2009/12/26
ここがヘンだよ、企業の採用戦略
テーマ:ここがヘンだよ、企業の採用戦略 教科書:ナウエコノミー―新・グローバル経済とは何か 野呂 一郎 価格:¥ 3,465(定価:¥ 3,465) http://www.amazon.co.jp/dp/4762015873/ref=nosim/?tag=noroworldco07-22 参考ページ: P37は経営学の歴史 P237 ストラテジーマップ 年末の多忙にかまけて、メルマガが遅くなり申し訳ありません。 今号が今年最後のメルマガになります。さて、前回は就活論ということで お話しましたが、もう少し続けてみたいと思います。 ■就活が邪魔する学生生活 今の学生は気の毒ですね。我々が学生時代は就活などという言葉は なかったし、就職活動は4年生の秋からでした。だけれども、今は 大学3年の夏ごろからいわゆる就活というやつがスタートします。 僕らの時代は、それでも企業には社会から批判された。 大学での勉学を企業が邪魔をしている、自粛しろと。 大学も社会も、学生の本分は勉強だという意識が少しはありました。 しかし、今は誰も3年次から始まる就活に文句を言わない。 それどころか、大学は就職の内定実績が大学生き残りのカギを握ると ばかり、学生を駆り立てています。学生は落ち着いて勉強ができない、 といっても今の学生は昔の学生ほど勉強に熱心ではありませんが。 (昔も今も変わらないのかな) 今日の野呂の主張は、「企業が大学に来い」、就活でキャンパスライフを 暗くさせるな、ということです。 ■人の時代、は変わらない さて、時代は変わっても、企業の本質は変わりません。 つまり、企業はヒトなり、ということですね。だから、今も昔も企業は いい人材を鵜の目鷹の目で狙っているはずです。学生も一生がかかるわけ ですから、真剣にならざるを得ません。しかし、現代と我々の時代が違う のは、ITで企業の生産性が上がったことと、競争激化で人件費の コストダウンが企業の競争力のカギを握ること、この二つです。 ITで生産性は上がっても、実は他の企業もITで生産性が上がっており、 勝負は人件費を中核としたコストをいかに切り詰められるか、これが現状 だと思います。従業員はこのあおりを受けて、かつては3人でやっていた 仕事を1人でやらされて、無理がたたりストレスを過重に受け、 うつ病になり、過労死すらしかねない。それでも、少子化で中長期的には 人材難が見込まれ、企業将来を見据えて新入社員は採っておかねば なりません。知り合いの企業の社長は、「人材コスト削減でここ数年、 採用を見合わせてきたが、20代がぽこっと減ってしまい、社員の年齢 ピラミッドのバランスが悪くなったので、今年は採るよ」と言って いました。ともあれ、人材獲得は企業の生命線であることに変わりはありません。 ■企業よ、人材は獲りにいけ! しかし、企業はダメですね。人材獲得に真剣じゃない。野呂は、企業担当者に 「大学に来い」といいたい。相変わらず、待ちの姿勢、いや待ちどころか、ウチに 来たいならば勝手にどうぞ、とばかりふんぞりかえっている。えらそうにしている。 企業>学生という図式はそろそろ変えたほうがいい。 今も昔も企業は人、これは変わりませんが、経済の大きな環境は変わっています。 それは、野呂の言うナウエコノミーということですが、なかでも経済が急速に ソフト化していることに対して企業は危機感が薄いのではないでしょうか。 拙論で、サービス経済は経験価値経済に変わりつつあるというのは、サービスを 超えた付加価値を持たねばならないという意味です。 ITじゃなくてヒューマンスキルこそが重んじられる経済になりつつある、 というのは創造性を含めた人間性、人間力こそが企業の競争力の根源だ、 という主張です。 ■ソフト化の流れを理解していない企業 その背景にあるのが経済のソフト化です。 ビル・ゲイツがなぜ成功したか、IBMがなぜパソコン作りを中国の企業に任せたのか、 ハードでなくて、ソフトの時代を先取りしたからです。拙著ナウエコノミーP37は 経営学の歴史を図解したものですが、歴史の終着点はナレッジ・マネジメントです。 ハードの時代は終わり、ソフトつまりナレッジ(知)が経営学の主役になっています。 オールドエコノミー、ニューエコノミー、ナウエコノミーの流れは、製造業からIT、 ITから知へ、という流れでもあります。P237でとりあげた、ストラテジーマップ という新しい戦略も、ベースはソフト、目に見えない価値である文化とか、 リーダーシップとか、チームワークです。 