映画から学ぶアートな人生 RSSを登録する

大ヒットするのは、メディアで大量宣伝された作品ばかり。でもその多くはその場限りのアトラクションのようなもの。映画も文学やその他のアートと同様、人生を豊かにするものです。そんな立場からの映画批評です。

  • 周期 週刊
  • 最新号 2007/11/10
  • 発行部数 31
  • マガジンID 0000243644
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2007/09/23

「題名のない子守唄」を観た

          ....「題名のない子守唄」を観た....

―北イタリアのトリエステにやって来た異国の女イレーナが、金細工の工房を営む
アダケル家のメイドに雇われる。それは周到に策を講じて手に入れた念願の職場だ
った。完璧な仕事ぶりですぐに主人夫妻の信頼を得ると、最初こそ手を焼いていた
彼らの4歳になる一人娘テアの心も確実に掴むのだった。しかし、テアを慈しむイレ
ーナの本当の目的を知るものは誰もいない。さらに、忌まわしい過去の黒い影が忍
び寄る。―(goo映画解説より)

イタリア映画「題名のない子守唄」を観た。監督は、あの「ニューシネマパラダイス
」のジュゼッペ・トルナトーレ。感涙モノをつくらせたら右に出る者のいない巨匠だ
。ところが今回はその期待をみごとなまでに裏切ってくれた。たしかに裏切りもまた
映画鑑賞の楽しみではあるのだが・・・。

「R15」という年齢指定の表示に「不吉」な予感はしていたのだった。冒頭、昔な
ら完璧にボカシを入れられるような映像から物語は始まる。時折主人公をおそうトラ
ウマのフラッシュバック映像は「ハード・コア」映画そのもの。血しぶきや死体、ス
プラッター映画なみの描写もある。全編、ヒッチコック的なスリラー仕立ての展開が
持続的な緊張感を強いられる。

「母性」をテーマにした感動物語(たしかに「母性」がテーマであることは間違いない
)を期待していた自分がバカだったと観念しつつ、私はその緊張に耐え続けた。
しかしラストには、ひとつのカタルシスが用意されていた。主人公の罪と苦悩が許さ
れ、癒される瞬間を観て、私もこの映画を許すことにしたのである。

思えば、感涙モノと残酷モノは、イタリア映画の伝統的な二枚看板であった。私も、
かつてイタリア映画全盛時代、最後に不治の病で死んでいく子どもに涙し、マカロニ
ウィスタンの残酷な流血シーンに眼を背けた記憶がある。その意味でこの作品は明ら
かにイタリア映画の伝統をふまえた映画なのだ。

宣伝では「母性」というテーマが全面に押しだされているが、これは「男性」が見る
べき映画である。なぜならこの作品のもう一つのテーマは「売春」というものの残酷
さだからだ。若い男性がこの映画をみれば、「買春」という行為、そしてその背景に
あるものの罪深さをきっと感じるはずだ。
                                                        (ホサカ・カオル)

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