疲れた身体、疲れた心を癒す呼吸法!  RSSを登録する

今ある「健康法」に不満・「呼吸法」についての明確な方法論を知りたい・現代というストレス社会の中で「本当の自分」を取り戻したい。そんな悩みを抱えている方々に解決法を実践する場が「湧気塾」です。塾長のインタビューや稽古内容をお届けします。

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2009/10/09

身体哲学からの提言

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身体哲学からの提言
(旧 「疲れた身体、疲れた心を癒す呼吸法!」)


身体哲学研究所
http://body-mind-philosophy.org/

湧氣塾
http://www.you-ki-juku.co.jp/

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<身体哲学研究所通信第14号>

□■―目次―――――――――――――――――――――――――――――――

1.所長と研究員との対談 <研究員:大滝謙二>第1回
2.湧氣塾からのお知らせ
3.塾長の著書の紹介

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みなさんこんにちは。
身体研究所研究員兼湧氣塾塾生のKです。
本日もメルマガをお楽しみください。


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1.所長と研究員との対談 <研究員:大滝謙二>第1回
―――――――――――――――――――――――――――――――――――

このコーナーでは、所長とともに
身体哲学に取組もうと研究所に参画した研究員と、
所長との対談をお送りします。
今月は大滝謙二研究員との対談です。

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大滝謙二研究員

2000年より呼吸身法 湧氣塾(現・身体哲学道場 湧氣塾)に通い始める。
2005年より身体哲学実践の柱である「呼吸身法」の指導員として、現在に至る。
ITコンサルタントであると同時に柔道整復師の資格を有しているが、治療する側と患者が相互依存してしまう現状と
それにもとづく医療ビジネスのあり方に疑問を持つ。
一般にネガティブなものとしてしか受け取られない病気を治療や癒しの対象とするのではなく、
自らの身体と正面から向き合うことでそうではない側面を展開させる一つのきっかけと考え、
そのメソッドとしての呼吸身法を主な研究対象とする。
身体哲学研究所のサイト管理者。
<所長からの一言>
身体哲学研究所の主要メンバーでもある大滝君は、経済学部を卒業して一端企業に入ったが、
組織の人間にはなりきれず自立の道を歩く。
パソコンやバイクなどのメカに強く、柔道整復師の資格をもち、神秘的なものを感じ取る感受性も敏感で、
広告やデザイン営業のセンスもあり、英語が出来、文章も書けるというともかく多才な男だ。
身体哲学研究所でよりいっそうの身体知を身につけて広い分野まで才能を発揮してほしい。

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K:「さて今月は、大滝研究員の登場です。
大滝さん、よろしくお願いします。」

大滝研究員:「よろしくお願いします。」

所長:「今月は大滝君を迎えて“身体と食”について、
また、今私も大変注目し、また共感もしている
福岡伸一さんの書物について、
生命科学の観点からディスカッションしたいと思います。」

K:「大滝さんは、福岡さんの『もう牛を食べても安心か』
という本をかなり以前に読まれていたそうですね。」

大滝研究員:「はい、そうなんです。
もう数年前になります。」

所長:「先月の福守研究員との話につなげると、
その福岡伸一さんの『もう牛を食べても安心か』に、不思議なことにというか
“カニバリスム”(食人儀式)の話が出てきますね。」

K:「カニバリスムなんて言葉はほとんど
お目にかからない言葉なのに本当に妙な縁ですね。」

大滝研究員:「はい。
ですからおもしろい偶然の一致だなあと、
先月の対談を興味深く読んでいました。」

K:「ところで『もう牛を食べても安心か』の中で
どんな所にカニバリスムは出てくるのですか。」

所長:「狂牛病は正式には牛海綿状脳症といいますが、
これとよく似た病気にヤコブ病さらには
ニューギニア、フォレ族のクールー病があります。
ようするに脳が海綿のようにスカスカになってしまうのです。
クールー病を研究していた米国国立衛生研究所(NIH)の
ガイジュセックは後にクールー病が大規模に広がった
脳を食べるという風習があることをつきとめたというのです。」

大滝研究員:「カニバリスムは結局病気という悪を乗り越えるどころか、
悪(病気)を増幅(拡大)していたということですね。」

所長:「まあそういうことです。
これでようやく長く付き合ってきたカニバリスムの問題は
一応の解決がついたようです(笑)。」

K:「大滝さん、それでそもそも、『もう牛を食べても安心か』という
福岡さんの本を読むきっかけはなんだったのですか。」

大滝研究員:「当時、私は食べ物に関心を持つようになっていました。
実は、湧氣塾に通っていたんですがけっこうひどい食生活をしていたんです。
今ならとても食べられない脂ギトギトのラーメンを
稽古の前に平気で食べていたとか、
チェーン店の牛丼に生卵をかけて、
けっこううまいと思って食べていたとか…(笑)。」

K:「へぇ~、それは今の大滝研究員から考えるとちょっと驚きですね。」

大滝研究員:「湧氣塾で呼吸身法の稽古をしていても、
所長がいっている身体の内部の感覚が今ひとつつかめない、
呼吸の流れも今ひとつ実感できない、
それには食が関係しているのではないかと思ったんです。」

K:「ようするに食べるものがひどければ、
いくら呼吸法をしても上達がままならないのではと(笑)…。」

大滝研究員:「そうなんです。
それで量を減らしたり、食べるものを変えたりしたら、
みるみる身体の感じが変わってきたんです。
驚くほど敏感になってきたんです。」

所長:「それはまあそうでしょう。
呼吸身法は何を食べていてもそれなりに効果はありますが、
福岡さんの“動的平衡”という観点でいう
あまり身体(生命)の流れを疎外するものばかり食べていると
確かに上達が遅い(笑)。」

大滝研究員:「それで、その頃話題になっていた福岡伸一さんの本や、
小山内博さんの本や、また、食に関する古典である水野南北の本など
何冊か食に関する本を読んだのです。
そうしたらそりゃあ理屈の上でもそうだろうと。
それに、呼吸身法を実践していますから身体でもよく実感できた。
まさに福岡さんのいう“動的平衡”で身体の中の自然の流れをよくするには、
その流れのもとである食のクオリティーを一定以上に保っておくことは
大切だと思ったのです。」

K:「ところで、僕は読んでいないのですが、
『もう牛を食べても安心か』はどのような内容なのですか。」

大滝研究員:「読む前はタイトルからして
狂牛病に関する専門家の書いたものだろうと思っていたんですが、
それ以上のものが含まれていたので、
(身体哲学研究所の研究員という立場でいえば
非常に身体哲学的な問題提起をしていたので)
驚きました。」

K:「それが今福岡さんが提唱されている
“動的平衡”についてですね。」

大滝研究員:「そうです。
つまり食べるという行為によって、
体内のたんぱく質、さらにいえば分子レベルで
身体は古いものから新しいものへと常に置き換えられている。
我々の身体は、常に“流れ”のなかにあるというわけです。」

所長:「動的平衡という考え方のもとは、
ユダヤ人科学者のルドルフ・シェーンハイマーが
1930年代に提出したものだそうです。」

K:「すると、そもそも福岡さんが
発見したことではないんですね。」

大滝研究員:「はい、その概念はシェーンハイマーが発見したのですが、
厳密にいうと“動的平衡”(dynamic equilibrium)という言葉自体は
福岡さんが創ったようです。『生物と無生物のあいだ』に
“私はここで、シェーンハイマーの発見した
生命の動的な状態(dynamic state)という概念を
さらに拡張して、動的平衡という言葉を導入したい。
この日本語に対応する英語は、dynamic equilibrium
(ダイナミック・イクイリブリアム)です“
とありますから。」

所長:「福岡伸一という人は、第一線で活躍している真摯な科学者なのですが、
同時に非常にすぐれた科学史家という面をもっています。
それで、“生命は動的平衡にある流れである”というとらえ方は
シェーンハイマーという不遇な、しかし非常に優れた
ユダヤ人科学者の発見だといっています。
確かにそうなのでしょうが、
その歴史にうずもれ無視されてきた概念を
DNA中心の機械論的生命観(身体観)主流の現代に
よみがえらせようという科学史家福岡伸一さんの着眼は、
ある意味ではもともとのシェーンハイマーの発見に
勝るとも劣らないほどの発見(再発見)なのだと
私は思っています。」

K:「福岡さんの本は、文章もすばらしいのに驚かされますね。」

所長:「今、福岡伸一さんは、一線の科学者であると同時に科学史家である
といいましたが、実はこれからの多極多面的な21世紀の
知の世界をリードするにふさわしい非常に有能な学者です。
彼の本を数冊読んだ感想をいうと、福岡さんは科学者(分子生物学者)である他に
科学史家、翻訳家、言語学者、文学者、哲学者、昆虫学者、地政学者、社会学者
などの顔をもっています。」

