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世間を騒然とさせた凶悪犯罪。目がはなせない政治、教育の行方。話題のカルチャー、トレンド。私達の生活に関係の深い事柄を、筆者独自の視点で斬ってゆきます。かけがえのない現在をより良く生きるためのヒントを、それぞれの手で掴んでいただければと思います。

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2009/11/12

メールマガジン 平成の羅針盤 vol.38【2009.11.12】 愛はエゴイズム~英国人女性殺害事件の容疑者逮捕

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メールマガジン 平成の羅針盤 vol.38【2009.11.12】
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愛はエゴイズム〜英国人女性殺害事件の容疑者逮捕


2年7ヶ月逃亡を続けていた英国人女性殺害事件の容疑者、市川達也という男が警察に捕まった。
大阪のフェリーターミナルはすごい騒動になっていて、たくさんの報道陣にもみくちゃにされながら、彼は車に乗せられていった。
報道陣のとった写真には逃亡生活で疲労困憊した市橋の顔が写っていた。
後部座席でうつむいた顔はウェーブのかかった長い髪に半分隠されていたが、ニュースで見たモンタージュ写真ほど悪い顔に見えなかった。
悲劇を起こした張本人をこう評するは不謹慎かもしれないが、今時の、なかなかいい男だと思った。

ここ一週間は、ニュースで市橋のことが頻繁に伝えられていた。
整形をくりかえしていること、大阪に潜伏し、建設会社で住み込みで働いていること、
仕事ぶりはまじめで、仲間うちでの評判はよかったこと、彼の両親がテレビに出てきて自首を訴えたこと。
殺されたリンゼイさんの父の怒りの言葉と、リンゼイさんの母親の、殺人者の母親への労いの言葉。
大学時代の市橋と、彼を知っている大学の恩師の言葉。

一連の報道を、市橋は見ていたのかな、と思う。

最初、この事件が起きたとき、市橋の顔を見て、なんて人相の悪いやつだと思った。
しかし警察に身柄を確保され、疲れ切った市橋の顔を見たとき、
彼のご両親が「そんなことをする子じゃなかった」というのが不思議とわかるような気がした。

彼は絵が上手く、女性によく手描きの似顔絵を描いて送っていたらしい。リンゼイさんと初めて会った時も、そのようにしたという。

今取り調べには淡々と応じているが、事件のことに触れると「話したくありません」といっている。


恋愛が絡んだことだったのではないかな、と思う。
そのときに起きた複雑な感情を警察に説明しろといわれても上手くしゃべれるものでもないし、
しゃべりたくない気持ちはわからないでもない。
とはいえ、人が一人死んで周囲が不幸に巻き込まれているのだから、警察は彼をしゃべるまで追い詰めるのだろう。


彼は、彼女を、本当は「殺す気はなかった」のではないだろうか。
ただそこで「何かが起きて」殺してしまったのかもしれない。


この春大阪で起きた母親と内縁の夫による女児虐待死体遺棄事件を思い出した。
内縁の夫はともかく、虐待を黙認してしまった母親は本当は娘を救いたかったのではないか。
しかし自分を愛してくれる男だからこそ彼のすることを止められなかったのかもしれない。


殺人は犯罪である。保護者は子供を守る義務がある。
それは法律の問題以前に、人間の、人としての誇りの問題だ。
本能に飲み込まれる前に、立ち止まらせる力。それは人間がそれまで経験によって養ってきた「誇り」なのだ。
残念なことに、人間の誇りは、意外ともろい。些細なことで傷つき、それが引き金となり危ない本能を暴走させてしまう。

姜尚中さんは、著書「悩む力」の中で、「愛とは結局エゴイズムである」といった。
そのとおりだなと思う。
愛といえば美しい夢を描く人が多いけれど、究極はカニバリズムで、心の赴くままに突き進んだら
相手を食べてしまうことになりかねないのだ。
ストーカー殺人をはじめ、男女の感情のもつれによる殺人事件を聞くたび、もう40年も生きている私でさえ、
恋愛ってまるで、いつ噴火するかわからない火山の噴火口の縁を歩くようなものだなと思う。
火山の噴火は恐ろしい。熱いマグマはすべてを焼き尽くすだろうけど、人はそのマグマの吹き出す瞬間に憧れているような所がある。

若い人は、この危険な冒険によくかき立てられる。マグマの吹き出す瞬間こそ至福だと信じているからだ。
でも恋愛は結局、食うか食われるかのバトルだ。このような戦いに挑むにはそれ相当のエゴイズムが必要なのだ。
エゴイズムの戦いに勝って相手を自分のものにする絶頂感を得られればいいが、負けた場合は、生きる自信を大きく削られていく。
最悪の場合、命を絶たれたり、人生さえも奪われることになる。

どんな経験になろうと、すべての人が、よい人生の肥やしにできることを願う。

しかし悪いことばかりでもない。相手がいないと嘆きながら婚活に励む男女にとって、結婚へ勢いつけさせるのは、
他でもない幸せになろうとするエゴイズムの力なのだ。


エゴイズムは上手く使いこなさないといけない。


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発行者 佐藤 智美
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