「オリヲン座からの招待状」を観た
・・・・・「オリヲン座からの招待状」を観た・・・・・
ホサカ・カオル
―町の映画館・オリヲン座は、毎日、たくさんの人で賑わっていた。経営している
のは映写技師の豊田松蔵と妻・トヨだ。ある日、一人の青年が映画館にやってきた
。映画を観たくて仕方がないが、お金がない。トヨはその青年を「途中からだから
」と言って入れてやった。上映が終ると、その青年、留吉は松蔵にここで働かせて
くれと頼み込む。留吉は熱心に働き、映写技師となる。しかし、松蔵が急死してか
ら、映画館は段々寂れるように…―(goo映画より)
「美しい日本」というと、突如政権を投げ出した某首相を思い出してしまう。しか
し、以前から本当の意味で「美しい日本」と日本人のこころを描き続けてきたのが
作家の浅田次郎だ。彼の短編を映画化した本作も、実に静謐で美しい作品に仕上が
っている。
30年代日本のある映画館を舞台にした物語だが、たんなる昭和のノスタルジーを
描いた作品ではない。映画では、夫婦関係の危機を迎えた一組の男女が、ひとつの
美しい物語の記憶(ヒストリー)を通じて、再び絆を取り戻していく。
冒頭の樋口可南子がいい。自らの夫婦関係にピリオドを打とうとする女性の決意
と戸惑いをその表情で実にうまく表わしている。そして主演の宮沢りえ扮する未亡
人は、どこまでも美しく、けな気だ。
さあここで泣けといった大げさな演出があるわけではない。でも観ているといつ
の間にか涙がこぼれてくる。こころがすっと暖かくなる。それは、ひとつには浅田
次郎の巧みなストーリー・テリングによるものだろうが、それだけではない。実に
丁寧に作りこまれた映像の端々から作り手たちの優しさがしっとりと伝わってくる
のだ。画面いっぱいに広がるピアノのメロディもいい。登場人物それぞれの心象風
景のように映像に溶け込んでいる。
映画はまた、「昭和」を語る上で決して避けてはならない戦争の記憶についても
描いている。作品の重要なモチーフでもある「無法松の一生」は、戦時中、軍部の
検閲によって10分カットされ、戦後は占領軍によって8分カットされた。もはやわ
れわれはこの映画の完全版をみることができない。映画館主(宇崎竜堂)の「いつか
復元された無法松を上映したい」という台詞には、いまだに実現することのない平
和な世界への願いがこめられているのだ。
ただ残念なのは、ヒット作「ALLWAYS三丁目の夕日」の続編と同時期の公開のため
、興行的に苦戦をしいられそうなことだ。ぜひともご覧いただきたい作品である。

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