2009/11/16
映画批評0138「それぞれの空に」
┏ 映画批評と物語構成論0138 ┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏ 『それぞれの空に』 The Lucky Ones (08・日本未公開・日本盤DVD発売中) ┏┏┏┏ イラク駐留からアメリカに帰ってきた3人の男女。 (ティム・ロビンス、レイチェル・マクアダムス、マイケル・ペーニャ) 乗り継ぎのための国内線が出発せず、 3人とも同じ「兵士」で、 目的地も同じ「ラスベガス」だったことから 3人は割り勘でレンタカーを借りることに……。 簡単にいってしまえば「ロードムービー」です。 ひょんなことから知り合った3人の珍道中。 この映画の原題は“The Lucky Ones”で、 イラクで負傷したのはアンラッキーだったし、 飛行機に乗れなかったのもアンラッキーだった。 ホント、人生、アンラッキーの連続だけども こうして3人が出会えたのはラッキーだったよね、と そのような意味が含まれています。 (そしてもう1つ劇中に“Lucky”という言葉が出てきます) コメディ要素あり、泣ける要素あり、で よくできたヒューマンドラマです。 彼ら3人はGoing home=家に帰ろうとしているわけで、 「家に帰る」──これはアメリカ映画の、古くからの、 重要なテーマの1つです。 そしてもちろん、 「家に帰ろう」とするのはアメリカ人だけではありませんから これは全世界共通の、普遍的なテーマでもあります。 ただし賛否両論あるとすれば、 3人の設定が「米軍兵士」という箇所でしょう。 しかも「平和維持活動のために海外に派遣された米軍兵士」である、と。 これがもし「米軍兵士」という要素ではなく、 たとえばどこか、トルコやイスラエル映画で、 出稼ぎ帰りの3人が車をシェアして「家に帰る」映画だったとしたら、 よくできたコメディ映画、そして、よくできたヒューマンドラマとして どこぞの映画祭で賞を獲って、脚光を浴びていたかもしれません。 とはいえ、この映画が、アメリカ映画として 「海外派兵」を扱う必要があったのもまた確かです。 以下、ネタバレ── この映画は「海外派兵」を肯定も、否定もしていません。 元兵士たちをリサーチして「現実味」を追求したということですから、 「肯定」でも「否定」でもなく、いまここにある「現実」なのでしょう。 海外派兵と、その後の(=アメリカ帰国後の)後遺症を扱った映画は ここ数年多く作られています。 (そしてその圧倒的多数が日本では劇場公開されず) (それでもDVDでリリースされているだけでもラッキーですが) ──『勇者たちの戦場』(06) ──『ストップ・ロス/戦火の逃亡者』(08) いずれの作品もそこで描かれる「現実」が重たすぎて「キツイ」ですが、 そんななかでは本作はズバぬけて「軽い」です。 気軽に見ていられます。 しかし「軽い」だけに、ギャップが「キツイ」です。 エンディング。 本来「帰るべき場所」の「故郷」や「アメリカ」には「居場所」は無く、 結局また「兵士」にならざるを得ないという「現実」。 「兵士」という設定さえなければ、と 「兵士」という設定は要らないんじゃないのか、と そう思わせるだけの、普遍的で、年齢差を越えた、そして性差を越えた 美しい友情を描いているのに、 そんな彼らがまた「兵士」に戻ってしまうという重い「現実」。 いまの「アメリカの世知がらい状況」を映し出してもいて、 (「海外派兵」には異論反論・個人的意見があったとしても) このラストにはグッと来るものがあります。 ┏┏┏┏ ┏┏┏┏ ┏┏┏┏ ┏┏┏┏ この映画を『PUSH』、『PUSH』!! 次週は──ダコタ・ファニング出演『PUSH 光と闇の能力者』 を検証します!!! ┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏ Copyright(c)Tsuruhara Akihiro. All rights reserved.


