅・劣化した場合の責任の所在、保証はいかに?
 ・保管に要する経費はどのくらいの金額が妥当か?
 ・保管中、夫婦が離婚した場合、保管生殖細胞の所有権は?
 人工心肺の開発と、臓移植技術の進歩は、刑法上、民法上の「人」から
「物」へとかわる境界線が問題となりました。体外受精技術の開発は刑法
上、民法上の「物」から「人」への境界線を問題の一つとします。
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(11)刑法の一部露出説については、現在多数の著作が存在するが、例え
ば竹田直平『刑法各論』(近畿大学印刷部)が挙げられる。
                                


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