2009/09/07
映画批評0128「96時間」
┏ 映画批評と物語構成論0128 ┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏ 『96時間』 TAKEN (08) ┏┏┏┏ 「若い女性旅行者が誘拐されてオークションにかけられる」という ウソのような、ホントのような、 この映画の製作国フランスに限らずに世界各国にあるような まるで都市伝説のような話ですが、 本作のプロデューサーで共同脚本家でもあるリュック・ベッソンが フランス国内でそのようなウワサを耳にして、 それで今回のストーリーを思いついたということですから、 だとすれば、 英語の原題が“TAKEN”(誘拐・さらわれた)であるのも道理です。 ストーリーを考案した当初は 「人身売買をテーマにした社会派サスペンス」のほうに 話の力点が置かれていたのでしょう。 しかしストーリーを練っていくうちに 「さらわれた娘を救うために頑張る父親」のほうに 話の重点がシフトしていった。 そういう意味では「父親像」にスポットを当てて宣伝をし、 劇中の台詞「96時間以内に娘を救出しないとヤバい」という その『96時間』を邦題に選んだ日本側の戦略は大変よくできています。 “TAKEN”という題名の映像作品はほかにも沢山あるのですから 『96時間』のほうがよっぽどこの映画の内容を的確に言い表わしている といえるでしょう。 これで上映時間が「96分」だったら完璧なのですが (上映時間93分。惜しい!) リュック・ベッソン側は「96」という数字に そこまでこだわってはいないので、 こればっかりはしかたありません。 (『HACHI 約束の犬』も93分! 88分にすればいいのに!) (末広がりでラッキーナンバーでもある日本語の「HACHI」を 世界中におぼえてもらえる折角のチャンスだったのに!!!) ま、それはともかく── 元特殊工作員のアメリカ人男性の一人娘が、旅先のパリで誘拐され、 通常96時間以内に救出できなければまず助からないということで、 96時間以内に、パリに渡って、少ない手がかりから犯人を見つけだし、 そして娘を救出する……という、そんなお話です。 上映時間が93分と短いわりには事件が発生するまで10分あります。 それまでは、主人公がどのような人物であるかが丁寧に描写されます。 娘想いで、几帳面で、隠居状態だけども特殊技能は衰えてなくて、 (そしてこのあとフランスで移民を相手に大乱闘をするわけですが) だからといって移民そのものに対して偏見があるわけではない※。 (※冒頭の電器屋のシーン。実は深い意味がある) この映画は短いわりに、丁寧です。 最初は、高架を飛び降りるのを躊躇ったばっかりに 娘への大事な手がかりを失ってしまいますが、 最後は、躊躇うことなく橋から飛び降り、無事に娘を救出する。 そんな具合で、構成がしっかりしています。 とはいえ、根本的な「見た目」の問題として イギリス人俳優のリーアム・ニーソンがアメリカ人を演じていることに 対して違和感があるかもしれません。 しかしこれも中盤の展開を考えると、 アメリカ人俳優がフランス人の振りをするよりも 同じヨーロッパ圏のイギリス人俳優がフランス人の振りをするほうが まだ違和感が少ない(はず)です。 物語の設定的には リュック・ベッソンが自ら監督した『レオン』(94)の逆だともいえます。 異国の主人公が単身ニューヨークで暮らす『レオン』に対して、 アメリカ人中年が単身フランスに乗り込む『96時間』。 しかしフランス人監督がアメリカを舞台に映画を撮るのと フランス人監督が母国フランスを舞台に映画を撮るのとでは 母国で映画を撮ったほうが(異国情緒は無いけども、代わりに) 映画としては「普通」に楽しめる、破綻のない作品に仕上がります。 (近年のプロデュース作品の傾向を考えると、 様々な過去作(『レオン』や『WASABI』(01))での経験を踏まえ、 映画の内容的にも、そして製作の現場的にも 「やっぱりフランスで撮ったほうがいい」との結論に達した のではないでしょうか? フランスが舞台、あるいはフランス周辺を舞台にした映画ばかり になっています) リュック・ベッソンが今後「監督」業に復帰するつもりが あるのかどうかは分かりませんが、 リュック・ベッソンの名前で資金を集め、 フランス国内の若手スタッフをつぎつぎと世界に送り出している。 リュック・ベッソンがフランス映画界に与えた功罪については いろいろあるわけですが、後進の育成に長けている。 それは誰もが認めざるをえないでしょう。 ┏┏┏┏ ┏┏┏┏ ┏┏┏┏ ┏┏┏┏ 次週は『サブウェイ123 激突』を分析します! ──デンゼル「デンシャ、ガ、トウチャク、シマス」 Copyright(c)Tsuruhara Akihiro. All rights reserved. ┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏


