「正義・公平の理念」除斥期間の延長は認められるか?
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■河野順一です。
先週末、久々に関東は雪でした。
湿気を含んだ重い雪が、
それでもフワフワと大きく左右に揺れながら
とめどなく鉛色の空から落ちてくるのを眺めていると
時間が止まったかのような錯覚に陥りました。
しかも雪は降り積もると、消音効果があるようで、
驚くほど周囲が静かになります。
時々、重みに耐えかねて、屋根から滑り落ちる雪の
ドサッ・・・という音を耳にするくらいで、
車も、人通りもほとんどない住宅地の静寂は、
普段の日曜、休日の昼間とは大違い。
住宅街を区画する、道路の雪かきさえなければ、
ゆったりと時の流れる雪の日曜日は、
異次元の世界を演出する
最高の休息日といえるでしょう。
雪がやんだ夕方、周囲は、
雪だるまを作ったり
雪合戦に興じる子供たちの歓声に、
ようやく、いつもの日曜日の活気を取り戻しました。
明日、太陽が戻って、
冷たさに手がチンチンするのをこらえて作った
雪だるまが溶けてしまったら、
子供たちはさぞがっかりするでしょう。
一日でも長く、雪の余韻に浸らせてやりたいなどと
つらつら考えておりました。
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平成20年2月5日版
ビジネス系ポップフィロソフィー メルマガ
【 「負けるな社長!」⇒ http://jinji-no1.co.jp 】
<第30号>
河野 順一
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※当メルマガは、社会教育家・労使紛争解決アドバイザー
河野順一が、読み、聞き、学び、 考え、そして実践した
<ポップフィロソフィーによる成功の哲学>を、
誌上に おいて配信するメールマガジン です。
▼日々の出来事、私が感銘を受けた書籍や、
言葉もご紹介していきます。忙しい日常の、
一服の清涼剤としてご活用いただければ幸いです。
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<負けるな社長! 今日の名言>
『 不怨天、不尤人 』
天を怨(うら)みず、人を尤(とが)めず
【論語】
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たとえ、どんなに不遇であっても、
運命(天)を怨んだり、他人を尤(とが)めたりしないで、
自らの修養に努めることが大切である
・・・という意味である。
この言葉には、続きがある。
「 下学而上達。知我者其天乎」
下学(かがく)して、上達す。われを知る者はそれ天か。
意味としては、
「私は、日常的なものから、高遠なものまで
ありとあらゆるものを探求してきた。
だが、私を受け入れてくれる君主はいなかった。
私を理解してくれるのは、ただ天のみであろうか」
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身につまされる言葉である。
周囲に支持されなくとも、
自分に絶対の自信を持ち、
天という普遍なものだけが、
理解できる高遠な思想なのだと
一人ごつ様子が目に浮かぶ。
■このコーナーでは何度となく、論語を紹介している。
論語は、儒家の祖、孔子の言葉を、
後世、彼の弟子たちが編纂したものである。
上記、『 不怨天、不尤人 』 は
孔子の、晩年における心境を表わしたものといえる。
■孔子は、政治家を志すが挫折し,
晩年は教育者として活躍する。
孔子の生きた時代、中国は諸国が分立しており
統一国家ではなかった。
孔子は今でいうところの、政治コンサルタント的な立場で、
諸国の為政者に、自らの思想を国政の場で実践することを望んだが、
ほとんど受け入れられることはなかった。
なぜなら、彼が唱えた儒家の基本理念である「徳知主義」は、
君主の徳性によって、人民を教化して政治を行うべきだ、
というものであったからだ。
すなわち、君子とは優れた礼を身につけ、
徳を備えた理想的な人間でなければならず、
政治はこうした君子の道徳的権威によって
おこなわれる(修己治人)べきだとし、
「王道政治の思想」ともいわれる
孔子のこの理念は、あまりにも理想的であり、高遠で、
一般に君主に受けが良くなかった。
また、孔子の唱える理想は、体制への批判とも受取られ、
夢破れた孔子は、69歳で故郷魯に帰り、
その後、後進の指導に当たるが失意の中、74歳で没する。
そのような晩年、不遇な時代の言葉が先の言葉なのである。
しかし、さすが孔子は儒家の祖、
「敗者の勝者」である。
「敗者の勝者」とは?
