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2008/08/31

子供を護る56の方法

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   子┃供┃を┃護┃る┃56┃の┃方┃法┃
   ━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛    vol.5
                                            2007.00.00
              配信:サークル見習い魔術師
                   提供 : まぐまぐ

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その5【命の選択】

 福島県大熊町の県立大野病院で平成16年に、帝王切開で
出産した女性が手術中に死亡した事件で、業務上過失致死罪
などに問われた産婦人科医を無罪とした1審の福島地裁判決
に対して、検察当局は控訴を断念する方向で検討しているそ
うです。
 この裁判に対しては、マスコミでの評価も分かれており、
カルテ改竄や明確な医療過誤とは云えないとして医師を擁護
する見解や、専門知識を持ち合わせない遺族が裁判の過程の
中で置き去りにされているという見方などが出ています。
 確かに難しい問題ではありますが、「妊娠して出産する」
というのが「当たり前ではない」ということを、もっと多く
の人が知るべきでしょう。
 一説には、妊娠して自然分娩によって無事に出産する確率
は6割を切るとされています。
 今回の事件の状況ともなった帝王切開を始めとして、医学
の発達によって出産の確率が底上げされているだけで、実は
出産というのは奇跡のようなものなのです。
 現在では避妊の方法として認識されている、基礎体温を計っ
ての「オギノ式」も、本来は妊娠する確率を高めるためのも
のでした。
 それは、妊娠しても無事に出産することが難しいからこそ、
必要なものだったのです。
 私の子供の場合もそうでした。
 妻の妊娠が分かった当初、双子かもしれないと診断されま
したが、実は子宮筋腫が胎児ほどの大きさ(大人の拳くらい)
もあることが検査で判明しました。
 医師からは、流産する可能性が高く、筋腫の大きさから子
宮摘出を提案され、子供を産むのは諦めるよう宣告されまし
た。
 幸い、私の場合は親類に医療関係者がおり、そのツテを頼っ
て、通常は長期入院の難しい検査設備の整った病院に即日入
院させることができました。
 むしろ、妻に入院するように説得するのが大変でした。
 本人は今回は諦めても、次の妊娠に期待したいという甘い
考えがあり、なにより長期入院を嫌がったからです。
 現在のような、妊婦のたらい回しが問題になる前でしたが、
それでも入院できるのが、ツテがあるからゆえの幸運だとは、
まったく思っていなかったのです。
 高い確率で流産の可能性を抱えたまま、なんとか入院させ
て半年以上が経ったある日、その電話は突然かかってきまし
た。
 胎児の心拍が弱くなっているため、緊急手術で出産させる
と病院から知らされたのです。
 そして手術前に担当医師から迫られたのは、帝王切開での
出産と同時に、子宮摘出に同意することでした。
 もちろん、その時には「可能な限り避けたい」と返答しま
したが、子供が無事に産まれたという報告を看護師から受け
るのと同時に、手術室の隣室に呼ばれ、一時的に摘出した筋
腫に冒された子宮を目の前に置かれ、選択しなければならな
くなりました。
 摘出するために太い血管を縛っているからこそ止血されて
いて妻は無事ですが、もしこの子宮を戻して後から筋腫だけ
を剥がそうとして大量出血すれば、それこそ命がありません。
 あるいは、いわゆる「産後の肥立ちが悪い」状態に陥って
衰弱してしまうことも考えられます。
 目の前に置かれた生々しい子宮には吐き気を覚えることは
ありませんでしたが、子宮を放棄するという吐き気を催す決
断をせざるをえませんでした。
 例え第二子の期待があろうとも、子供が今無事であること
を確定し、妻の安全を最大限に優先するための選択です。
 冒頭の事件の場合には、患者は癒着胎盤という難しい症例
で、担当医師は事前に大学病院での出産を勧めていたと云わ
れています。
 通常は担当医が紹介状を書くはずですから、これは好機だっ
たはずです。
 しかし、通院の不便さから断ってしまったようです。
 また、この時の出産が第二子で、次の妊娠も望んでいたた
め、分娩時に問題があった場合の子宮の摘出も拒否していた
と伝えられています。
 それが事実であれば、検察が主張していた「中止して子宮
を摘出すべきだったのに、無理に続けて失血死させており、
過失は明白」というのは言いがかりでしかありません。
 私が子宮を実際に見せられたのは、手術前に摘出に同意し
ていて、太い血管を縛って一時的に摘出するという時間的余
裕があったからに過ぎません。
 遺族には納得のいかないことでしょうが、出産という行為
が、母親か子供の、あるいは両方の「命の選択」を迫られる
危険な行為であると認識していなかったのが、この事件の根
幹にあるように思えてなりません。
 そしてそれは、有名人が妊娠すると、安易に「オメデタ」
などと報道してしまうマスコミにも責任があるでしょう。
 私の妻の妊娠が分かった時には、医療に携わる、あるいは
知識のある親類や友人たちは誰も「おめでとう」とは言いま
せんでした。
 無事に産まれるまでは言えないからです。
 子供を護る最初の戦いが、出産なのです。


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配信 サークル見習い魔術師
編集 泉 都市
著者 清水銀嶺
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