2009/06/01
医療観察法.MAG
No.013 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2009.6.1
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厚生労働科学研究によると、通院処遇中の自殺は想像以上に多い。入院中の自
殺は、報道もされ、調査委員会によってそれまでの処遇の妥当性が検討されたが、
通院処遇中の自殺は話題にものぼらなかった。厚労省は、いずれの自殺者数も公
式には発表していない。
医療観察法が施行されて4年。キャパシティー・オーバーの問題は、入院だけ
でなく通院においても問題になりつつある。厚労省は通院処遇を受け入れる医療
機関を増やそうと躍起になっているようだ。2009年4月の医療観察法に関する診
療報酬の改定は、それを示している。対象者を3名以上受け入れる指定医療機関
には特別な報酬を加算するという。このまったく理屈の分からない加算は、無理
をして対象者を受け入れる協力に対する報酬というところであろう。その“無理”
のしわ寄せは、いったいどこに行くのか。
法施行当初から、入院病床の不足は常に問題視され、すでにキャパシティーを
オーバーしている。鑑定が終了しても入院ベッドの空きを待って、鑑定入院が延
長されたり、指定医療機関以外のベッドの利用が可能になるなど信じられない姑
息な対策がとられている。当面の緊急的措置のように言われているが、これが常
態化してなし崩しになる蓋然性は高い。未だに日本の精神医療の質の足を引っ張
り続けている“精神科特例”と同じやり方だ。入院では、キャパシティー・オー
バーは、少なくともこのように目に見える形で起こる。
入院は、ベッド数があらかじめ決められているから、それ以上の人数を入院さ
せることは物理的にできないが、外来はそんなことはない。“無理”をすれば、
物理的にはいくらでも受け入れることが可能だ。社会復帰調整官自体、端からと
うてい通院処遇対象者のケアをきちんとマネージできるような人数ではないこと
は分かりきっているのだから。
審判で入院処遇になる裏の理由が、地域で受け入れ先が見つからないからとい
う場合が、決して少なくない。実際には入院させる必要はないが、鑑定入院後す
ぐに退院させようとしても、受け入れる家族がいない、受け入れてくれるグルー
プホームや適当な医療機関も見つからないという理由で入院処遇になるケース。
医療観察法における社会的入院である。
審判は、医療観察法による入院か通院かを決めるだけで、精神保健福祉法によ
る入院が妥当だとしても、そのような選択肢はない。何らかの入院が必要な場合
は、即医療観察法による入院となる。そして、地域から遠く離れた入院施設に移
される。入院期間が終了して、退院する時期になっても、地域に受け入れ先がな
かったという現実は少しも変わっていない。いやむしろ、家族は年老いて、なじ
みのワーカーはすでに転勤しているかも知れない。条件は、悪くなることはあっ
ても、良くなることはないだろう。生活の安定なくして、精神が安定するはずも
ない。地域での支援をいわばマイナスから構築していくのは、並大抵のことでは
ないはずだ。しかし、医療観察法では、この最も重要な部分には力点が置かれて
いない。
通院処遇のキャパシティー・オーバーは、医療・福祉的支援の質の低下となり、
それは対象者の生活全般の荒廃を招く。しかし、それは直接関わったもの以外に
は見えてこない。われわれの目に見えてくるのが、多すぎる対象者の自殺という
結果だけだとすれば、あまりにも悲しい。
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医療観察法.NET
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http://www.kansatuhou.net/
“医療観察法.NET”は、医療観察法を通じて精神科医療保健福祉の全体を見渡す
ことの出来るポータルサイト。
2010年にむけて、少しずつでも確実に情報を積み重ねたいと思っています。
(※医療観察法は施行後5年(2010年)で見直しを行うことになっています)
内容もどんどん更新されていますのでぜひチェックしてみてください。
また、皆様からの情報、ご意見もお待ちしています。
共にこのサイトを盛り上げていきましょう。
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更新情報
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■さまざまな論点 >刑事責任能力判断の新たな動向
http://www.kansatuhou.net/04_ronten/04_01_keijisekinin_nouryoku.html
■さまざまな論点 > 指定通院医療機関からみた地域処遇の実情
http://www.kansatuhou.net/04_ronten/06_03_chiikishogu_jitujou.html
■エッセー・対談>医療観察法対象者インタビュー
http://www.kansatuhou.net/11_essay/04_taisyo_interview1.html
■エッセー・対談>なくそう!差別と拘禁の医療観察法11/24全国集会の時
の対象者インタビュー
http://www.kansatuhou.net/11_essay/05_1124taisyo_interview.html
■エッセー・対談>ティナ・ミンコウイッツ講演録
http://www.kansatuhou.net/11_essay/05_tina_kouen.html
■出版物のご案内>医療観察法関連書籍 一覧表
精神保健・医療・福祉の根本問題 -岡崎 伸郎,批評社,2009/01
http://www.kansatuhou.net/50_books/01_list.html
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映画紹介
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観察映画「精神」
観察映画、とは聞きなれない言葉だ。よりによって「精神」なるものを映画と
いう形を通して観察し記録しているという。そしてそれを世界各国で上映してま
わっているという。
この映画は岡山県にある「こらーる岡山」という小さな診療所に通う患者さん
たちを観察した映画だ。
ホームページhttp://www.laboratoryx.us/mentaljp/index.php
http://www.yomiuri.co.jp/entertainment/heather/h_review/20090529et0b.htm
をのぞくと、PFでは主人公である患者さんたちもよく語っているし、解説も多方
面からこの映画を分析してみせ賑やかだ。
そして、驚くことに登場する方たちは皆「無修正」だ。素顔のままで登場し、
ありのままの「自分」と「病気」を語っているように見受けられる。なるほど観
察映画だからこういう手法で・・・と納得させられるが、これは本当に画期的な
ことだ。
「傷ついたこころ」を治すのにその人の来歴を知らずしてその人を診ることは出
来ないはず。本当の来歴はその人にしかわからないところが多いのに、その人の
言葉に耳を傾ける人は少ない。この映画ではその言葉を丹念にひろっていく。
この映画には音楽の挿入もほとんど無く、決められた台詞もないそうだ。静かな
映像を想像してしまうが、実に雄弁に私達に語りかけてくる映画のようだ。
6月13日から順次全国公開が始まる。
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