鶴原顕央の【映画批評と物語構成論】  RSSを登録する

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2009/08/17

映画批評0125「G.I.ジョー」

┏ 映画批評と物語構成論0125 ┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏


    『G.I.ジョー』
      G.I. Joe: The Rise of Cobra (09)


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 G.I.Joeという名前の玩具は60年代からありましたが、
 今回の映画に出てくる「コブラ」という組織や忍者が登場するのは
 82年に発売が開始された新シリーズ──
 そしてそれに合わせて83年にはじまったテレビアニメ──
 特に84年の第2シーズン“The Revenge of Cobra”に端を発します。

 84年といえば、
 アメリカで「トランスフォーマー」のアニメがはじまった年でもあり、
 「G.I.ジョー」と「トランスフォーマー」は
 80年代中盤の男の子向けキャラクタービジネスの米国2トップでした。

 玩具としての「トランスフォーマー」は
 それ以前はアメリカにロボットアニメがありませんでしたから
 いきなり新しい市場を開拓した──登場それ自体が革新的でしたが、
 「G.I.ジョー」のほうは、当時フィギュアといえばこれしかなかった
 『スター・ウォーズ』のベーシックフィギュアシリーズ──
 どちらも同じ“Hasbro”製ですが
 『スター・ウォーズ』のほうはルーカスが権利を持っているうえに
 映画の(旧)3部作が83年にいったん完結することが決まっていたので、
 その『スター・ウォーズ』の市場を代替すべく、
 かつHasbro社完全オリジナルキャラクターとして82年に投入が開始され、
 そして84年頃からキャラクターのバリエーション化が本格化した
 実は『スター・ウォーズ』に良く似たキャラクターたちなのです。

 敵側の裏ボス「ドクター」が、呼吸器をつけ、肌の色素が抜け、
 黒い衣装で、最終的には顔全体を覆い隠すマスクを被る──
 これは完全にダースベイダーのノリで、
 味方のほうの忍者「スネークアイズ」が、無口で、素顔を決して見せず、
 一匹狼風情で、バイザースコープ型のマスクをしている──
 これは当時『スター・ウォーズ』のフィギュアとして1番人気だった
 ボバ・フェット※。
 (原型がボバ・フェットなので忍者なのに銃を使うことに躊躇いがない)
        ※http://en.wikipedia.org/wiki/Boba_Fett
 さらには「ボバ・フェットは味方じゃないじゃん!」ということで
 敵側にも忍者が登場し、これが今回の映画版では
 イ・ビョンホンが演じている「ストームシャドー」。

 60年代に発売された最初のG.I.Joe※人形は、
 G.I.Joeという言葉が「米兵」の俗称であることからも分かるように
 戦闘服を着た、米兵そのものの人形でしたが、
 80年代に入って心機一転、
 リニューアルして『スター・ウォーズ』の要素を取り入れることで
 ストーリー化とキャラクターのバリエーション化に成功した
 それが今回の実写版へとつづく「G.I.ジョー」の主な流れです。
        ※http://en.wikipedia.org/wiki/G.I.Joe       
 
 そしていちばん肝心なのは
 この80年代の「G.I.ジョー」には「女っ気」がありました。

 同時期に放送されていたアニメ版の「トランスフォーマー」には
 女っ気がありませんでしたが、
 (ロボットにしろ人間にしろ女性キャラクターがほとんど登場しない)
 「G.I.ジョー」のほうには「バロネス」と「スカーレット」という
 2人の「大人の女性」が登場し、
 それはもちろん夕方に放送されるような子ども向けのアニメですから
 PTAが目くじらを立てるようなお色気シーンはありませんが、
 それでも大人の女性が黒革の衣装で銃をかまえる──
 のちのアンジェリーナ・ジョリーの『トゥームレイダー』に連なるような
 男子中学生を興奮させるような、そんな描写がたしかにありました。

 つまり「G.I.ジョー」のほうが「トランスフォーマー」よりも
 対象年齢がグッと上だったのです。
 それは「G.I.ジョー」のほうが先にコミック化した事実からも明白です。
 (難しい単語を読むことが出来る=対象年齢が高い)
 (玩具→アニメ→コミックの順で展開されていった)

  「トランスフォーマー」・・・小学校中学年〜
  「G.I.ジョー」・・・・・・・小学校高学年〜中学生

 しかし今回の実写版ではどうだったでしょうか?
 バロネス役のシエナ・ミラーが頑張ってはいますが、大したことは無い。
 というよりも「お色気シーン」は皆無です。

 それは『トランスフォーマー』にもお色気シーンが無いからでしょう。
 本来は「トランスフォーマー」よりも対象年齢がグッと上の物語
 だったはずなのに、同じようなレベルになってしまっている。
 そこにこの映画のダメな要因があります。

 実写版の『トランスフォーマー』がヒットしすぎたせいなのでしょう。
 2匹目のドジョウとして「G.I.ジョー」が担ぎ上げられ、
 しかし本来の「G.I.ジョー」らしさ(=大人っぽさ)が無い。

 実写版の『トランスフォーマー』は、主人公が
 1作目(07)のときは高校生。
 2作目(09)でようやく大学1年生。
 それに対して『G.I.ジョー』のほうはキャリアを積んだ
 プロフェッショナルな軍人が主人公です。
 主人公の年齢からして違うのに、同レベルの物語が展開する。

 サマームービーとして投入されたから仕方がないとはいえ、
 本来であればX BOXで戦闘ゲームをしているような
 そんなコアな層をターゲットにすべき物語だったはずなのです。

 大人が観るにはくだらなすぎる。
 子どもが観るには人が殺されすぎ。

 上手くいっているのは
 「加速スーツ」(パワーアップスーツ)のアクションシーンと、
 敵側の武装車(隠しミサイル&隠しショベル)のギミックぐらいで、
  (これを見て「買おう」と思う人がいるかどうかは別として)
 オモチャの宣伝としては、まあまあよいです。
 しかし年齢指定を受けてでも本来は「R-15」ぐらいの「大人の物語」に
 すべきだったのです。

 ダメな映画です。


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  この映画なしに夏は語れない!? 次週は『サマーウォーズ』!      

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