大滝研究員:「私もそう思います。
そしてその広い視野に立って、福岡さんは動的平衡という言葉を
再発見したんですね。
この言葉は大変エレガントだと思います。」

所長:「そうですね。」

K:「この“生命とはとどまることのない流れである”というシェーンハイマー、
あるいは福岡伸一さんの“動的平衡”という考え方は、
所長の身体哲学、つまり“呼吸身法”に非常に共通性のあるものですよね。」

所長:「全くその通りです。
それについては徐々に述べますが、
身体の哲学として眺めてみても大変興味深いと思います。
例えば、メルロ・ポンティの“生ける身体”やアフォーダンスにも
かなり共通点があります。
また総合的な哲学としては、ホワイトヘッドの後期の有機体の哲学や
仏教の考え方に非常に近いと思います。」

K:「仏教の諸行無常は何となく分りますので、
ホワイトヘッドの有機体の哲学について
説明していただけますか。」

所長:「ホワイトヘッドの後期の主著は『過程と実在』なのですが、
この“過程”とは“プロセス”(process)で、
“実在”とは“リアリティ”(reality)のことです。
つまり、仏教と同様に世界は常に流れ動いている。
動いていないものは何ひとつない。
自然界では動物が動き、昆虫が動き、
植物もゆるやかに動いている。
見えない微妙な世界でも細胞も分子も、原子の内部も
たえまなく動いている。
生物、無生物の区別もなくはてしない
流動の状態にあるのが世界なのであるというものです。」

大滝研究員:「確か“万物は流転する”といったのはヘラクレイトスでしたよね。」

所長:「そうです。
ギリシア語でパン・タ・レイというのですが、“万物は流転する”
というのは世界に広くある哲学です。」

K:「方丈記は日本的な仏教なのでしょうが、
“行く河の流れは絶えずしてしかももとの水にあらず”ですね。」

所長:「K君もなかなか知識が豊富ですね。
ともかく、ロンドン大学で数学を教えていて63才で定年を迎えた後、
ホワイトヘッドはアメリカに渡り、ハーヴァードで哲学を教えるようになるんですが、
晩年のホワイトヘッドの哲学は、世界をはてしなく流動していく宇宙とみなします。
そこでは独立した個物は存在せず、あらゆるものが常に創造されつづけていき、
すべてが密接した関係の上に成立している。
したがって、後期ホワイトヘッドの哲学は有機体の哲学というのです。
しかし、ホワイトヘッドの有機体の哲学は、
自然科学でいう有機体という範囲を越え、
動物、植物だけではなく、鉱物も、心も物質も、
なにもかも同じ生き生きとした存在だというのです。
それを象徴するホワイトヘッド哲学の基本概念に
“活動的生起”(actual occasion)があります。」

K:「これも常に新しい身体が創造され、生れてくるという呼吸身法と
原理(哲学)と同じですね。」

所長:「はい同じです。
生成を本質にしたピュシスというソクラテス以前の
ギリシヤの自然や東洋的な自然を基にしていくと
だいたい同じ世界観になるのです。」

大滝研究員:「以前確か、ホワイトヘッドは
近代ヨーロッパ的な機械論的自然観を
批判したということを所長から聞いたように思いますが。」

所長:「そうです。
福岡伸一さんとの比較で興味深いのは二人とも科学者でありながら、
科学を批判しているということです。
ホワイトヘッドは物理学者として、福岡さんは生物学者として。
そして、今いった近代ヨーロッパ的な機械論的な世界に違和感を感じ、
生命や自然(ピュシスおよび東洋的自然)を中心にした世界観を
築こうとしているということです。」

K:「科学者が科学を批判すると、
普通は矛盾のように思われてしまいそうですが。」

所長:「K君らしいいい問題提起ですね。
それに対して私はいいたいことがふたつあります。
ひとつは、科学の批判をするのに実は科学者が一番いい、
適任だということ。
いい所も悪い所も内部事態もよく精通しているから。
イノヴェイションを起すにはある意味で内部批判が一番いい。
もうひとつ、これは21世紀の知を考える上で
矛盾を含むような複雑な構造として、
実は真理を追究していかなければならない
時代に入ったということです。
これからは、単純なことなど実際にはひとつもないということです。
以前にもいいましたが、ホワイトヘッドの有名な言葉に
“正確なことは作りごとだ”(Exactness is fake)というのがあります。
この世界のことは、自然も身体もすべてが複雑で
微妙に入り組んでいるということです。」

