現行法における親その2
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親子と法〜ARTと親子関係
No. 9 現行法における親その2
December 18, 2007
Yasunao Kondo.Ph.D
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まぐまぐメールマガジンご愛読お皆さん、こんにちは
この度『親子と法〜ARTと親子関係』という題でメールマガジンを創刊しまし
た。このメールマガジンでは、ARTの発達に伴いこれまで考えられなかった親子
関係も生まれていますが、その法制度の提案をしていきます。
現行法における親その2
(3) 判例
1 昭和三七年四月二七日最高裁判決
母子関係の評価基準として、しばしば「昭和三七年四月二七日最高裁判決」が
援用される。日く「母子関係は分娩の事実によって発生する」である。しかし、
この判決は「分娩の事実」をすべての出生届に排他的に課すとは言っていない。
この判決は、子を分娩した女性に何らかの事情があって、分娩した子を自らの
籍に入れることができず、別人の籍に入れていて、後になって子を分娩した女
性がその子との親子関係の存在を求めて裁判所に提訴したものである。私人間
で親子関係の存在をめぐって争いがあり、当事者同士では解決することができ
ず、国家が用意している紛争解決の手段としての裁判を利用したのである。
裁判所は、子を分娩した女性の提訴を受けて対審の後、「母と非嫡出子間の
親子関係は、原則として、母の認知をまたず、分娩の事実により当然発生する
ものと解すべきである」と述べている。裁判所は子を分娩した女性の主張を容
認し、戸籍上の母子関係の訂正を行わしめている。冷静に考えれば、訂正され
るまでは、子を分娩していない女性の名が戸籍の母の欄に記されていたのであ
る。分娩した女性に諸事情があって戸籍の母の欄に自己の名を記載せしめるこ
とができなかったのである。
大多数の親子関係、なかんずく母子関係は分娩の事実だが、関係者すべてが
納得している場合、あるいはやむを得ないと思っている場合は、分娩していな
い女性の名を母の欄に記載してもいいのである。少なくとも、昭和三七年四月
二七日最高裁判決を読む限りではそうなっている。また、この判決は、「母と
・・・親子関係は・・・分娩の事実によって・・発生する」とは言っているも
のの、「原則として」と言う語句が間に入っていて、「分娩の事実」が排他的
でないことを意味している。『最高裁判所判例解説』(18)はこの事案を次の
ように説明している。
1.Y(被告、控訴人、上告人)はX女(原告、被控訴人、被上告人)とA男
との間に出生した(大正六年七月三〇日)が、当時Xの養父母の反対があった
ためXの籍に入れることを許されず、養父母の知合のBに依頼して、同人の嫡
出子として出生届がなされ、その直後XとYとの養子縁組みがなされた(因み
に、当事者の主張によると、その後XとYとの養子縁組は解消され、更めてA
及びその妻CとYとの間に養子縁組がなされて現在に及んでいるという)。そ
こで、XよりYに対し、XとYとの間に親子関係が存在することの確認を求め
たのが本訴である。
2.一,二審判決とも、XのYに対する認知の有無を問題とすることなく(も
っとも、両判決とも、母と非嫡出子との間の親子関係の発生には母の認知を心
要としないとの見解を前提としたものであろうが、この点につき特に当事者が
問題としなかったため、殊更その見解を述べることをしなかったものと思われ
る)、YはXとAとの間に出生したとの事実から、XとYとの親子関係を認め、
Xの請求を容認すべきものとした。上告論旨もまた、もっぱら原判決の事実誤
認を主張し、X・Y間の親子関係の発生につき認知を要するかの問題について
は何ら触れるところがなかったが、後記大審院判例を考慮し、又、学説上も種
々論争されている問題であること等の関係からであろうか、本判決は附言する
にと断って、前掲判決要旨のように判示して、右の問題についての最高裁判所
の見解を明らかにしたものである。
2 大正十年十二月九日大審院判決
大審院は、婚外子が生母の遺産相続人であると主張して、その相続財産につき
共有権を有するとの確認を求めた事案において、婚外子と母との関係について
も母の認知かなければ法律上の親子関係を生じないとし、その根拠として民法
にその旨の明文があること、子の父に対する場合とその母に対する場合とを別
異に扱うことは権衡に失することを挙げている。大審院は「共有権確認抵当登
記更正手続請求の件」について、大正十年十二月九日に次のように判示してい
る(19)。
・・・(前略)子は生理的には親子なりといえども法律上は未だ以って親子関係
を発生するに至らず斯かる関係は其の父又は母に於いて認知をなすによりて始
めて生ずるものなることは吾成法上の制度として疑いなき事なり・・・・
(中略)・・・父の認知なき限り法律上これを親子と目するを得ざることに付
いては何ら疑いなき以上独り母の場合においてのみ・・・・・(中略)・・・
・・生母たる事実が明白なる限り認知を要せずして法律上当然親子関係を発生
すると論断せしむは権衡を失する(後略)・・・・
3 大正十二年三月九日大審院私生子認知請求事件判決
この事件の判決で大審院は「母ノ為シタル私生子ノ届出ハ同時ニ其ノ認知ノ効
力ヲ生スルモノトス」(20)と判決要旨で述べた。この事件で大審院は判決理由
で次のように述べる(21)。
父が庶子出生の届出を為したるときは其の届出は認知の効力を有するものなる
ことは戸籍法第八三条前段の規定する所にて母が自ら私生子出生の届出を為し
たる場合に於いて私生子認知の効力を有するものなるや否やに付ては戸籍法上
何等規定する所なきも右両者を比較して考ふるに均しく出生届出にして前者は
其の届出と同時に認知届出の効力を生するに拘らす後者のみ其の届出と同時に
認知の効力を生かせさるものと認むべき何等の理由を発見することを得さるか
故に既に父か為したる庶子出生の届出にして同時に庶子認知届出の効力を生す
るものと認めたる規定ある以上は母か為したる私生子出生の届出も亦同時に私
生子認知届出の効力を生ずるものと認めたるの法意なりと解するに難からす而
して(後略)・・・
この判決で大審院は父がなした出生届は同時に認知届けの効力がある、との規
定が戸籍法に存在する以上、法の下で男女平等とは言っていないが、母がなし
た出生届にも認知の効力があると判示した。このことは母子関係も父子関係と
同様に認知によって発生するとした大正十年十二月九日大審院判決を踏襲した。
注
(18) 『最高裁判所判例解説』昭和三八年九月、財団法人法曹会、
(19)『大審院民事判決録』中央大学発行、大判・大正十・十二・九 民録二
七輯二一〇〇頁。原文は旧仮名使い。
(20)『大審院民事判決集』法曹会発行、一四三頁、大判・大正十二・三・九
第一民事部判決。
(21)原文は旧仮名使い。
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