モノから知へ流れは、人間の根源的な力こそが現代の経済を動かす力であることを 示唆しています。 ■未完の大器を発掘せよ だからこその、新たな人間が主役の時代、それが現代です。 主役を決めるオーディションが企業による面接、ということになるのでしょうが、 ミュージカルの主役はある程度完成されていなくてはなりませんが、企業という 舞台では、これから育てて主役にすることこそが大事です。 時代の流れがわかっていない企業は、えらそうにオーディションを開いて、 ふんぞり返って審査員席に座っているだけ。 真に人間力がある、ポテンシャルにあふれた学生を採らなくては、ナウエコノミーに 生き残れない時代です。でも、企業はその意識が薄い。それでいて、学生の動きが遅い、 なんていっている。 お前たちこそ、早く動かなくちゃならないんだぞ、そう言いたいのです。 ■中身のない厚化粧vs原石という選択 企業の担当者はこう言います。 「うちは客商売だから、履歴書の髪が長ければそれだけで落とす」 「リクルートスーツ着てこなければ、社会性がないとみなして落とす」 「優の数が20以上ないと落とす」「簿記2級持っていないと落とす」。 礼儀やマナーや社会常識など、会社に入って教えればいいじゃないですか。 簿記2級くらい、3ヶ月くらい研修すればとれるでしょ。 ナウエコノミーをになえる素質、ポテンシャルを持つ原石、野呂に言わせれば これが企業が選ぶべき人材です。なぜ、そう表面的なことのみに執着するんでしょう。 それより何より、人材獲得という戦争においてえらそうにしているという態度が、 もうダメです。先に採用担当者は大学に来いといいましたが、それは人材の ポテンシャルを見抜くには、素の学生を見たほうが合理的だと思うからです。 その意味で、形式を強制するのは企業に不利なことです。面接という堅苦しい フォーマルな場で、慣れないリクルートスーツを着せて、就職面接の練習で 教え込まれたマニュアル通りの受け答えをさせて、いったい何の意味があるのか。 ■採用担当者は大学運動部まわりをしろ 運動部の現場に行ったらどうですか。 ウチの大学もそうだけれど、奴らは人間関係にもまれているし、礼儀も叩き込まれて いるし、目標を持って努力する癖がついている。ナウエコノミーが標榜する人材は 創造性を持った人間力、ということですが、創造性は努力の精神、フォアザチームが 身について、はじめて企業で生きる、こういう仮説はアリです。 だから、スポーツの現場にいい人材がいる場合がある。 監督と話をして、スター選手じゃないけれど、地道にチームに尽くせるやつはどいつか、 なんて聞くんです。学生課に行って、リーダーシップのある学生はどれだ、 なんて聞くんです。その場でその学生たちに声をかけるんです。 近頃の学生は、演技しますよ。 昔も面接の達人なんてマニュアルがありましたが、気の利いた連中はマニュアルを 読んで、マニュアル通りにやるな、というような教えも飲み込んでますからね。 企業の人事は「見抜ける」、なんて豪語しますけれど、結局は面接でソツのない対応を する学生が内定をもらえるのが現実です。ふしあな、です。そうじゃなくて、 企業は本当のポテンシャルを見抜くことです。面接の練習をして要領を身につけた 学生が、内定を簡単に得る一方、ポテンシャルのある学生が、企業が好む通り一遍の 受け答えが出来ずに内定をもらえない現状を見ると、企業は形式に堕しておろかだな、 もったいないな、こんな学生と企業の猿芝居、ばかばかしいよな、そう思うわけです。 ■採用にこそコストをかけろ 企業は言います。採用にコストはかけられない、と。 本来は100人全員に会って、じっくりその人となりを見極めたいけれど、 その手間がかけられない。だから、優の数で落とすし、学校名で判断するし、 格好で即断する。でも、それは「新・人材の時代」であるナウエコノミーには そぐわない昔の企業行動です。大企業ならふんぞり返ってもいいかもしれないけれど、 いや、今の時代企業の大きさじゃないですね、あらゆる企業が人材で勝負する時代。 待ちじゃない、社長自らが積極的に出かけて行ってスカウトしろ、そういう態度こそが 必要じゃないでしょうか。 でも、「器を見極めて、育てる」という姿勢がなけりゃ、そんな必要もない でしょうけれど。自由で開放的な社風がなければ、ポテンシャルがあっても 伸ばせないから、意味がないかもしれませんけど。 以上 読者の皆様、今年1年お付き合いいただき、ありがとうございました。 来年は1月13日ころに新年第一号を出す予定です。寅年もよろしくお願いいたします。 よいお年をお迎えください。