K:「真理はシンプル・イズ・ベスト
というわけにはいかないということですね。」

所長:「単純なものは人間の頭だけなのです(笑)。」

大滝研究員:「科学は万能でもない。」

K:「科学は科学を相対化する哲学(総合知)と
共に歩んでいかなければならない。」

所長:「K君、それは満点に近い答えですよ。
例えば、ホワイトヘッドの哲学の特長は、
一方でマックスウェルの電磁気学による“場”の概念と
相対論と量子論という科学をベースにしていながら、
他方では、科学や言語による世界の単純化を
とことん否定しているという難解というか矛盾を秘めたものです。」

大滝研究員:「福岡さんの『生物と無生物のあいだ』も
ある意味では矛盾した世界ということですよね。」

所長:「そうです。
ウイルスはある観点、すなわち生命を
“自己複製するもの”ととらえれば生物だし、
別の観点から、つまり、呼吸をしない、生命の律動はない
と見れば生物ではない。
ともかく一義的には決定しにくい。
同様に福岡さんにとっても私にとっても
もっと本質的な生命体(人間の身体)は
機械か、機械でないのかというのが問われていますね。」

大滝研究員:「1953年、ワトソンとクリックがDNAの二重ラセンを発見し、
それが対構造をもった“自己複製”機構を示していることが分った時点から、
“生命体とはミクロなパーツからなる精巧なプラモデル、
すなわち分子機械に過ぎないといえる”ということになった。
しかし、福岡さんは自らの膵臓のある部分を取り除いた
ノックアウト・マウスの実験の失敗(成功)に基き、
“生命というあり方には、パーツが張り合わされて作られる
プラモデルのようなアナロジーでは説明不可能な
重要な特性が存在している。
ここには何か別のダイナミズムが存在している“といいます。」

所長:「その何か別のダイナミズムが、シェーンハイマーの発見した
“動的平衡”だと福岡さんはいうのですね。」

K:「でも、考えてみれば、これも矛盾を秘めているというか、
所長のいうようにともかく複雑ですね。」

大滝研究員:「福岡さんは『生物と無生物のあいだ』の最後に、
“結局、私たちが明らかにできたことは、生命を機械的に、
操作的に扱うことの不可能性だった。”といいますね。」

所長:「それは、私が稽古の中で、常日頃いっていることと全く同じです。
身体は、機械のように(機械論的に)とらえてはいけない。
そして、身体を頭の司令で動かそうとしてはいけない(操作主義の否定)
ということです。」

K:「僕はこの本の中で、
“秩序は守られるために絶え間なく壊されなければならない”
という箇所が心に残っています。」

所長:「それも、私が稽古中に何回かいった、
健全に代謝させ、骨を強靭にするには、
まず、破骨細胞を活性化させ、
古い部分を取り除かなければ発芽細胞が育ちようがない
というのと同じですね。」

K:「所長は『生物と無生物のあいだ』から
何か身体についてヒントを得ましたか。」

所長:「いろいろな点で刺激を受け、触発されましたよ。
“多様で精妙な膜動態”なんていう言葉も
身体のある本質的な動きを表わしていますし、
“内部の内部は外”に代表される
トポロジカルな身体の構造理解は
骨と細胞の違いはあっても
私と非常に共通しているなと思いました。
身体の内部を観念ではなく奥深いものと感じるのは
むずかしいのです。」

K:「大滝さんは何かお気づきの点ありましたでしょうか。」

大滝研究員:「細胞レヴェルの概念である“動的平衡”を
身体の動きに応用するのはむずかしいのですが、
“動的平衡”を動きながら、変化しながら進化してととらえると、
今年200本安打を達成した時のインタビューで、
イチロー選手はベストなバッティングフォームは常に変わる、
という趣旨のことをいっていました。
確かに比較してみると、イチロー選手のフォームは
毎年のように変化しています。」

K:「並の選手なら、成績が良かった時の
フォームに固定しようとしがちでしょうね。」

所長:「今あるものを壊さない限り
新しいものは生まれようがありません。
イチロー選手は生物学的に、
進化し続けているわけです。
確かに分りやすい例ですね。」

K:「では今回はこの辺で。
お二人とも大変ありがとうございました。
次回は、福岡さんのロハス的な生活のすすめや食について
お話ししていただきたいと思います。」


(次回に続く)





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●発行者
身体哲学研究所
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身体哲学道場 湧氣塾
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●バックナンバー 
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