2009/09/28
映画批評0131「男と女の不都合な真実」
┏ 映画批評と物語構成論0131 ┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏ 『男と女の不都合な真実』 The Ugly Truth (09) ┏┏┏┏ 主演のキャサリン・ハイグルは 長身の、モデル体型で、 「エロ」コメディも余裕でこなす。 (しかし決してヌードにはならない) その「決してヌードにはならない」という点も含めて ひと昔前のキャメロン・ディアスに良く似ています。 (『メリーに首ったけ』(98)に出ていた頃のキャメロン・ディアス) しかしキャメロン・ディアスは同時期にシリアスな作品にも出ていましたが、 (テリー・ギリアム監督の『ラスベガスをやっつけろ』(98)や オリバー・ストーン監督の『エニイ・ギブン・サンデー』(99)など) ハイグルはコメディ専門です。 すくなくともメジャー作品においてはコメディのみに連続登板しています。 恋愛コメディ専門の女優ということでいえば むしろメグ・ライアンに近い人物なのかもしれません。 今回の映画には、そのメグ・ライアンが出演した 『恋人たちの予感』(89)にオマージュを捧げたと思しき 「会食中にエクスタシー」のシーンが出てきます。 しかし対照的なことに、メグ・ライアンは ここ数年キャサリン・ハイグルが連続的に演じているような 「アシスタントを従えてオフィスを闊歩するキャリアウーマン」 をあまり演じたことがありません。 メグ・ライアン(演じる役柄)が「恋か仕事か」で悩むのは 2001年の『ニューヨークの恋人』になってからで、 その『ニューヨークの恋人』にしたって 最終的には彼女の意思で「恋を選んでキャリアを捨てる」のですが、 (「恋か仕事か」の「二者択一」) キャサリン・ハイグルが出ている一連の恋愛映画は 恋を選んでもキャリアを捨てることにはなりません。 1─『無ケーカクの命中男/ノックトアップ』(07) ……妊娠(出産)したことによって注目が集まりキャリアアップ。 育児と仕事が両立する。 2─『幸せになるための27のドレス』(08) ……例外中の例外。恋と仕事が両立しない。 終盤、キャリアを捨てる(!)。 というか「恋も仕事もどっちも捨てる」。 しかし仕事を辞めるのも 「元々嫌な仕事だったから」という正当な理由がある。 最終的にはハッピーエンド。 3─『男と女の不都合な真実』(09) ……TVプロデューサーとしてタレントを呼び戻すことに成功。 恋と仕事が両立する。 恋と仕事が両立する。 メグ・ライアンが出ていたころとは「時代」がちがうのかもしれません。 しかし、いずれにせよ、 「恋も仕事も両立させる強気なキャリアウーマン像」 は、ここ数年、ハイグルの独占市場といってもよい状況がつづています。 さて、今回の映画に関して言えば、 男の主人公と女の主人公が(最終的に)結ばれる。 それは観客の誰もが分かっています。 観に行くまえから分かっています。 なぜならばこれはハリウッド製の「恋愛映画」だからです。 ハッピーエンドが確約されているわけです。 ジェラルド・バトラーとキャサリン・ハイグル。 この2人が最終的に結ばれることは分かりきっています。 たとえば群像劇のTVドラマであれば「誰と誰が結ばれるか」の ハレたホレたの恋愛模様を繰り返し延々とつづける。 そんな劇構成もありえるでしょうが、 映画ではそんな時間の余裕はありません。 ゴールに向かって突きすすむ。 そうするしかありません。 すなわち 恋愛「映画」において 途中で登場する「恋敵」は しょせんは「噛ませ犬」にしかすぎないわけです。 それは古くから言われつづけていることであり、当たりまえのことです。 本作においては、ヒロインと同じマンションに住む若いドクター。 彼が(噛ませ犬として)ヒロインと「恋人関係」になり、 しかし最終的には別れてしまう。 それはしかたありません(=そういう宿命だから)。 しかし、別れたあと、彼がどうなったかはいっさい描かれません。 ハイグルの前作『幸せになるための27のドレス』にも エドワード・バーンズ演じる「噛ませ犬」が登場します。 しかしこちらのほうは(エピローグで)彼がその後どうなったかが いちおう描かれます。 それなりの配慮がなされています。 しかし本作は「別れて」終わりです。フェードアウト。 これはいったいどういうことなのでしょうか? ──本作のストーリーは、こんな感じです。 カルフォルニアの州都サクラメントの地元局でTVプロデューサーとして 働くヒロインは、過激で卑猥な言動で人気のTVタレントと 反目しながらも、次第に魅かれ合います……。 いえ、「次第に魅かれ合う」のではありません。 男のほうは最初からヒロインに気があることになっています。 エロい言動を連発しているけども、私生活においては 実は、子ども想いで、恋人はいない(!)。 しかも「子ども想い」とはいっても「実の子ども」では無い(!)。 離婚歴がある、とかそういうことではないのです。 (なんて都合のいい……) そう、つまり、イヤミな見かたをするならば、 ヒロインの都合のいいように人間関係が最初から整理(準備)されており、 かつ ヒロインの都合の悪いことはいっさい描かれない(=「元恋人」のその後) のです。 男と女の不都合な真実。 男の本音。 女の本音。 それは描かれてある……のかもしれません。 しかし「ヒロインには不都合な真実」。 それはバッサリ無いことになっています。 でもそれでイイのです。 エンディング。 汗ダクのジェラルド・バトラーに対して、余裕のハイグル。 やっぱり「世界の中心は女性だよね」ということなのです。 ※余談: メグ・ライアンの正当な後継者はジェニファー・アニストンでしょう。 http://ja.wikipedia.org/wiki/メグ・ライアン http://ja.wikipedia.org/wiki/ジェニファー・アニストン 作品歴も似ているし、背丈も、髪の色も、演じる役柄も似ています。 しかしメグ・ライアンはドロドロの離婚劇の末に 映画の役をじょじょに失っていきましたが、 ジェニファー・アニストンは離婚してからが映画スターとしての 本格スタート。そしていまがまさに絶頂期。 メグ・ライアンは「すでに歳をとっていた」という いかんともしがたい事実があったにせよ 2人の年齢差は意外なことに「8つ」しかちがいません。 8年前といえば、 メグ・ライアンが『ニューヨークの恋人』に出ていたまさにそのときで、 彼女はこの作品をピークに恋愛コメディから後退していきましたが、 では、ジェニファー・アニストンが今年をピークに衰退するかといえば、 そんな気配はありません。 http://www.imdb.com/name/nm0000098/ (予定作品がビッシリ) 時代は変わった。 あと8つ若ければ。 メグ・ライアンはいまごろ地団駄踏んでいることでしょう。 ┏┏┏┏ ┏┏┏┏ ┏┏┏┏ ┏┏┏┏ 「ねえ、ジュイス」 「何でしょう?」 「来週は『東のエデン Air Communication』について語りたいんだけど」 「ですが、あの作品は東京と大阪でしか上映されていませんが」 「でもイイんじゃない?」 「……受理されました。 ノブレス・オブリージュ! あなたが今後も救世主たらんことを」 ┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏ Copyright(c)Tsuruhara Akihiro. All rights reserved.


