鶴原顕央の【映画批評と物語構成論】  RSSを登録する

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2009/08/31

映画批評0127「トランスポーター3 アンリミテッド」

┏ 映画批評と物語構成論0127 ┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏


    『トランスポーター3 アンリミテッド』
      TRANSPORTER 3 (08)


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 日本ではこの映画の本編上映前に丁寧な解説映像が流れます。

 正味2分ぐらいでしょうか。
 要は「裏社会専門の凄腕の運び屋である」という
 ただそれだけのことなのですが、
 早く本編が観たいと思っている人には余計なお世話。
 シリーズのファンにとっても余計なお世話。
 しかしシリーズ初見の観客には
 前2作への興味をそそる良い編集だといえるでしょう。
 (もしそんな観客がいれば、の話ですが)

 それはともかく、
 この映画の1作目(02)が作られたときに話題になったのは
 ロケットランチャーの弾をトレー(盆)ではじき返すアクションシーン
 (「はじき返す」というよりは「盆を当てて弾道を逸らす」という具合)
 が予告編の映像のなかにあったことで、
  「こんなアクションシーン見たことない」
  「いくらなんでもバカすぎる」
 雑誌やネットでもいろいろと話題になりましたが、
 実際の本編にはそんなアクションシーンはありませんでした(トホホ)。
 (※DVDの特典映像で確認できます)

 予告編にあったということは
 実際に本編でも使うつもり満々だったはずです。
 あるいは話題作りのためにワザと(わざわざ)作ったフェイク映像
 なのかもしれません。
 しかしいずれにせよ「ロケット弾を盆ではじく」アクションシーンは
 実際の本編には無い。
 それは紛れもない事実です。
 そしてこの「ロケット弾を盆ではじくアクションシーンをカットした」
 という事実──メチャクチャなアクションシーンは沢山あるけど
 1作目では抑えておいたという事実は
 この『トランスポーター』シリーズの方向性を良い方向に確立させ、
 そしてここまで延命させることに成功した、といってよいでしょう。

 1作目が作られたのはほぼ同時期でしたが、
 今回の『3』が作られるまでのあいだに
 『ボーン・アイデンティティー』シリーズ3部作(02-07)が公開され、
 アクション映画のリアリティーはこの『ボーン』3部作の登場によって
 一気にリアル路線へとシフトしました。

 その証拠に
 『ボーン・アイデンティティー』シリーズの影響をモロに受けたとされる
 ダニエル・クレイグ主演の新007シリーズは
 1作目の『カジノ・ロワイヤル』(06)にはまだボンドカーにギミックが
 ありましたが、2作目の『慰めの報酬』(08)にはそれすらありません。
 007映画の楽しみの1つであったはずの「秘密兵器」が無いのです。
 『カジノ・ロワイヤル』の1つまえの『ダイ・アナザー・デイ』(02)で
 光学迷彩でボンドカーを透明にさせていたのとはオオチガイです。
 
 ありえないアクションシーンをよしとしない。
 言い換えるならば「ありえそうなアクションシーン」をよしとする。
 映画としてのリアリティー。
 映画として、いまの映画なりに、ありえそうなアクションシーンを
 よしとする方向性へと、アクション映画全体がシフトしたわけです。

 その世界の流れを見越して「ロケットランチャー」のシーンをカットした
 のだとすれば、プロデューサーとして本シリーズに関わっている
 リュック・ベッソンの才覚は確かに大したものです。
 時代を読む。時代を先読みする能力がある。

 そして02年に確立されたこのリアル路線は
 本作と同時期に製作されたリーアム・ニーソン主演の『96時間』(08)にも
 しっかりと継承されています。
 

補足:
 シリーズ物は、シリーズを経るごとに主人公にどんどん貫録がついていく
 (=観客が主人公に愛着を抱いていく)のに対し、
 敵側がどんどん小物になっていく、という
 いかんともしがたい問題を抱え込んでしまいます。

 それは『ダイ・ハード』シリーズしかり、『007』シリーズしかりで、
 たとえどんな大物俳優を敵役に配したとしても
 初登場の「敵」役と、長いキャリアを持つ「主人公」とでは
 どうころんでも「差」が出てしまいます。

 その点、今回の『トランスポーター3』は上手くいっています。
 (前回の『2』は「相手は女性」というヒネリ技でしたが)

 今回の敵役はTVドラマ「プリズン・ブレイク」のロバート・ネッパーで
 「プリズン・ブレイク」でのハマリ役ティーバッグそのままの役柄です。
 もともと大した大物とは闘っていない『トランスポーター』ですから
 (「所詮はTV俳優じゃねえか」というヤジを含めて)
 ロバート・ネッパーのアブない雰囲気は「敵役」に相応しく、また
 「プリズン・ブレイク」の役柄をそのまま引き継いでいるので
 「プリズン・ブレイク」も見ている観客なら
 今回の敵には「敵」としての長年のキャリアもあります(!)。
 (シリーズ3作目にして
  「長年のキャリアを持つ主人公」と「初登場の敵」とが対等にみえる
  という奇跡・超絶技巧!!!)
 
 しかしSE担当の若造と2人でオンボロのバンで移動をし、
 ましてテレビ番組の流行語を口にしてしまう。
 (ドナルド・トランプの「アプレンティス」の決め台詞
  「おまえはクビだ!!!」をわざわざ説明つきで言う)
 (→「ああ、この人、あのテレビ見てるんだ」
  →「あんなに怖いのに、しっかり俗世間に生きているんだなあ」
  →「それとも番組は見てないけど、流行語だから使っているのかも」
  →「結論:いずれにせよ小物」)

 映画のキャラクターが流行語を口にしてはいけません。
 (撮影しているときには「流行語」でも、公開時には時代遅れの可能性)
 (=「その時代」を特に表現したいというのでなければ、
   映画で使わないほうが無難)
 そんなあたりまえのことをベタにやってしまう。
 惜しいところでベタッてしまう。
 そこがリュック・ベッソン映画の「微妙」たる所以なのかもしれません。
 (アメリカ映画に比べると画面の豪華さにおいてどうしても見劣りするし、
  かといってフランス映画としては「アメリカ映画的すぎる」
  =微妙な立ち位置)
 
 
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  次週は──「24」×4=『96時間』(??)を徹底検証!
   

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