鶴原顕央の【映画批評と物語構成論】  RSSを登録する

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2009/09/14

映画批評0129「サブウェイ123 激突」

┏ 映画批評と物語構成論0129 ┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏ネタバレあり┏┏┏


    『サブウェイ123 激突』
       (さぶうぇい ひゃくにじゅうさん げきとつ)
      THE TAKING OF PELHAM 1 2 3 (09)


┏┏┏┏

この映画に登場するニューヨーク市長を
TVドラマ「ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア」(99-07)の主演俳優
ジェームズ・ギャンドルフィーニが演じていて、
……ギャンドルフィーニ……ジュリアーニ……
「まるでジュリアーニだな」と思って観ていると
「俺はジュリアーニとはちがう」という台詞が出てきます。

ま、それはともかく、
この映画には原作小説があり、
映像化としては、今回が3回目になります。

1度目は劇場映画『サブウェイ・パニック』(74)。
2度目がTV映画として製作された「サブウェイ・パニック 1:23PM」(98)。
 (日本ではWOWOW で放映済み)

「サブウェイ・パニック 1:23PM」に主演したヴィンセント・ドノフリオは
TVドラマ「ホミサイド/殺人捜査課」の1エピソード「地下鉄」(97)でも
地下鉄とホームのあいだに挟まれる男を演じていたので、
地下鉄と縁のある、地下鉄が大好きな俳優なのかもしれません。

ま、それもともかく、
今回のトニー・スコット監督版が何をいちばん意識しているかといえば
それは、原作小説ではなくて、74年の『サブウェイ・パニック』です。
クレジット上は「原作小説の映画化」ではあるものの、
実質上は『サブウェイ・パニック』のリメイクといってよい出来栄えです。
それはオリジナル版の『サブウェイ・パニック』で
ウォルター・マッソーが演じた主人公の名前「ガーバー」が、今回
「ウォルター・ガーバー」になっていることからも明白です。

本作は、オリジナル版の要素を細かく組み替えて
再構築してあります。

基本的なストーリーは同じです。
地下鉄ジャック犯(4人組)が「ペラム駅PM1:23発」の車輌を乗っ取って、
ニューヨーク市を相手に身代金を要求する。

しかし細かく換骨奪胎しているので、
オリジナル版を知っている人でも先が読めない
(=マニアックな)展開になっています。

(旧)……風邪で寝込んでいる市長
(新)……風邪を引きたくないから予防接種を受けようとする市長

(旧)……鼻風邪気味の元運転士(※犯行グループの1人)
(新)……鼻にガーゼをしている元運転士(だが風邪は引いてないらしい)

(旧)……地下鉄ジャック犯のリーダーが実は「元軍人」
(新)……人質のなかに「元軍人」がいる

(旧)……身代金を持ってどうやって地下鉄構内から逃げるつもりなのか?
(新)……そもそも身代金が目的ではない!?(=オチが違う!!)

そしてさらに、登場人物たちの「性格づけ」も細かく変更されています。

オリジナル版では
ロバート・ショウが紳士で冷徹な乗っ取り犯リーダーを、
ウォルター・マッソーがトボけているようでいて実は切れ者の
地下鉄公安局警部補を演じていました。

今回はジョン・トラボルタが、ロバート・ショウのときとは対照的な
すぐキレる(=真意が掴めない)謎めいたリーダーを演じています。

すぐキレる(=リーダーの真意が終盤まで謎につつまれている)ことで
今回の「新しいオチ」が観客に予想しにくいという
その意味ではこの新しい性格づけは成功しているといえるでしょう。
しかしリーダーが「キレ者」である必要は無いはずです。

冷静沈着で自信満々なリーダー(ロバート・ショウ)と
すぐキレてココロが読めないリーダー(ジョン・トラボルタ)の
どちらが「理想の上司」に相応しいかといえば、
それはもちろん冷静沈着な上司でしょう。

今回は「オチ」が違うのですから
 (その「新しいオチ」を隠すためにも)
リーダー像はあえてオリジナル版と同じでも良かったはずなのです。
しかしなぜこうもキレやすいリーダーにしてしまったのでしょうか?

この手の映画は「乗っ取り犯」と「交渉役」の駆け引きや頭脳戦を楽しむ
そういうタイプの映画のはずです。
出口さえ固めてしまえば逃げ切れるはずがない地下鉄構内から
重たい身代金を持って、どうやって逃げおおせるつもりなのか?
そんなムチャな犯行、ぜったい不可能(なはず)!
しかしどうやらこの男は自信満々。
そこに『サブウェイ・パニック』の魅力がありました。

けれども今回のリーダーは冷静沈着な男ではありませんから、
となると、観客は彼が立案した犯行計画の
その完全性に疑問をいだかざるをえません。
 (事実けっこう行き当たりばったり)

そしてエンディング。
主人公の笑顔で終わるのは、同じトニー・スコット監督の
『エネミー・オブ・アメリカ』(98)や『スパイ・ゲーム』(01)と同じです。
トニー・スコット監督はこういう終わらせかたが好きなのでしょう。

しかし『エネミー・オブ・アメリカ』や『スパイ・ゲーム』が
国家権力に歯向かってまで正義を貫いたことによる笑顔であるのに対し、
本作は相手を撃ち殺してしまったあとでの(謎の)笑顔です※。

アメリカ国内で、テロリストが、一般市民を人質にとる。
しかも舞台はニューヨーク。
9.11後の「いま」なぜこの映画をリメイクする必要があったのか?
ということも含めていろいろと疑問の残る映画です。

 (※オリジナル版では主人公と犯人とのあいだに
   「奇妙な友情」というか「きずな」が芽生えていましたが、
   本作ではそれが丁寧に否定されます。否定されつづけます。
   トラボルタが「こうして出会ったのも運命だよな?」と問いかけると
   ワシントンが「ただの偶然だよ」と否定する。
   すべては最後に「相手を撃ち殺してしまう」からで、
   それを正当化するべく(まえもって)「友情」は否定されるのです。
   だからといって笑顔でいいのか?
   いいわけがありません。
   「とってつけたようなエンディング」とはまさにこのことです)


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 オレのこのツメ、ひかってうなる!!!
  ──次週は『ウルヴァリン:X─MEN ZERO』を分析します
      (連休明け24日(木)午後12時配信予定)
   

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