たしかに彼が生きた時代に、
彼の思想は受け入れられなかった。
この点について、彼は敗者である。
しかし、彼の思想は弟子に受け継がれ、
4000年を経た今も、
それは現代を生きる人々の人生哲学として、
脈々と受け継がれている。
おそらく人類が滅びるまで、
彼の思想は枯れることがないだろう。
この意味で、彼は本当の勝者である。
彼の存命中、日の目を見ることはなかったが、
歴史は正しく彼の思想を判断するまでに成熟した。
「敗者の勝者」
晩年は不遇であった孔子も、
さぞ草葉の陰で満足していることだろう。
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<河野順一の 司法うんちく
『 除斥期間を適用しない・・・高裁判決 』>
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■先月31日、東京高裁において、
法を四角四面に捉えず、
ケースバイケースで柔軟に解釈し、
「除斥期間の壁」を突き崩すという、画期的な判決が下された。
・・・と新聞各紙が報じた。
■本件は、殺害から発覚までに26年の歳月を要したものだが、
この事案に、民法の「除斥期間」を適用するか否かが争点となっていた。
ちなみに、除斥期間とは、法律関係を速やかに確定させるため、
一定期間の経過によって権利を消滅させる制度である。
消滅時効と効果が似ているが、厳密にはそれとは異なり、中断がない、
援用をしなくとも裁判所の職権によって権利消滅を判断するなど
若干の差異がある。
判決で裁判長は
「事件発覚まで被害者の殺害を
知ることができなかった遺族の請求に、
民法上の時効を適用するのは
著しく正義・公平の理念に反する」
として、
殺害行為に対する損害賠償の支払を認めなかった
一審の決定を変更し、
被告に4200万円の損害賠償の支払いを命じたものである。
■事件は、1978年、東京都足立区の
小学校教諭だった女性(当時29)が
勤務する小学校の校舎内で絞殺され、
被告元警備員の男性(71歳)が
自宅床下に埋めたものである。
刑法における殺人罪の時効成立後の
事件発生から26年を経た、2004年8月、
自首したこの男性に対し、
遺族が損害賠償を求め提訴した。
第一審の東京地方裁判所の判断では、
民法の除斥期間を理由に、
損害賠償の支払は認められず、
「遺族が故人を弔う機会を奪った」とし
330万円の、慰謝料の支払を命じるにすぎなかった。
遺族は、それを不服として、控訴していたものである。
ちなみに、遺族側は、男を警備員として採用した足立区に対し、
民法715条の「使用者責任」があるとして提訴していたが、
昨年12月、区が遺族に対して和解金、2500万円を支払う
内容で、既に和解が成立している。
■さて、殺人が行われた場合、どのような罪、
どのような責任が問われるかを整理しておこう。
本事案の場合、まず、公法たる刑法における、「殺人罪」と
くわえて私法たる、民法における
不法行為等に対する「損害賠償責任」が
殺害行為者に問われることとなる。
■刑法は、殺人の行為時において、行為者に
違法性阻却事由(たとえば、正当防衛)、
並びに責任阻却事由(たとえば、刑事未成年たる14歳未満)
といった事実が存在しない限り、
法199条「人を殺した者は、
死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。」
の殺人の罪が問われることとなる。
しかし、殺人罪における公訴時効は
25年(刑事訴訟法250条)であり、
その期間を超えた場合には、
公訴ができない。
つまり、殺人罪を問えないということである。
(もっとも、本件の場合、現在の刑訴法改正前の
15年が公訴時効であった。)
■一方、民法は、不法行為時(殺害)から20年で、
損害賠償請求権が消滅する「除斥期間」を定めている。
ここで、条文を確認しておこう。
(不法行為による損害賠償請求権の期間の制限)
第724条 不法行為による損害賠償の請求権は、
被害者又はその法定代理人が損害及び
加害者を知った時から3年間行使しないときは、
時効によって消滅する。
不法行為の時から20年を経過したときも、同様とする。
つまり、殺人の場合でも行為時から最長20年で、
損害賠償請求権を失うこととされているのである。
したがって、民法724条を素直に解釈した場合、
殺害時から26年経過した本件は、
加害者に対し、損害賠償の責任を問えないことになる。
■しかし、本件で裁判官は「特段の事情がある場合、
相続人である遺族を保護するため
除斥期間を適用しないことは条理に叶う」とし、
それを否定している。
すなわち、判決は、
殺害された女性教師本人の損害賠償請求権を
遺族が相続したとの考えに立ち
「相続財産に関しては、相続人が確定したときから
6ヵ月を経過するまで時効は成立しない」
とする、民法160条の相続規定に着目し、
「死亡の事実が不明で遺族が相続の事実を
知らなかった場合もこの規定を適用できる」
とし、本件に「特段の事情」を認めたものである。
■「不法行為から20年を過ぎても除斥期間を適用しない」
とする司法判断は、1998年に
予防接種禍訴訟で、すでに最高裁が認めている。
この判決で、最高裁は、原告が後遺症で
心神喪失状態になった点につき
「(賠償請求という)権利行使が不可能なのに、
単に20年過ぎただけで一切の請求ができないのは、
正義・公平の理念に反する」
と判示している。
今回の高裁判決は、殺害の事実を知らず
相続人としての権利行使できなかった遺族を
この判例になぞらえ、応用、救済したものである。
たしかに裁判官が述べたように、心情的には
「相続の発生が分からない原因を作った加害者が
20年で賠償義務を免れるのは、
著しく正義・公平の理念に反する」ことになる。
■画一的に、杓子定規に法を当てはめることは、
血の通っていない裁判官のすることである。
被告の権利と、原告の権利がぶつかったとき、
社会通念上、どちらが客観的に
法の保護を必要とする権利であるのかの
視座を外して、法を適正に運用することはできない。
杓子定規に法解釈をするのであれば、
何も人である裁判官が、裁判をとりしきる必要はない。
蓄積した膨大な数の判例データベースを用い、
コンピュータが行えばよい。
その方が、人がするより正確だし、短時間に判断がつく。
血の通った人間が判断するからこそ、
事件に見え隠れする、微妙な背景を
個々に斟酌することができるのである。
平成21年5月までには、裁判員制度も稼動することである。
今回の「正義・公平の理念」を尊重し、
裁判の原点に立った判決を評価したい・・・
とするのが大方の見解である。
■しかし実際問題として、4200万円の損害賠償を命じられ、
遅延損害金を加えて1億円以上になるとされる金銭支払につき、
71歳の被告男性はその資力を持つのだろうか。
原告側としては、損害賠償請求が容認された
ある種の満足感は得られたとしても、
資力の乏しい被告への多額の金員の支払い命令は、実効性を欠き、
その金員を回収することは難しいだろう。
つまり、絵に描いたもちである。
したがって、一審と二審の判決は、その内容に大きな差があるものの
原告としては、実際に回収できる金員の額に
それ程大きな差はないだろうと思われる。
■くわえて、今回の裁判官の判断は
解釈の域を大きく逸脱している事実を
私たちは、認識しておかなければならない。
思うに、民法724条は、
不法行為による損害賠償請求権の期間の制限として、
20年という年数を明確に定めている。
また、この条文には
「ただし、特段の事情がある場合にはこの限りではない。」
といった、ただし書きも存在しない。
したがって、現行法において、この条文の解釈上
20年を超えて、除斥期間が認められる根拠は見当たらない。
だが、裁判官は
「相続の発生が分からない原因を作った加害者が
20年で賠償義務を免れるのは、
著しく正義・公平の理念に反する」
として、今回のように「特段の事情」がある場合には
除斥期間を超える損害賠償請求権を容認したのである。
つまり、本件は、裁判官が
「原告がかわいそうだ。どうしても勝たせてあげたい」
との強い思い(結論)があり、
判決でこうした論旨を導いたのである。
■このように、裁判とは裁判官の胸三寸で、
どのような判決内容も導かれるのである。
だから良い判決を出してもらうには、
裁判官の心証を害してはならない。
ところで、「正義・公平の理念」は、何を前提としてとらえるべきか。
それは、刑法の罪刑法定主義まで厳格でないにしても、
裁判官の恣意的判断によらず、あくまで法に則した範囲で、
その解釈が行われなければならないものと考える。
新聞の報道、それはそれとして、
さまざまな視点から、論理的に考える
習慣をつけておくことが大切ではないだろうか?
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┃ 【本日の、オンリーワンプログラム】
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┃ ● 孔子は「敗者の勝者」
┃ ● 「正義・公平の理念」除斥期間の延長は認められるか?
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【編集後記】
■日曜から、昨日月曜日にかけて、雪の影響で転倒する人
また、スリップする自動車があとを絶たなかったようです。
千葉北インターチェンジ付近の高速道路で起きた
車両12台が絡む玉突き事故の渋滞に巻き込まれ
私も大変、往生しました。
雪に慣れていない、関東人は、
おそらく雪国の人たちが笑ってしまうような
初歩的なミスを犯し
重大な事態を招いてしまうのでしょう。
子供たちのためには、歓迎すべき雪も、
いざ大人の側に立つと、非情に厄介なものです。
それは、社会・経済活動を阻害する
マイナス要因でしかないでしょう。
立場変われば何とやら・・・。
立春を迎えたにもかかわらず、まだまだ寒い毎日。
暖かい、春の便りが待ち遠しく感じられます。
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┃発行責任者: 河野 順一
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